米国債のビッグショートでドル/円が久々の大相場に…

 米国債金利の上昇を受けて、「イケイケドンドン相場」となっているのがドル/円である。ドル/円は近年、最もトレンドの出にくい通貨の一つだが、直近の相場では美しいトレンド相場が展開されている。

ドル/円(60分足)

(赤↑=買いシグナル・黄↓=売りシグナル)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

ドル/円(4時間足)

(赤↑=買いシグナル・黄↓=売りシグナル)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

ドル/円(日足)

(赤↑=買いシグナル・黄↓=売りシグナル)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

 最近、ドル/円は行き過ぎではないかとの照会が多いが、ドルが本当に強いかどうかは4月以降の動きを見ていればわかる。年初のセミナーからご案内しているように3月いっぱいまでのドル高相場は、シーズナルからは既定路線である。

ドルインデックス先物のシーズナリーチャート(過去20年の平均)

(上昇=ドル高・下落=ドル安)
出所:エクイティクロック

 ノムラ・インターナショナルのジョーダン・ロチェスター氏らストラテジストは、「ドル相場は短期的にはそれほど下げないと予想されるが、米国債利回りが安定する過程で、今年4~6月(第2四半期)に下落する可能性がある」(3月11日 ブルームバーグ 「ドル安への反転「時間の問題」、米長期金利の安定に伴い-ノムラ」)と、指摘している。

 サクソ銀行の為替戦略責任者を務めるジョン・ハーディ氏は、「円安の速度は行き過ぎ、速過ぎとなり、必然的にどこかで壁にぶつかるだろう」との見方を示し、「資産市場がひどく落ち込み最終的に債券買いを引き起こした場合、全てのクロス円絡みの巻き戻しは劇的なものになるだろう」(3月5日 ブルームバーグ「どこまで行くドル・円相場、約3年ぶり高値か-限界近いとの見方も」)と語っている。

 大きく上げたドル/円、クロス円相場だが、長い目で見ると、株の下落(=金利低下)が大きな落とし穴になりそうだ。

豪ドル/円(日足)

(赤↑=買いシグナル・黄↓=売りシグナル)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

ポンド/円(日足)

(赤↑=買いシグナル・黄↓=売りシグナル)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

忍び寄るインフレの影

 長期停滞経済の中で、「インフレになどなるものか?」という観測が多い。しかし、ようやく米国の経済統計の中ではっきりと見られるようになってきた。直近では、ニューヨーク連銀のエンパイアステート調査の物価データ、労働統計局の経済全体の生産者物価データ、そしてマークイットPMI(購買担当者景気指数)の物価データが発表されているが、いずれも大きな上昇を記録し、市場の予想を大きく上回る結果となった。

マークイットPMIの物価データ

出所:ゼロヘッジ

コアとなる生産者価格(食品、エネルギー、貿易を除く価格)は前年比2%の上昇を記録

出所:ゼロヘッジ

エンパイアステートの製造業調査では、支払価格は10年ぶりの高値を記録し、受取物価は9年ぶりの高値を記録

出所:ゼロヘッジ

 今後はインフレ指標の推移に耳目が集まることになろう。インフレは、債券利回りの水準を通じて直接資産価格に影響を与え、売上や収益にもたらすボラティリティの増加を通じて間接的に影響を与える。資産のデュレーションが長ければ長いほど、インフレの結果として資産価格に与える影響は大きくなる。

「重要なのは真のリスクを理解し、きちんと管理することである。リスクが大きすぎるのであれば、ポジションを小さくせよ」 (ペリー・カウフマン)