日経平均は心理的節目の2万3,000円を一気に割れる、2万2,000円まで下げる可能性も

 25日の日経平均株価は前週末比781円下落し、2万2,605円となりました。新型肺炎の感染が欧州にも拡大していることが嫌気され、欧米の株価が急落した流れを受け、日本株にも外国人と見られる売りが増えました。

 26日も、日経平均は急落が続く可能性があります。25日も新型肺炎ショックで、欧米株式が急落しているからです。目先、世界株安が続く可能性があります。

<日経平均株価週足:2018年初~2020年2月25日>

 日経平均は、昨年10~12月、世界景気回復期待から、心理的節目となっている2万2,000円、2万3,000円を抜けて上昇しました。ところが、心理的節目の2万4,000円でもみあっているうちに、1月後半から、新型肺炎ショックによる世界景気悪化懸念で下落。25日は、心理的節目の2万3,000円を割れました。

 新型肺炎が起こっていなければ、米中「第一段階合意」の成立で米中対立が一時的に緩和し、世界景気の回復期待が高まっているはずでした。新型肺炎による世界景気へのマイナス影響が、想定以上に大きくなるリスクが出てきたことが嫌気されています。

 私は、この下落局面は「買い場」と判断しています。年後半、新型肺炎の影響が薄れた時に、世界景気は回復に向かうと予想しているからです。ただし、私が日本株に強気なのには、もう一つ理由があります。投機筋のポジションが売りに傾いていることも強気判断の理由です。

 日経平均の先行きを予想する時、私はファンダメンタルズ(景気・企業業績)と需給(投機筋の売買ポジション)の両面を分析します。今日は、需給面から見た日本株が、買い場と判断できることを解説します。

「裁定買い残」は5,853億円まで低下、「裁定売り残」は8,926億円に増加。投機筋の買いポジションは整理され、売りポジションが積みあがった状態

 私がファンドマネージャー時代に、日経平均先物のトレーディングをする上で、重視していた需給指標に、「裁定買い残」があります。2月14日時点の裁定残高データを見ると、日本株は「売られ過ぎ」と判断できます。

 詳しい説明は割愛しますが、裁定買い残の変化に、外国人による投機的な先物売買の変化が表れます。

 外国人が先物を買うと、日経平均が上昇し、(裁定取引を通じて)裁定買い残が増加します。外国人が先物を売ると、日経平均が下落し、(裁定解消売りを通じて)裁定買い残が減少します。

 近年の日経平均および裁定買い残は、以下のように推移しています。

<日経平均と裁定買い残の推移:2007年1月4日~2020年2月25日(裁定買い残は2月14日まで)>

(出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成)

 裁定買い残は、2007年以降でみると、3,000億~6,000億円まで減少すると、増加に転じていました。リーマンショック後の安値(2009年)、ブレグジットショック後の安値(2016年)に、裁定残は3,000億~6,000億円まで減少してから底を打っています。

 日経平均は、裁定買い残が減少している間、つまり投機筋(主に外国人)が先物を売っている間は下落します。ところが、裁定買い残が増加に転じる、つまり外国人が先物買いに転じると、上昇に転じます。2007年以降では、裁定買い残が3,000億~6,000億円まで減少したところで、日経平均先物を買えば、タイミングよく日経平均が反発に転じ、利益を得られる可能性が高かったと言えます。

 2月14日時点で、裁定買い残は、再び5,853億円まで低下しています。一方、裁定売り残は、8,926億円まで積みあがっています。差し引きすると、売り残が買い残を3,073億円も上回っています。投機筋の先物買いポジションはほとんど整理され、先物売りポジションが積み上がっている状態です。短期的な需給指標として、「売られ過ぎ」を示唆しています。

 ここまで、裁定買い残が減り、裁定売り残が積み上がったということは、外国人の投機筋は、リーマンショック時、ブレグジットショック時と同じくらい、日本株にネガティブと判断していたことになります。

 ここからさらに悪材料が出ても、追加で大量の先物売りは出にくいと言えます。少しでもファンダメンタルズに改善の兆しが見えれば、外国人の先物買い戻しが出やすいといえます。新型肺炎ショックがさらに強まるか、少しずつ対策が見えてきて落ち着くかがカギとなります。

 私は、今後数か月かけて、新型肺炎によるショックは少しずつ収まっていくと考えています。したがって、この急落局面は、日本株は押し目買い方針と判断しています。

【参考】 裁定買い残が3.5兆~4兆円まで積みあがれば、需給面から「売り」シグナルと判断

 裁定買い残が増加し、3.5兆円から4兆円に達すると、需給面からは売りシグナルと判断されます。外国人の投機筋が、日経平均先物を大量に買い建てている状態と判断されるからです。

 実際、以下の通り、過去の経験則では、裁定買い残高が3.5兆~4兆円に達したあと、日経平均は下落に転じていることが多かったと言えます。

<再掲>日経平均と裁定買い残の推移:2007年1月4日~2020年2月25日(裁定買い残は2月14日まで)>

(出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成)

▼もっと読む!著者おすすめのバックナンバー

2020年2月25日:[NYダウ急落最新レポ!]いよいよ景気後退?どうなる日本株?
2020年2月18日:GDPショック!10~12月は年率▲6.3%、どうなる日本株?
2020年2月13日:人気株主優待の中で利回り3%以上の高配当株。NISAで投資したい4銘柄