マネーのルール、まん中の10個

 ルール11は、個人版のアセットアロケーションの決め方で、運用技術として重要な内容だが、今の眼で見ると、簡便法を意識しながらも、個人にアセットアロケーションを「比率」で計算させようとするアプローチが少々難しい。

 正直に言うなら、運用機関で年金などのアセットアロケーションを作る際のやり方の影響を抜け出し切れていないので、個人向けの簡便法として中途半端なのだ。後年出した「超簡単お金の運用術」(朝日新書、2008年刊。全面改訂版は2013年)で採用したような、実額ベースでリスク資産への投資金額を決める方法に入れ替える方が親切だろう。

 そうすると、巻末の資産配分を分析・計算するエクセル・シートの解説も必要なくなるが、真面目なFP(ファイナンシャル・プランナー)や年金基金の担当者などのためにこの部分を残すかどうかが、考え所になる。

 ドルコスト平均法の過信への警告(ルール12)は、そのまま今でも有効だ。

 デフレ・インフレへの対応原則(ルール13)、パニック論への注意(ルール14)も、基本的には残すべきだが、日本の年金や財政の問題に関する説明を加えておくべきだろう。特に、年金の考え方については、一つか二つ、ルールを新設して解説すべきかも知れない。

 ルール16は、2000年の日経平均株価入れ替えの「惨事」を教訓として記録しておきたいと考えたもので、日経の文庫に入れられたことは、編集者の頑張りの賜(たまもの)だが、あれほどの事態は、さすがに今後起こらないだろうから、削除してもいいかもしれない。ただ、フローティング・ベースのTOPIX(東証株価指数)のウエイト変更がどの程度のインパクトになっているかを確認してみる必要があるだろう。

 外貨のリスクが基本的にゼロサムゲーム的な「投機のリスク」であること(ルール17)、不動産購入の判断は投資の観点から行うべきこと(ルール18)、生命保険は「損な賭け」なのでできるだけ小さく使うこと(ルール19)などは、筆者流のお金の管理術としては外せない内容なので、これらはこのまま残すべきだろう。また、当時は「アイドル・ファンド」を例に説明しているが、「怪しい投資話」のチェックポイントは、やはり説明する方がいい(ルール20)。