7月に注目したい新興株の動き

 注目された6月29日の米中首脳会談は、株式市場的にはフレンドリーな形(最大の焦点だった対中制裁関税「第4弾」の発動が見送られるなど)で通過しました。7月は初日からリスクオンで入れましたので、ひとまず新興株も好スタートを切れています。

 驚いたのが、7月3日に出た大量保有報告。国内の独立系運用会社大手スパークスが、先月19日に上場したばかりのSansan(4443)を5.71%保有していることが判明しました。6月末の株価ベースで計算すると、ナント97億円も買っています。これほど一度に買い付ける事例は珍しく、おそらく長期保有すると見られる投信(機関投資家)マネー流入がSansanの株価安定につながるなら新興株全体にもポジティブでしょう。

 季節的な話になりますが、7月の新興株市場の傾向は?というと「あまりいいイメージがない」というのが過去パターンからは言えること。2015年~2018年まで過去4年連続で東証マザーズ指数は月間でマイナス。特に下げたのが、2016年と2018年でした。2016年はマザーズ先物が上場したタイミングでしたが、手前の6月に月間12%安で、それを引きずる形で7月も月間9%安。昨年2018年は、1月~7月までマザーズ指数が7カ月連続安(指数算出来で最長の月間下落)を記録した時でした。いずれも、個人投資家の信用評価損益率が極めて悪化している状態で7月に入り、その影響が尾を引きました。

 では、今の信用評価損益率はどうなのか?でいえば、状況は「極めて悪い」の一言です。6月末時点の信用買い残の評価損益率は▲14.79%。この数値の一般的な見方としては、「▲15%以下になると危険水域」といえます。個人投資家の懐具合が非常に悪くなり、この辺りでロスカットが加速し、結果的に買い持ち分が減少することで相場が好転する…オシレーター指標的に使われる数字です。

 ただ、危険水域ですので、▲15%水準まで悪化するような状態は多くありません。例えば、2018年でいえば年間50週のうち3週だけ。2017年は年間51週のうち一度も発生しませんでした。一方で今年はどうか?というと、上半期(24週)のうち、11週も▲15%以下の水準を付けているのです。手持ち株の評価損益率が非常に悪い状態がノーマル化し、個人投資家の不満分子が常に溜まり続けている感覚…これはアベノミクス相場が始まって以降では初の状態です。

 この状況で7月相場に入るわけで、出足こそ好調でも持続性には大いに疑問が残るところ。投資家のセンチメントが常に良くないため、売買も一向に増えません。この売買が増えないことも非常に問題です。売買が多いというのは、市場に柔軟性があるということです。売る人もいれば、買う人もいる…これで逆張りが効きます。新値をブレイクした銘柄ばかり買う順張り派もいるでしょう。売買が多いというのは、色んな手法が市場に存在しているということです。今は、東証1部にしろ、指数先物にしろ、もちろん新興株にしてもこの柔軟性が著しく低下しています。つまり、これまで利益につながっていた手法がひとつ、またひとつと通用しなくなっているということです。

 そして、そこに景気減速に対する不安が覆っているわけで、常に「いつ、また“ちゃぶ台返し”が起こってもおかしくない」と戦々恐々としている投資家心理も加わっています。個人の信用評価損益率が一気に好転するような、何か強いカタリストが生まれないものでしょうか…。消費増税の延期に期待していたものの、その期待も潰え、多くの市場参加者が“資産防衛的”なポートフォリオ作りに動いています。その裏側にある新興株投資に関しては、やはり慎重姿勢を貫いた方がいいと思います。そう思うと、短期的に流行っている低位株の割り切り超短期トレードというのは理にかなっているのかもしれませんね。