年初来の堅調一服で3月相場は「花冷え」?
米国でダウ平均株価が1995年以来となる「9週連続高」を記録した後の一服商状が日本市場に及んでいます(2月28日時点)。
トランプ米大統領は自らの支持率と株価の堅調を意識し、中国との貿易協議について「良好に進んでいる」と繰り返しTwitterでつぶやき、当初予定の対中交渉期限(3月1日)を延期する方針を表明。市場は、3月下旬とされる習近平中国国家主席との首脳会談を経た「貿易摩擦の緩和」を織り込みつつあります。
英国のEU(欧州連合)離脱問題も、アイルランド国境問題の対応を巡る交渉が進展しないまま、「合意なき離脱」を避けるため、離脱期限(3月29日)の延期や国民投票の再実施さえ視野に入ってきました。
「ウワサで買ってニュースで売る」との格言にならうなら、今年に入り「期待」を相当程度、織り込んできた株式市場が3月にいったんスピード調整入りしても不思議ではありません。
特に日本株式(TOPIX[東証株価指数])は、中国と米国の景気先行指数が同時的に低下基調にあり、米国や外国株式に出遅れ気味です。2019年3月期決算前に、業績見通しを巡る不透明感が株価の上値を抑える動きとなる可能性は否定できません。「春の到来」を早めに期待してきた株式相場だけに、3月が「花冷え」となる展開には注意を要します。
そこで今回は、世界的に景気が停滞する局面でも「安定成長」が再認識されはじめた投資対象として「グローバル・ウォーター」(世界の水資源関連銘柄群)に注目したいと思います(図表1)。
図表1:グローバル・ウォーターが優勢を鮮明にしている
ウォーター・ビジネスが「安定成長」とされる理由
「日本人は水と安全はタダだと思っている」とのイザヤ・ベンダサン氏(作家:山本七平氏の筆名とされる)の言葉は有名です。実際、安全な水は人間にとり、生活用水、農業用水、工業用水に不可欠な貴重な資源です。
特に、世界で総人口が増加を続けるに伴い、食糧需要も拡大の一途であり、農業はもちろん、畜産業(鶏、豚、牛の飼育)でも衛生的な水の需要が拡大しています。地球上の水は約97.5%が「海水」で、約2.5%が「淡水」とされていますが、淡水の8割以上が南極、北極、氷河、地下水となっており、実際に使える地球上の淡水は地球全体の水の約0.01%しかないと言われています。
国連の「世界の人口推計」(2015年版)によると、世界の総人口(2015年時で約73.5憶人)は、2050年に約97億3,000万人に増加していくと予測されています。そして、発展途上国を中心に1人当たりの所得や消費の増加も見込まれています。世界銀行の副総裁であったイスマイル・セラゲルディン氏は1995年、将来予想される「水不足」について、「20世紀の戦争が石油をめぐって戦われたとすれば、21世紀は水をめぐる争いの世紀になるだろう」と警告しました。
OECD(経済協力開発機構)は、水需要の増勢に、地球温暖化による自然災害の発生頻度の増加と大規模化が重なり、「2050年には、深刻な水不足に見舞われる河川流域の人口は39億人(世界人口の約4割)となる可能性がある」と警告しました。
こうした観点に立つと、水源開発、工業用水供給、水の再利用、上下水道、海水の淡水化などのウォーター・ビジネス(水資源関連事業)は「景気のサイクルに左右されにくい安定成長分野」と言えるでしょう。実際、世界の水資源関連銘柄で構成されるグローバー・ウォーター指数(*)の過去1年における投資効率(R/Rレシオ)は、米国株、外国株、新興国株、日本株を大きく上回っています(図表2)。
図表2:グローバル・ウォーター指数の投資効率(市場実績)
グローバル・ウォーターへの投資に注目するなら
前述した「グローバル・ウォーター指数」(ナスダックOMXグローバル・ウォーター指数)は、世界の株式市場に上場されている飲料水、家庭用水、工業用水の処理・節約・浄化のための製品・サービス提供に携わる企業群で構成されています。ウォーター・ビジネスに世界規模で投資したいのであれば、グロ-バル・ウォーター指数と連動する投資成果を目指す海外ETF(上場投資信託)を活用することが可能です。
「インベスコ・グローバル・ウォーターETF」(PIO)は、世界の水資源関連銘柄に投資をしているファンドです。ナスダックOMXグローバル・ウォーター指数の配当込み総収益に連動する投資成果を目指しており、水資源関連事業に注力する約46銘柄に分散投資しています(2月時点)。同ETFの取引価格は、昨年の秋から年末までの世界株安では大幅調整を余儀なくされましたが、世界的に景況感が鈍化する中、今年に入っては戻り基調を鮮明にしています(図表3)。
現在、PIOの取引単価は26.46ドル前後で、年初来騰落率は+14.4%とS&P500指数(同+11.5%)やTOPIX(同+8.5%)より優勢となっています(2月27日)。
図表4では、同ファンドが投資をしている上位組入れ銘柄(1位から15位まで)の期間別総収益率を示しました。日本企業からはTOTO(5332)が13位にあり興味深い点です。水資源関連事業にハデさはありませんが、世界が景気停滞局面にあっても相対的には着実な需要拡大が見込まれる分野と考えられます。
国際分散投資を検討する上で、安定成長を担う一翼を検討する際には、グローバル・ウォーター関連のETF(PIO)に注目したいと思います。
図表3:世界の水資源関連銘柄に分散投資する海外ETF
図表4:ETF(PIO)の上位組入れ銘柄(参考情報)
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