米国市場のブラックスワン指数が上昇している背景は

 株式相場は堅調ですが、市場内部で「株価が下落するリスク」に備える動きもみられており、注意したいと思います。

 図表2は、米国株(S&P500指数)と日本株(TOPIX)の推移を上段に示し、オプション市場の「プットコールレシオ」と「ブラックスワン指数」を下段に示したものです。「プットコールレシオ」は市場で見積もられている予想変動率を示しているとされます。

 11月と12月は米国株が最高値を更新したことで、予想変動率が低下した状況がわかります。一方、ブラックスワン指数(SKEW Index)は、「株価が大幅に下落する確率÷株価が大幅に上昇する確率」を指数化したものとされます。

 ブラックスワン指数が上昇する局面は、オプション市場で「株価の大幅下落を警戒する投資家が増えている状況」を示します。投資家が「ブラックスワン(まさかの黒い白鳥)」が出現することを恐れると、ブラックスワン指数が上昇しやすいと言われます。本年は、2~3月のパンデミック危機、6月の感染第2波不安、大統領選挙直前などで上昇した経緯があります(図表2)。

<図表2>米国市場で急上昇するブラックスワン指数

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2020年1月1日~2020年12月16日)

 現在の株式市場は、ワクチン期待が支えるコロナ終息と経済の正常化を織り込む相場であるとの認識も必要です。FRBなど主要国中央銀行による大規模金融緩和、米国政治の「ねじれ観測」などが好材料として同居しています。

 新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化すると金融緩和の長期化観測が強まる「良いとこ取り相場」とも言われています。米国では感染拡大で州(都市)別に外出規制や店舗営業自粛が増加。ニューヨーク市長は15日、「今後数週間で、春に実施したようなシャットダウン(都市封鎖)に踏み切る必要がある」と述べました。

 日本でも菅政権が「Go Toキャンペーン」を全国一斉に停止すると表明しました。感染動向が変わらないと、内外でサービス業の景況感が陰りをみせるのは必至です。ただ、製造業のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)には回復傾向がみられます。中国経済が主導する世界経済と業績見通し改善を見極めることも重要です。