投資をはじめて変化した世界

――今までの話を聞いていてふと思ったのですが、企業分析としてのファンダメンタルズと投資対象としてのファンダメンタルズは違うのですか。また、何か気がついたこと、得たことがありますか。

山崎 いい質問だね。大塚君、どう?

企業の分析で視野が広がった、と大塚さん

大塚 単純に投資の対象としてファンダメンタルズ分析をしている中で、これは企業分析にも役立つよね、と気づきつつある段階です。ある数字が気になって調べてみたら、「企業がもうかるってこういうことなんだ」と分かったこともありました。

また、投資を始めてから、世界の事象を表面的な印象ではなくて、深く考えられるようになりました。

西河 企業分析をしていくうちに、企業が借金をすることは悪くないことだと分かりました。無借金経営の企業が優良企業ともてはやされることがあるけれど、世界のトップクラスの企業の多くは、多額の有利子負債を抱えている。ソフトバンクも有利子負債が多いですよね。

 有利子の負債だから、借りたお金よりも(利息分)多く返済しないといけないので、資金調達の手段としては新しい株式を発行して市場から調達した方がいいかと思っていたのですが、勉強するうちに、株主が期待するリターンを出し続けることの方が企業としてはリスクが大きい、だったら利息を払ってでも借金をして資金調達をする方がいいと思うようになりました。

山崎 借金はすべて「悪い借金」ではなくて、使い道が十分に合理的で、借り入れる際の金利が低ければ「いい借金」と言える。

 例えば、高すぎない家を買うときに組む住宅ローンはいい借金。企業が設備投資をすればもうかるという見通しがあればいい借金。でも、カードローンでお金を借りて、15%もの金利を払うのは悪い借金だと思う。それを知ることができただけでも、違う世界を見ることができたといえるのかもしれない。

――投資クラブ活動を続けていく中で、これからいろいろな発見がありそうですね。では、山崎さんに聞いてみたいことはありますか。

大塚 投資と投機といいますが、投機をどう捉えていますか?

山崎 投機は、ゲームとして楽しむのならいいけれど、稼ぐための手段ではないと思うといい。投機に参加することは、人間の精神活動としては高度だと思うし、博打をやってみたけどうまくいかないときの心理は経験しておくべき。日本にカジノができたら、子どもが成人したときに連れて行こうと思っているんだ。ギャンブルはたしなむべきもの。

 私が楽天証券に勤めていなければ、遊びで株のデイトレやFXをやっていると思うけれど、今は立場上できないので、競馬をやっているわけ。この中で競馬をやる人は?

西河 競馬はゼロサム(一方が利益を得たら、もう一方は損をして、全体としてはプラスマイナスゼロになること)ですらないのでやりません。

――ゼロサムですらないって、どういうことですか。

 競馬好きな山崎元

山崎 競馬の控除率を25%とすると、1万円馬券を買うと2,500円の損が期待される。2,500円で映画を見るのと日本ダービーを見るのとではどちらが楽しい? 1日のレースで1万円の馬券を買うと、1カ月8回の開催で8万円を投じることになり、期待値として2万円の損になる。その金額が教養娯楽費として適切だろうか?

 さらに投じた8万円を全額すっても生活に支障がないか? 競馬はゼロサムですらないけれど、私は映画より日本ダービーのほうが楽しいし、2万円は教養娯楽費として適切だと思うし、8万円を失っても生活はできる。だから、1日1万円くらい馬券を買ってもいいと思っているのです。