ウォーター・ビジネスが「安定成長」とされる理由

「日本人は水と安全はタダだと思っている」とのイザヤ・ベンダサン氏(作家:山本七平氏の筆名とされる)の言葉は有名です。実際、安全な水は人間にとり、生活用水、農業用水、工業用水に不可欠な貴重な資源です。

 特に、世界で総人口が増加を続けるに伴い、食糧需要も拡大の一途であり、農業はもちろん、畜産業(鶏、豚、牛の飼育)でも衛生的な水の需要が拡大しています。地球上の水は約97.5%が「海水」で、約2.5%が「淡水」とされていますが、淡水の8割以上が南極、北極、氷河、地下水となっており、実際に使える地球上の淡水は地球全体の水の約0.01%しかないと言われています。

 国連の「世界の人口推計」(2015年版)によると、世界の総人口(2015年時で約73.5憶人)は、2050年に約97億3,000万人に増加していくと予測されています。そして、発展途上国を中心に1人当たりの所得や消費の増加も見込まれています。世界銀行の副総裁であったイスマイル・セラゲルディン氏は1995年、将来予想される「水不足」について、「20世紀の戦争が石油をめぐって戦われたとすれば、21世紀は水をめぐる争いの世紀になるだろう」と警告しました。

 OECD(経済協力開発機構)は、水需要の増勢に、地球温暖化による自然災害の発生頻度の増加と大規模化が重なり、「2050年には、深刻な水不足に見舞われる河川流域の人口は39億人(世界人口の約4割)となる可能性がある」と警告しました。

 こうした観点に立つと、水源開発、工業用水供給、水の再利用、上下水道、海水の淡水化などのウォーター・ビジネス(水資源関連事業)は「景気のサイクルに左右されにくい安定成長分野」と言えるでしょう。実際、世界の水資源関連銘柄で構成されるグローバー・ウォーター指数(*)の過去1年における投資効率(R/Rレシオ)は、米国株、外国株、新興国株、日本株を大きく上回っています(図表2)。

図表2:グローバル・ウォーター指数の投資効率(市場実績)

*:グローバル・ウォーター=ナスダックOMXグローバル・ウォーター指数
注:R/Rレシオ=過去1年のリターン(総収益率)÷過去1年のリスク(変動率)<投資効率指標>
出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2018/2/27~2019/2/27)