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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
【日本株】世界株安、日経平均下値トライ?イオン、買い場!2月の優待人気トップ コロナ後の成長期待

タカ派FRBへの警戒さらに強まる

 先週(1月17~21日)の日経平均株価は1週間で602円下がって2万7,522円となりました。パウエル議長率いるFRB(米連邦準備制度理事会)がタカ派色を強めていることを警戒し、米国株が下がった流れを受け、日経平均も売られました。

 先週は値がさグロース株だけでなく、景気敏感バリュー株も売られました。先々週(1月14日)までは値がさグロース株だけが売られ、景気敏感バリュー株は買われていました。ところが、先週は両方とも売られました。

 タカ派FRBへの警戒に加え、米景気が減速する懸念も出てきたことが影響しました。中国および米国の景気が失速する懸念も少し出ています。米国の12月の小売売上高が前月比1.9%減だったことを受け、米国のリベンジ消費の盛り上がりも一巡しつつあるとの見方が出ています。

 オミクロン感染拡大によって、米国の物流の混乱は続く見込みです。米景気が減速しても物流停滞による物不足が続き、米インフレは簡単に収まらない可能性があります。それを米国株式市場が嫌気している形となっています。

 日本株については、オミクロン感染拡大を受けて、日本で16都県にまん延防止等重点措置が発動されたことも、ネガティブ材料となりました。

NYダウと日経平均の推移:2020年末~2022年1月21日

出所:QUICKより作成

 NYダウ(ダウ工業株30種平均)よりも、下げが大きくなっているのが、GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック:メタ、アマゾン、マイクロソフト)など大型ハイテク株比率が高いナスダック総合指数です。

 米インフレへの懸念の高まり、米長期金利上昇のネガティブ影響を一番受けるのが、時価総額が大きいGAFAMなど大型ハイテク株なので、1月の下落局面ではNYダウよりもナスダックの下げの方が大きくなっています。

米ナスダック総合指数推移:2020年末~2022年1月21日

出所:QUICKより作成

テーパリング・ショックは想定より大きくなる可能性も

 今の世界株安について、昨年11月からFRBが始めているテーパリング【注】のネガティブ効果がじわじわ出てきていると見ることもできます。

【注】テーパリング
量的金融緩和を徐々に縮小していくことを、テーパリングと呼ぶ。昨年10月まで、米国の金融政策を司るFRBは、米国債などの金融資産を購入する量的緩和を行っていた。FRBが米国債などを購入し保有資産を増やすと、その対価として支払われるマネーの総量が増加するので、量的緩和効果が発揮される。
10月までFRBは、毎月米国債を800億ドル、MBS(住宅ローン担保証券)を400億ドル購入していたので、合わせて毎月1,200億ドルマネー総量を増やしていた。償還も勘案して保有額がそれだけ増加するように購入している。その購入額を、徐々に減らしていくことをテーパリングと呼ぶ。
金融緩和には2つの柱がある。1つは「金利引き下げ」、もう1つが、流通するマネーの総量を増やす「量的金融緩和」である。FRBは、政策金利をゼロに誘導する「ゼロ金利」を実施しているが、それだけでは金融緩和の効果は限られる。
さらに緩和効果を高めるために量的緩和を実施してきた。ところが、インフレ懸念が高まったことで、テーパリングを3月までで完了する予定としている。その後、利上げ、さらに量的な引き締めを検討することになる。

 参考までに、前回FRBがテーパリングを検討し、実際に実施した2013~2014年の日経平均の動きを振り返ります。

2013-2014年の日経平均・NYダウの動き比較:2012年末~2014年末

出所:QUICKより作成、2012年末の値を100として指数化

 ご覧いただくとわかる通り、テーパリングがらみで3回世界株安が起こっています。

【1】2013年5月:バーナンキ・ショック。当時FRB議長だったバーナンキ氏が「将来テーパリングが必要」と発言しただけで、世界株安が起こった
【2】2014年1月:テーパリング開始
【3】2014年10月:テーパリング完了=QE3(量的緩和第3弾)終了


 3回とも、NYダウの下落率よりも、日経平均の下落率の方が大きくなっています。日本株は外国人投資家から見て世界景気敏感株で、その外国人が世界株安の中で、日経平均先物を積極的に売ってきたことから、日経平均の下落率が大きくなっています。

 2022年1月の世界株安でも、同じことが起こっている可能性があります。メインシナリオで私は今年、米景気は減速するものの、巡航速度での成長(実質GDP:国内総生産で3%程度の成長)が続くと予想しています。そうならば、ショック一巡後、日経平均はもう一度、上値トライすると考えらます。

 一方、リスクシナリオもあります。米景気が失速するリスクです。GDPで1%台の成長に落ち込むことになれば、かなりの失速です。株式市場が、FRBが引き締め姿勢を強める中で、米景気が予想以上の失速となるリスクを意識し始めた可能性もあります。

短期的に下値トライのリスク高まる

 日本株が割安で、長期的に買い場との見方は変わりません。ただし、短期的には、私が想定していた以上の下値もあり得る状況となってきました。さらに下値があった時に、追加で投資する資金を残しつつ少しずつ時間分散しながら日本株に投資していくことが中長期の資産形成に寄与すると思います。

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