プラチナは消費減少要因を抱えながらも、リーマンショック後の安値をしっかりと維持

 一方、プラチナですが、パラジウムと異なり、下落要因が目立ちます。消費が増えないことが、プラチナ価格の上値を抑えている最も大きな要因と言えます。

 フォルクスワーゲン問題発覚により、欧州を中心にディーゼル車離れ(ガソリン車や次世代自動車へのシフト)が進んでいること、景気減速懸念が強まった影響で中国の宝飾向けプラチナ消費が減少していることは、プラチナの消費が減少する(仮に減少しなかったとしても増加しない)要因になっています。

 この件に関連し、11月21日、世界的なプラチナの調査機関であるWPIC(World Platinum Investment Council)がプラチナの自動車排ガス浄化装置向け消費と宝飾向け消費の見通しを公表しました。

 1年前の同時期に公表した2019年の見通しを、自動車排ガス浄化装置向け、宝飾向けともに下方修正をし、かつ2020年の消費量が2019年よりも少なくなる、という内容でした。

図:プラチナの自動車排ガス浄化装置向け消費(左)と宝飾向け消費(右)の見通し 単位:千トロイオンス

出所:WPICのデータより筆者作成

 プラチナの需給バランスにおいては、供給が極端に減少しない限り、今後も供給過剰が継続する可能性があります。(WPICは同統計で、2019年は投資向け需要が急増し、わずかながら供給不足に転じると見通しを公表していますが、来年3月に公表される2019年の確定値を確認するまでは確証は得られません)

 つまり、プラチナの価格動向については、パラジウムと対照的に今後も厳しい状況が続くことが予想されます。

 ただ、筆者が注目しているのは、これだけの下落要因がある中で、プラチナ相場がリーマンショック後の安値水準を下回っていない点です。

図:プラチナ価格 単位:ドル/トロイオンス

出所:CMEのデータをもとに筆者作成

 プラチナは、触媒作用を有するため自動車排ガス浄化装置に用いられたり、魅力的な輝きを放つため宝飾品に用いられたりしていますが、現在、それらの消費は頭打ち、あるいは減少傾向にあります。なおかつ、それらの消費は今後、減少するという見通しが出ています。

 しかし、価格はリーマンショック後の安値をしっかりとキープしています。この底堅さは、他の貴金属はおろか、他のコモディティ銘柄の中でも稀有な存在と言えます。

 仮に、長期的に貴金属の価格に注目するとすれば、大きな複数の下落要因に負けじと、底堅く推移するプラチナが有望だと個人的には思います。ニューヨークの先物市場ではおよそ1トロイオンスあたり900ドル近辺で推移しています。今後も長期的視点で、プラチナ価格が底堅く推移するかに注目したいと思います。

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・「OPEC総会直前レポート!米シェール生産増加は、OPEC減産継続の最大の動機?
・「サウジアラムコ、国内でIPO実施へ!原油価格、OPEC減産への影響は?