トルコ危機が深刻化する懸念で急落した日経平均は、不安緩和で急反発

 13日(月)の日経平均株価は前週末比▲440円と急落しましたが、14日(火)は前日比+498円と急反発しました。急落急騰の背景にあるのが、トルコ通貨危機です。

 10日(金)、トルコリラは、たった1日で、米ドル対比22%も下落しました。トルコへの不安拡大を受けて、13日には日経平均先物に外国人の売りが増えました。

 トルコリラは、米ドル対比で13日に約1%続落しましたが、14日には約7%反発しました。14日は、トルコへの不安がやや緩和したと解釈され、外国人による日経平均先物の買い戻しが増えました。

 ところで、トルコの問題でなぜ日経平均は乱高下するのでしょうか。はっきり言って、トルコと日本との経済的なつながりは深くありません。仮に、トルコがデフォルトするようなことになった場合、大きな影響を受けるのは欧州の金融機関です(トルコがデフォルトすると予想しているわけではありません)。

 それでも、トルコの問題で日本株が乱高下するのには、2つの理由があります。

 

トルコ危機で日経平均が乱高下する2つの理由

(1)危機がトルコ一国に留まらず、新興国全般に拡散するリスクもある

 トルコリラが売られるにつれて、トルコと同様、対外負債残高が大きい高金利通貨が売られてきています。トルコほど下落率が大きいわけではありませんが、南アフリカ・アルゼンチン・ベネズエラ・ブラジルなど、過重債務国の通貨は一斉に下落しています。

 背景に米利上げがあります。FRB(米連邦準備制度理事会)が超金融緩和を実施している間、世界中にあふれかえったマネーが高金利を求めて、トルコ・南アフリカなどに一斉に流入していました。ところが、米国が超金融緩和を終了し利上げを続けていくうちに、資金の逆流が起こっています。つまり、高金利国からマネーが流出し、米国に回帰しつつあります。

 それが、対外負債の大きい新興国の通貨下落を引き起こしています。過重債務国の対外負債はドル建てなので、自国通貨が対ドルで急落すると実質的な返済負担がどんどん拡大することになります。トルコなどの新興国では、米国の超金融緩和を利用して増えてきた負債が、米国の金融政策の変更でずっしりと重くのしかかってきています。

 このように、トルコの通貨危機の背景にはトルコ一国に限定されない問題があり、それが、金融市場全体の不安につながっています。

 それでは今回、トルコリラの下げが特に大きくなったのはなぜでしょう?トルコの政治不安が強まったことが背景にあります。トルコのエルドアン大統領が、独裁を強めていることが、トルコの政治経済両面で不安を高めています。最近、そのエルドアン大統領がトランプ米大統領との対決姿勢を鮮明にしているため、トルコの地政学リスクも高まったと解釈されました。

 こうした通貨危機が起こると、中央銀行は通常、利上げをして通貨下落を止めようとします。ところが、エルドアン大統領はトルコ中央銀行に対し「利上げはするな」と釘をさしています。中央銀行がなんら対策をとらないと見透かされていることが、投機筋のトルコリラ売りを勢いづかせています。

 

(2)外国人投資家から見て、日本株は「世界リスク敏感株」である

 外国人投資家から見て、日本株は「世界景気敏感株」です。世界中で政治・経済に関する重大イベントが起こり、リスクが高まったと判断されると、外国人投資家はまず、日本株を売ってきます。まず日経平均先物を売れば、グローバル・ポートフォリオのリスクを落とせる、と考えているわけです。

 したがって、世界でなんらかのリスクが高まると、日本経済への直接の影響があるないにかかわらず、外国人は「パブロフの犬」のように条件反射的に、日経平均先物を売ってきます。それは過去に何回も繰り返してきたことです。

 2013年5月にバーナンキショック(2013年5~6月に発生した、アメリカ合衆国のFRB第14代議長ベン・バーナンキ氏の発言を引き金とした世界的な金融市場の混乱)が起こったとき、欧米主要国よりも日経平均の下落率が一番大きくなりました。ギリシャ危機が起こったときも、アフリカのエボラ出血熱が世界に広がる不安が出たときも、短期的に一番売られるのは日経平均でした。逆に言えば、不安が解消した時に一番上昇率が大きいのも、日経平均と言えます。8月13~14日には、外国人のリスク調整が、日経平均に大きな影響を与えました。

 ところで、トルコ危機はまだ終わったわけではありません。これからさらに危機が深まれば、外国人は日経平均を売る可能性があります。トルコやブラジルのファンダメンタルズ(経済的基礎条件)は今どうなっているのでしょうか?明日8月16日、この続きを解説します。

 

 

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