株主優待:アナリスト窪田の分析

人気トップ10の私の投資判断は、以下の通りです。

積極的に投資したいと考える銘柄:日本たばこ産業

 日本たばこ産業は、優待よりも、6.2%の高い配当利回りに魅力を感じます(11月27日時点)。優待について、1つ注意すべきことがあります。最近、優待内容に変更があったことです。

 これまでは、買ったばかり(1年未満)の株主にも、権利確定日に優待を得る権利が付与されましたが、これからは、1年未満の株主は優待が得られず、1年以上の株主だけが優待の対象となりました。また、これまでは、6月末と12月末の株主に優待を得る権利が付与されましたが、12月末だけになりました。同社は、自社製品(食品)などを贈る優待を行っています。

 ただし、配当利回りの高さと、良好な財務内容・収益力から、魅力的な投資対象と考えています。国内の喫煙者減少が不安材料ですが、値上げと海外M&Aにより高収益を維持しています。次世代タバコで米フィリップ・モリスに劣後していることも不安材料でしたが、新製品(プルームテックプラスなど)を出すことで巻き返していくと予想しています。

詳しくは、以下のレポートを参照してください。
8月29日:配当利回り6.9%、株主優待でも人気。JTの投資価値を再評価

優待を楽しみながら長期投資するのに適格と考える8社

すかいらーくHD、日本マクドナルドHD、本田技研工業、キリンHD、ヤマハ発動機、ポーラ・オルビスHD、アサヒグループHD、大塚HD

上位5社まで、以下の通り、コメントします。

【1】すかいらーくHD
 人口が増えない日本で外食産業は成長余地がないと思われがちですが、私は、的確な戦略をとれば成長が可能と考えています。共働きで育児・家事・介護を分担していく時代に入り、食のアウトソース需要は、着実に伸びると考えるからです。

 食のアウトソース需要拡大の恩恵を受けるのが、外食・イートイン(小売店舗での食事)・デリバリー(食べ物宅配)です。高級外食ではなく、品質の良い日常食を安価に提供する仕組みを構築する企業に、成長のチャンスがあると考えています。その候補の1つが、すかいらーくHDです。

 外食業界の生き残りで、優待を楽しみながら長期投資するのに適格と考えています。同社の株主優待は、魅力的です。100株保有する株主に、配当金を年間1,900円払い、株主優待「食事カード」を年間6,000円贈呈する予定です。合計で年間7,900円の経済価値が得られます。すかいらーくの優待食事カードは、カフェレストラン「ガスト」、中華レストラン「バーミヤン」のほか、「ジョナサン」「夢庵」「藍屋」「ステーキガスト」「グラッチェガーデンズ」「魚屋路」「とんから亭」など、幅広い店舗で利用できます。「500円単位」で、食事代金から割引されます。優待カードからお釣りは出ませんが、500円単位で使えるので、使いやすいといえます。

 ただし、株主優待内容は、突然変更されることもあります。優待魅力で買っている投資家が多い銘柄なので、贈呈される食事カードの金額が減らされると、株価が下がるリスクもあります。

 業績動向も見てみましょう。同社は、2016年12月期に営業最高益312億円を計上した後、3期連続減益で、今期(2019年12月期)の営業利益は、220億円まで減る見込みです。人件費の上昇や、店舗運営の合理化・省力化のためのシステム投資のコストが、減益要因です。同社は、優待内容を2017年12月期から3倍に増加させていますが、優待コストの増加も減益要因となっています。

 ただし、売上は堅調です。魅力ある業態やメニュー作りに成功しているため、毎期、売上高は1%くらい増加して過去最高を更新しています。私は、来期(2020年12月)以降、消費税の引き上げを乗り越え、業績は回復に向かうと予想しています。

【2】日本マクドナルドHD
  構造改革に成功して業績好調が続く日本マクドナルドは、来期(2020年12月期)にも営業最高益を更新する可能性があると考えています。詳しくは、以下のレポートを参照してください。

3月13日:日本マクドナルド、過去最高の営業利益が視野に。「未来型店舗」で何が変わる?

【3】本田技研工業ヤマハ発動機
 本田は配当利回り3.6%(11月27日時点)と、優待よりも配当の魅力の方が大きいと考えます。長期投資で買い場と考えています。ただ、今、自動車株に投資するのは、けっこうリスクが高いことを理解しておく必要があります。短期的には貿易戦争に巻き込まれるリスクが意識されます。長期的にはEV(電気自動車)化が進むことが既存のガソリン車メーカーにとって重大なリスクとなります。

  今、ガソリン車メーカーに投資するならば、トヨタ自動車(7203)本田技研工業(7267)などに絞ったほうが良いと考えています。

  ヤマハ発動機も長期投資に適格と考えていますが、業績の変動性が高く、株価が乱高下するリスクのあることに注意が必要です。

【4】キリンHD
 今期(2019年12月期)の営業利益(会社予想)は前期比▲51.6%の960億円と見た目が悪いが、オセアニアの飲料事業減損など一時的要因によるものです。今期業績の実態は悪くありません。会社が開示している連結事業利益(一時的損益を除く経常的な業績)で見ると、第3四半期まで(2019年1-9月期)は、前年同期比+0.8%増と堅調です。通期では前期比▲4.7%の1,900億円を見込んでいます。株主還元の充実のために、上限1,000億円の自社株買い枠を設定したことも評価できます。

 国内の酒類・飲料事業は成長が見込めなくなってきていますが、医薬品事業(協和キリン)やミャンマーでのビール事業には成長余地があります。今後は、医と食をつなぐ分野での成長を目指します。そのために、上場企業であるファンケルへ33%の出資を決めました。完全子会社とした協和発酵バイオと、資本提携したファンケルの力を使って、健康分野のビジネス拡大を目指します。

◆一時的に投資判断を保留:クラレ

  クラレは11月27日、今期の純利益が前期比▲93%の25億円に落ち込む見通しと発表しました(営業利益の見通しは変更なし)。2018年5月に米国子会社で発生した火災事故に関し160名超の外部委託業者の作業員等から損害賠償等を求める民事訴訟が提起されており、既に一部の原告を対象として140億円を特別損失として計上したことを発表していました。今回、さらに支払いが拡大する見通しとなり、新たに340億円の特別損失を追加で計上するものです。

 今回の損失は一時的で、「優待銘柄として長期投資する価値がある」という長期的な投資判断は変わらないとの印象を持っていますが、損失内容の精査をするまで、一時的に投資判断は保留します。