マネーのルール、最初の10個

「分からないものには手を出すな」とは、言い換えると「お金の判断は自分でしよう」ということであり、「お金の判断については他人を頼ると危険だ」という含意がある。この基本思想は10年経っても変わっていないし、10年の間には、通貨選択型の毎月分配型投信や対面型のラップ口座といった、悪質な商品・サービスが流行するようになったので、最初のルールとして、この項目を掲げることは適切であるように思う。

 ルール2ルール3は、「お金の問題では、他人、特に金融マンを頼るな」という話であり、ルール1を補足する内容だが、今書き直すとすると、「相談相手と運用商品の購入相手を分けるべきこと」「お金の手の内を知られた相手として特に銀行を警戒すべきこと」を強調して書くだろう。

 ルール4で述べている、お金の事情は人によって違うということについては、今なら、お金の事情(運用金額や、人生のステージの違いなど)はいろいろであっても、お金の運用の目標は単にお金を増やすことなのだから、運用手段は一通りでいいことの方を強調したい。

 ルール5は、内容的に「その通り!」でいいと思うが、キャリアプランニングに関する補足を入れるかどうか、また、稼ぎ・節約・不動産・保険・運用などの重要度の順位を説明するかどうかが悩み所だ。

 また、ルール6では、バランスシートと損益計算書の簡易版を使って家計を把握する方法を説明しており、これはそれなりに有益だ。この内容は、楽天証券の本連載の初期に書いた原稿の中でも好評なものの一つだった。これは、概(おおむ)ねこのまま残すとして、今なら、必要な貯蓄率を求める「人生設計の基本公式」に関する項目を一つ追加したい。

 ルール7は、このまま残すが、お金が「使途は後で自由にきめられること」「運用の形も自由であること(金額が大きくても小さくても基本的に同じ運用ができること)」「お金の大きさも自由であること」のお金の3つの自由に関連づけて説明を補強したい。

 お金の使途別の運用や、投資家のタイプ別の運用、といった一見顧客思いの考え方を装って、手数料が高い商品が売られていることは十分指摘しておきたい。

 ギャンブル依存症については(ルール8)、必ず警告するべきだし(ネット証券の社員としては特に)、リスクの考え方(ルール9ルール10)は年月が経っても変わらず重要だ。それにしても、ルール10の「長期投資でリスクは縮小しない」という常識は、10年以上前から訴えているのだが、なかなか世間に浸透しない。