損切りをどこにおくか!?

 米著名投資家ポール・チューダー・ジョーンズの運用の特徴は<徹底したリスク管理>にある。彼は、「私は失うことを前提に考える。獲得することに夢中になるのではなく保護することを第一に考える。最も重要なルールは攻撃ではなく防御である。どのリスクポイントで自分は撤退するのかを把握しておかなければならない。私は1カ月あたりの損失率を絶対2ケタにしない」と、発言している。

 相場はトレンド期が少なく、保ち合い相場やランダム相場のなかでは平均回帰という現象が起こってストップロス注文をいれなくても相場が戻って助かってしまうことも多いので、ほとんどの市場参加者はストップロス注文を置かない。

 ストップロス注文を置かなくても助かってしまうということを繰り返していると、レバレッジのかかった取引では<3年から10年に1回の大きな下げ局面>で証拠金の多くを失うことになるだろう。

 現物取引の場合でもポジションが塩漬けになる。いずれにせよ、「何もできず見ているだけ」という塩漬けの状態になり、<投資効率>が死んでしまう。

 それでは損切りをどこにおくかという問題が発生する。これは投資家の懐具合やリスク許容度の問題と関わってくるが、証拠金がなくなってしまえば相場を続けることはできない。そのため、相場を続けていくための計画が必要となる。

 たとえば、100万円の資金で20万円まで損をしてもよいと思っている人は、取引1回あたりの損失を2万円として、相場観に関係なく1回の取引で2万円損したらやめてしまうのである。そうすると、10回連続損をしたところで20万円の損となる。

 逆に言えば、この人は10回連続損をするまでは相場を続けることができる。資産管理の問題は単純に言えばこういうことになる。あとは、相場の動的な変動幅(1日にいくら動くか・1カ月にいくら動くか等…)にあわせてレバレッジを調整し、資産管理を行っていくしかない。

 昨今の相場では、流動性リスクのある商品も運用難に苦しむ投資家の買いですぐに持ち直すことも多い。しかし、得られる金利に比べて、取っているリスクが大きすぎるという事実を忘れてはいけない。

 過剰流動性相場の危機のシグナルは、流動性のない商品が売られることである。日本の金融機関が買っているCLO(ローン担保証券)やジャンク債もトルコリラと同様の商品だ。

 個人投資家が株式取引やFX取引に広く参加できるような環境が整えられてきたことは、投資の「民主化」をもたらしたとも言えるだろう。

 しかし、その結果、巨額の財政金融緩和を背景に狂乱の投資ブームが引き起こされ、そのひずみが広がり世界の金融システムを危うくするリスクが高まっている。

 投資をする前に、以下の2つの質問の答えを知っておく必要がある。

(1) 自分の考えが正しければ、どのくらいの価格で売るか、利益を取るか?
(2) 間違っていたらどこで売るのか?

「希望」と「欲」は投資のプロセスではない。