1:Cさん(39歳既婚男性・地方政府中堅幹部・大学卒・湖南省長沙在住)の場合

 Cさんは、中国建国の父・毛沢東を輩出した湖南省で生まれ育ち、同省最難関の湖南大学を卒業後、地元の有力党機関紙に就職し、現在は党の中堅幹部として、日本の大手企業における課長のような立場で現場を取り仕切っています。典型的な地元のエリートですね。ただ、彼が話す普通語(マンダリン)には湖南なまりが強く、友人ネットワークやふるまいなどからも、北京や上海といった大都市には縁がなく、あくまで地元に根を張って生きてきた経緯を感じさせます。

 Cさんの奥さんは大学の助教授、彼も言ってみれば地方公務員ですから、固定給は決して高くありません。夫婦は共働きですが、彼いわく、二人合わせて月給1万2,000元(約18万円)程度です。知識人である二人はともに安定志向。現在もうすぐ小学生になる子供が一人いますが、「二人目を作るか話し合ったが、お金もかかるし断念した」と漏らしていました。

 そんなCさんの資産運用ですが、株式も投資信託商品も買いません。もっぱら不動産投資です。公務員として日々あらゆる業務に忙しくしている彼には、株価の動きを日々チェックする余裕や時間はなく、それよりも長期的視野で収益が見込める分野が自らの身分や性格に適合すると言います。

 彼は現在、奥さんが勤める大学から近いマンションに家族3人で住んでいます。持ち家で、築5年、面積は120平方メートルです。5年前にジャスト100万元(約1,500万円)で購入したそうです。二人の年収の約7倍ですね。この物件を買う前に、彼は3つのアパートを所有していました。大学卒業後、結婚前、1軒目だけは両親に買ってもらって、残りの2軒は給料からねん出したり、銀行や友人から借金したりして買ったそうです。今回は、頭金の40万元(4件目の購入のため頭金が高めに設定されている)を出すために、最初に買った60平方メートルの物件を売却しました。12年前に12万元で購入していましたが、3倍の36万元で売れたそうです。

 頭金以外は銀行から借金をしましたが、Cさんは他に二つの物件を持ち、貸していて、家賃収入が月に約1万元あり、二人の月収と合わせて、生活費、養育費、銀行への借金返済を賄っています。Cさんによれば、公務員と大学教員という夫婦の組み合わせは社会的信用力が高く、銀行からお金を借りる手続きも容易に進行するようです。

 Cさん夫婦に転職や起業の願望はなく、現在の職種、職場で、湖南省の省都である長沙に根差してこれからも生きていく予定とのことです。現段階では5軒目購入の予定はないそうですが、「大きなお金が必要になれば、今住んでいる以外の2軒を売ればいい」と大きく構えています。この2軒の価格も、現段階で、購入当初からそれぞれ3倍、5倍に増えていると言います。資産運用としては十分に成功していると言えるでしょう。

「理財にかかるストレスも手間もない」と断言する彼は、日々の仕事と子供の世話以外に、週1回、地元の友人たちとのサッカーを楽しみながら、悠々自適な生活を送っています。