実用的で簡単なカスタマイズド・ベンチマーク

 先ほどの問題の解答が残っていた。インデックス、即ち株価指数でないベンチマークがあり得るとして、どのようなベンチマークなら、「実用的な」意味があるか?

 おそらくは、多くのファンドマネジャーにとって、手強くて、しかも具合の悪いことに、簡単に作れてしまうベンチマークは、「前期末のポートフォリオのバイ&ホールド」だ。要は、「一年間何もせずに前期末のポートフォリオを持ち続けた場合のパフォーマンスに対して、この一年間何を付け加えたか」を評価するベンチマークとなる。

 ファンドマネジャーにとって、これは内容的にも意味的にも「最強のベンチマーク」かも知れない。

 ポートフォリオ内の売買は、「この売買によってパフォーマンスが改善できる」と思ってやる訳だが、「思い」と「現実」がしばしば乖離するのが投資の世界である。売買コストを払って、パフォーマンスを改善できる人の方が少ないはずだ。投資信託などの評価に使ってみても面白い。

 正直なところ、この方法が普及しすぎると、投資家が冷静になって売買注文が減る可能性があり、証券会社の社員としては、本当は勧めたくないのだが、個人投資家でも運用の腕を上げることに熱心な方は、是非やってみるといい。真に熱心な読者のために、特別にお勧めする次第だ。

【コメント】
6年前の記事だが内容に変更したい点はない。「アクティブ」「パッシブ」「ベンチマーク」「カスタマイズド・ベンチマーク」は、現在も正確に理解されていないし、有効に活用されていない用語・概念だと感じる。特に「ベンチマーク」は、個人投資家の世界ばかりでなく、年金運用などプロの世界でも案外適切に使われていない。客(投資家)・運用機関・販売者のいずれにとっても「もったいないこと」で、改善の余地があると思う。
(2020年11月8日 山崎元)