ロシア市場暴落はこれから起きる「悲劇」を予兆

 すでに決定あるいは検討されている西側諸国のロシアに対する大規模で効果的な経済・金融制裁が実施されることになれば、ロシアの経済や国民はかつてないほど厳しい状況に追い込まれます。

 特に、米欧日はSWIFT(国際銀行間通信協会)からロシアの一部主要銀行を排除することを決定し、G7としてロシア中央銀行との資金取引を停止。多くの機関投資家や民間企業がロシア証券での運用やビジネス活動の停止を表明しました。

 図表2は、ロシア通貨ルーブルの為替相場と株価指数の動きを示したものです。ウクライナ危機とロシア軍侵攻を経て、ルーブルもロシア株価も暴落していることがわかります。これは、プーチン大統領の軍事的暴走を契機に、ロシアの経済と国民が惨憺(さんたん)たる窮状に追い込まれる事態を予兆したものです。

 ルーブル急落と輸入制限でロシア国内のインフレは急上昇すると見込まれ、資金決済が制限されることもあり資源エネルギー(原油、天然ガス、石炭)や穀物の輸出は急減します。

 欧州系格付け会社フィッチ・レーティングスは2日、ロシアの外貨建て国債の信用格付けを従来の「BBB」から投機的水準に相当する「B」に6段階引き下げました。市場では、1998年に発生した「ロシア金融危機」の再来を警戒する向きもあります。

<図表2:ロシアの通貨と株価は暴落した>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年10月初~2022年3月2日)

 経済情勢の悪化でロシア国民の生活が困窮するに伴い、プーチン大統領の支持率は低下するとみられ、(独裁国家ではあっても)国内でもウクライナ侵攻に対する批判が高まるかもしれません。換言すると、プーチン大統領が戦争に勝利しても、ロシアの経済は敗北に追い込まれる可能性が高まっています。

 なお、ロシアからのエネルギー資源など輸出が急減すると、供給制約が一段と悪化して商品インフレ圧力が強まるリスクがあります。この場合、金融政策を巡る思惑が揺れて米国株が再び波乱を余儀なくされる可能性もあります。