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『電子部品』業界は、成長性、競争力は高いものの、主力のスマートフォン(スマホ)向けなどで需要の変動が大きいため、多角化による収益安定に取り組んできました。昨年の10-12月期以降、米中貿易摩擦の影響などから、スマホ向けなどの受注が急減速しましたが、注力してきた車載向けが堅調で、収益を下支えしました。各社は車載に次ぐ柱として医療向けを強化し始めており、動向が注目されます。

 

【ポイント1】スマホの販売不振などから通期決算を下方修正

多角化効果や用途の拡大が収益下支え

 米アップルの「iPhone」などスマホの販売不振に加え、中国経済の減速の影響を受け、10-12月期以降『電子部品』受注が急減速する中、『電子部品』各社が通期予想を下方修正する動きが相次ぎました。

 ただ依然スマホへの依存は高いものの、多角化や用途の拡大などが各社の収益を下支えしました。村田製作所は、積層セラミックコンデンサーの車載機器向けでの高品質路線が奏功し、従来予想を堅持して通期最高益更新を見込んでいます。他の会社についても、注力してきた電気自動車、自動運転向けなどでの用途拡大などから、1-3月期以降も収益が更に落ち込んでいくとの見通しは少数です。

 

【ポイント2】『電子部品』各社は医療向けを強化

京セラなど医療向けを次の柱に

『電子部品』各社で車載向けに加えて、医療向けを強化する動きが広がってきました。小型・高機能化が進む医療分野は、新規参入企業が多く競争は激しいものの、高い技術力を生かせることや景気の影響が小さく安定成長が見込まれるためです。

 例えば京セラは、人工関節事業の強化を進めています。1月には米社の実質的買収で合意し、国内に加えて最大市場の米国市場に参入しています。車載向けなどに次ぐ柱に育てる方針です。

 スマホ向けタッチパネル大手のNISSHAは、買収を通じて医療機器の受託生産などの拡大を図り、売上高に占めるスマホ関連を含めたIT分野の比率を引き下げる意向です。

 

【今後の展開】医療向けが次の柱として育ち収益拡大につながることを期待

『電子部品』各社は、成長を牽引してきたスマホ市場が成熟化する中で、注力してきた車載向けが収益に貢献し始めました。強化を進める医療向けが次の柱として育ち、国内の『電子部品』各社の高い競争力維持と安定した収益拡大につながることが期待されます。

*個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。