昨年11~12月の日経平均上昇局面で、先物「踏み上げ」が起こっている

 昨年11~12月の日経平均上昇局面で、私は特殊な需給要因が働いていると考えています。先物の「踏み上げ」【注】が起こっていると、推定しています。

【注】踏み上げ
日経平均が下落すると予想して日経平均先物の売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していく中で、損失拡大を防ぐために日経平均先物の買い戻しを迫られること。

 それが、東京証券取引所が発表している「裁定売り残」の推移から読み取れます。詳しく説明すると難解になるので、説明は割愛して結論だけ述べます。東京証券取引所が発表している「裁定売り残」の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「売り建て」の変化が表れます。売り建てが増えると裁定売り残が増え、売り建てが減ると裁定売り残が減ります。以下をご覧ください。

日経平均と裁定売り残の推移:2018年1月4日~2020年12月30日(裁定売り残は2020年12月25日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 外国人投資家は、過去3年間、日本株を大量に売り越してきました。株式現物だけでなく、日経平均先物の売り建ても増やしてきたことが、裁定売り残高の増加からわかります。

 ところが、外国人の先物売り建ては、成功していません。2019年10~12月には、日経平均が上昇する中で、先物の踏み上げが起こっています。2020年に入り、コロナショックの急落過程で、先物の売り建てを大幅に増やしましたが、その後の急反発局面で、踏み上げが2回起こっています。まず2020年5~7月の急反発局面で、先物の踏み上げが起こりました。日経平均が上昇する中で、外国人投機筋は、日経平均先物の買い戻しを余儀なくされました。次が、2020年11~12月の日経平均急騰局面です。ここでも、先物の踏み上げが起こっています。

 11~12月の踏み上げで、裁定売り残高は、1.3兆円まで減ってきました。今しばらく踏み上げによる先物買戻しが続く可能性がありますが、いずれ裁定売り残が1兆円を割れるあたりから、買戻し圧力は減少していく可能性もあります。