2020年も“株高・金高”が起きやすい

 米国(トランプ大統領)をきっかけとした複数の要因により、2019年、“株高・金高”が発生したと書きました。大統領選挙に向けたトランプ大統領の株高施策によって、2020年も“株高・金高”が起きると、筆者は考えています。

 以下のグラフは、NYダウと米国の失業率の推移を示しています。

 図:NYダウと米国の失業率の推移

出所:NYSE(ニューヨーク証券取引所)および米労働省のデータをもとに筆者作成

 一般の有権者においては、細かなデータで難しい説明をされても、景気の状態がどうなのか、イメージすることは難しいかもしれません。しかし、株価が上昇し失業率が低下していれば、一般の有権者の多くが“景気が良い”と認識する可能性があります。

 最近のトランプ大統領のツイートで、株価が最高値を更新していることが何度も言及されているのは、景気の浮遊感が高まっていることを認識させやすい株高を、一般の有権者にアピールする狙いがあると考えられます。

 トランプ大統領は、1月3日のイランの要人殺害で中東におけるリスクが高まった際、“戦争をとめるために行った”と説明し懸念が拡大することを防ぎ、1月15日に、“第一段階の合意”に署名をし、激化した米中貿易戦争が鎮静化する期待を高めました。

 イランの要人を殺害する指示をしたのも、米中貿易戦争を悪化させたのも、トランプ大統領本人だと言えますが、これらの懸念を払しょくしたのもまた、トランプ大統領本人と言えます。

 つまり、トランプ大統領は、自分で蒔いたリスクを自分で払しょくしているわけですが、期待を織り込む(織り込みたがる)性質がある株式市場が、今どこに注目しているのかと言えば“リスクの払しょく”の部分と言えます。

 株式市場はトランプ大統領が(自作自演で引き起こしている)リスクの払しょくによる期待増幅を好感して上昇しているとみられます。実態が伴っていなくても、です。現に中国の2019年のGDPが29年ぶりの低水準となったことを受けても、株価は上昇し続けているわけです。

 指標と実態の乖離の拡大は、大統領選挙を前にしたトランプ大統領の自作自演により、人為的に起きている可能性は否定できません。

 また、11月3日の選挙に向けて、同大統領は一般の有権者が好意的に受け止める株高施策をさらに打ち出すと考えられます。

 具体的には、米中合意の第二弾についてです、今のところ合意は11月くらいになりそうとの報道があります。一見するとすぐに合意しないことから期待するのはまだ先に思えますが、トランプ大統領にとっては、合意に向けた交渉というパフォーマンスを長い期間行うことができる、という意味があります。

 トランプ大統領にとって、すぐに合意してしまっては、株高を誘発するパフォーマンスをする期間が短くなってしまいます。同大統領にとって、かえって、合意する時期は遠い方が好ましく、むしろ大統領選挙の日よりも遠いスケジュールの方が、“もう4年、大統領を任せてくれるならば、交渉の続きができる”、というアピールをしながら選挙戦を戦うことができます。

 このように考えれば、2020年も、実態を伴わない株高が続き、引き続き、指標と実態の乖離が拡大し、その結果、“株高・金高”が起きる可能性があります。株価の上昇に連れて、銅価格が上昇した場合は、実態を伴う株価の上昇、という状況になるため、株高・金安が起こると考えられます。

 投資の教科書に書かれている“株高・金安”とは異なる、“株高・金高”が今年も起きる可能性があるため、できるだけ先入観・偏見・思い込みを排除し、材料を俯瞰しながら価格の推移に注目することが必要だと思います。

 

 (参考):米大統領選挙までのスケジュール

出所:筆者作成