”絶対無二”の中国共産党と14億の中国人民

 6月25日、国務院新聞弁公室が『中国新型政党制度』と題した白書を出版しました。共産党が領導し、“民主派”政党が参政する政党制度(中国語で「共産党領導、多党合作制」)がいかに中国に根付き、発展に寄与してきたかを強調しています。

 同白書も認めているように、中国で8つある民主派政党は、日本や欧米を含めた民主主義国家で言うところの「野党」ではありません。現体制が続く限り、民主選挙を通じた政権交代も制度的にあり得ません。

 中国の政治体制において、民主派政党とは、共産党一党支配下において、共産党のイデオロギー、政策、戦略、方針などを擁護、支持することを大前提に、政策提言を行っていく組織に過ぎません。

 そして、習総書記に権力が一極集中し、共産党が絶対的領導を強調する現状において、体制内部においても、異なる意見や提言をする状況は考えられません。「右に倣(なら)え」の姿勢で、習近平総書記は偉大だ、共産党万歳を徹底するしかないのが昨今の空気感です。

 これまで、本連載でも中国経済、米中関係、アリババ社といった企業動向といったテーマから、中国の現在と今後を分析してきましたが、中国を理解する上での大前提、最重要事項が、本日、100歳を迎える中国共産党の動向と実態を綿密に追跡、分析することにほかなりません。

 共産党が何を根拠に「与党」の地位に君臨し、14億の人民、巨大な国土を統治してきたのか、していくのかを、100周年を機に整理してみることは、この強大経済がどこへ向かうのかを占う上で、有益な作業となるでしょう。

 中国共産党自身は、あらゆる公式な場面、談話、声明などで、中国が実践してきたのは「民主政治」だと断固主張してきました。

 しかし、実際のところ、習近平総書記をはじめとした最高意思決定機関である中央政治局の常務委員(計7人)や委員(計25人)、約3,000人から成る「国会議員」に当たる全国人民代表、そのトップにいる栗戦書(リー・ジャンシュー)全国人民代表大会常務委員会委員長兼政治局常務委員(序列3位)を含め、彼らは人民(有権者)によって直接的、あるいは間接的に選ばれたわけではありません。中国の官僚機構システムの中で、出身、経歴、派閥、業績などあらゆる指標を根拠に選抜されてきたのです。

 たとえば、永田町ではなく、霞が関の省庁において、あるいは大手企業において、激しい競争、人事をめぐる駆け引きやつぶし合いの中で、新入社員からトップまで駆け上がってきたイメージです。習近平、李克強(リー・カーチャン)両指導者とて例外ではありません。

 その意味で、一部チャイナウオッチャーが、そんな中国を「中華人民共和国株式会社」と称するのには、一定の比喩力と説得力があると私は思っています。