「裁定買い残」は5,853億円まで低下、「裁定売り残」は8,926億円に増加。投機筋の買いポジションは整理され、売りポジションが積みあがった状態

 私がファンドマネージャー時代に、日経平均先物のトレーディングをする上で、重視していた需給指標に、「裁定買い残」があります。2月14日時点の裁定残高データを見ると、日本株は「売られ過ぎ」と判断できます。

 詳しい説明は割愛しますが、裁定買い残の変化に、外国人による投機的な先物売買の変化が表れます。

 外国人が先物を買うと、日経平均が上昇し、(裁定取引を通じて)裁定買い残が増加します。外国人が先物を売ると、日経平均が下落し、(裁定解消売りを通じて)裁定買い残が減少します。

 近年の日経平均および裁定買い残は、以下のように推移しています。

<日経平均と裁定買い残の推移:2007年1月4日~2020年2月25日(裁定買い残は2月14日まで)>

(出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成)

 裁定買い残は、2007年以降でみると、3,000億~6,000億円まで減少すると、増加に転じていました。リーマンショック後の安値(2009年)、ブレグジットショック後の安値(2016年)に、裁定残は3,000億~6,000億円まで減少してから底を打っています。

 日経平均は、裁定買い残が減少している間、つまり投機筋(主に外国人)が先物を売っている間は下落します。ところが、裁定買い残が増加に転じる、つまり外国人が先物買いに転じると、上昇に転じます。2007年以降では、裁定買い残が3,000億~6,000億円まで減少したところで、日経平均先物を買えば、タイミングよく日経平均が反発に転じ、利益を得られる可能性が高かったと言えます。

 2月14日時点で、裁定買い残は、再び5,853億円まで低下しています。一方、裁定売り残は、8,926億円まで積みあがっています。差し引きすると、売り残が買い残を3,073億円も上回っています。投機筋の先物買いポジションはほとんど整理され、先物売りポジションが積み上がっている状態です。短期的な需給指標として、「売られ過ぎ」を示唆しています。

 ここまで、裁定買い残が減り、裁定売り残が積み上がったということは、外国人の投機筋は、リーマンショック時、ブレグジットショック時と同じくらい、日本株にネガティブと判断していたことになります。

 ここからさらに悪材料が出ても、追加で大量の先物売りは出にくいと言えます。少しでもファンダメンタルズに改善の兆しが見えれば、外国人の先物買い戻しが出やすいといえます。新型肺炎ショックがさらに強まるか、少しずつ対策が見えてきて落ち着くかがカギとなります。

 私は、今後数か月かけて、新型肺炎によるショックは少しずつ収まっていくと考えています。したがって、この急落局面は、日本株は押し目買い方針と判断しています。