テーパリング・ショックは想定より大きくなる可能性も

 今の世界株安について、昨年11月からFRBが始めているテーパリング【注】のネガティブ効果がじわじわ出てきていると見ることもできます。

【注】テーパリング
量的金融緩和を徐々に縮小していくことを、テーパリングと呼ぶ。昨年10月まで、米国の金融政策を司るFRBは、米国債などの金融資産を購入する量的緩和を行っていた。FRBが米国債などを購入し保有資産を増やすと、その対価として支払われるマネーの総量が増加するので、量的緩和効果が発揮される。
10月までFRBは、毎月米国債を800億ドル、MBS(住宅ローン担保証券)を400億ドル購入していたので、合わせて毎月1,200億ドルマネー総量を増やしていた。償還も勘案して保有額がそれだけ増加するように購入している。その購入額を、徐々に減らしていくことをテーパリングと呼ぶ。
金融緩和には2つの柱がある。1つは「金利引き下げ」、もう1つが、流通するマネーの総量を増やす「量的金融緩和」である。FRBは、政策金利をゼロに誘導する「ゼロ金利」を実施しているが、それだけでは金融緩和の効果は限られる。
さらに緩和効果を高めるために量的緩和を実施してきた。ところが、インフレ懸念が高まったことで、テーパリングを3月までで完了する予定としている。その後、利上げ、さらに量的な引き締めを検討することになる。

 参考までに、前回FRBがテーパリングを検討し、実際に実施した2013~2014年の日経平均の動きを振り返ります。

2013-2014年の日経平均・NYダウの動き比較:2012年末~2014年末

出所:QUICKより作成、2012年末の値を100として指数化

 ご覧いただくとわかる通り、テーパリングがらみで3回世界株安が起こっています。

【1】2013年5月:バーナンキ・ショック。当時FRB議長だったバーナンキ氏が「将来テーパリングが必要」と発言しただけで、世界株安が起こった
【2】2014年1月:テーパリング開始
【3】2014年10月:テーパリング完了=QE3(量的緩和第3弾)終了


 3回とも、NYダウの下落率よりも、日経平均の下落率の方が大きくなっています。日本株は外国人投資家から見て世界景気敏感株で、その外国人が世界株安の中で、日経平均先物を積極的に売ってきたことから、日経平均の下落率が大きくなっています。

 2022年1月の世界株安でも、同じことが起こっている可能性があります。メインシナリオで私は今年、米景気は減速するものの、巡航速度での成長(実質GDP:国内総生産で3%程度の成長)が続くと予想しています。そうならば、ショック一巡後、日経平均はもう一度、上値トライすると考えらます。

 一方、リスクシナリオもあります。米景気が失速するリスクです。GDPで1%台の成長に落ち込むことになれば、かなりの失速です。株式市場が、FRBが引き締め姿勢を強める中で、米景気が予想以上の失速となるリスクを意識し始めた可能性もあります。

短期的に下値トライのリスク高まる

 日本株が割安で、長期的に買い場との見方は変わりません。ただし、短期的には、私が想定していた以上の下値もあり得る状況となってきました。さらに下値があった時に、追加で投資する資金を残しつつ少しずつ時間分散しながら日本株に投資していくことが中長期の資産形成に寄与すると思います。

▼著者おすすめのバックナンバー

2022年1月20日:株主優待2月人気トップ「イオン」、今が買い場と判断。コロナ後に成長期待
2022年1月13日:利回り3.8%以上、高配当株の選び方:楽天証券「スーパースクリーナー」活用術
2022年1月5日:利回り4.6%:NISA口座で買える手作り「高配当株ファンド」