ただ、往々にして、政策や人事はブラックボックスの中で決定されます。体制に近い、政策に影響力のある知識人や企業家が何らかの役割を果たすことはありますが、基本的に、党指導部の政策決定に、民間人や一般人が関与することはありません。

 メディアは原則党・政府の統制、管轄下にあり、政策を監視、批判する機能は持ち合わせていません。基本的に、党・政府の政策を代弁、擁護する宣伝機関と化しています。

 前述のように、政治の現場で共産党の政権運営を監視監督する「野党」も存在しません。デモ集会は厳しく制限、抑圧されているため、人民が直接、間接的に権力者に異を唱える場面もありません。

 そんな中、人々が自らの意見を発表できる唯一のプラットフォームが、インターネット上だと言われてきました。すでにユーザー数は10億を超えています。

 確かにそういう側面はあるでしょう。しかし、習近平政権下において、ネット上の議論や言論も、24時間体制で厳格に監視され、例えば、中国版ツイッターと言われる「ウェイボー(微博)」上で、当局が嫌がるつぶやきをしたユーザーには、公安派出所から直接電話がいく、突如訪問されるといった形で、すぐさまツイートを削除するように、さもなければアカウントを永久に凍結するといった措置が取られています。

 自らの「お上」として君臨する為政者を自らの意思で選べない。政策や世論の形成過程に関与する権利もない。自らの考えや要望を訴える空間もない。

 にもかかわらず、なぜ14億の中国人民は、そんな現状を甘んじて受け入れているのでしょうか? 

 中国人がそれほどお人好しだからでしょうか? 

 鈍感力に優れているからでしょうか? 

 あるいは、歴史上まれに見る忍耐力や愛国心を集団的に身につけているからでしょうか?