今日は、12月の人気優待トップ10についてコメントします。

12月に優待を得る権利が確定する銘柄の人気トップ10

 12月に株主優待を得る権利が確定する銘柄は、177あります。楽天証券のお客様で保有している株主の数が多いほど人気が高いと判断し、保有株主数の上位をピックアップしました。ただし、以下の銘柄は除外しました。

◆赤字・無配(配当金を出していない)銘柄
収益が不安定と判断して除外

◆時価総額4,000億円未満の銘柄
時価総額が小さい銘柄には財務や収益が不安定な銘柄が含まれることもあるので除外

◆楽天(4755)
楽天についてコメントすることはできないので除外

 以上の条件から抽出された人気トップ10は、以下の通りです。

12月優待・人気トップ10(時価総額4,000億円以上、赤字無配銘柄を除く)

人気
順位
コード 銘柄名 優待月 株価:円 配当利回り 優待内容
1 2914 日本たばこ産業 12月 2,472.0 6.2% 優待内容
2 3197 すかいらーくHD 6月・12月 2,186.0 0.9% 優待内容
3 2702 日本マクドナルドHD 6月・12月 5,480.0 0.5% 優待内容
4 7267 本田技研工業 3・6・12月 3,127.0 3.6% 優待内容
5 2503 キリンHD 12月 2,443.0 2.6% 優待内容
6 7272 ヤマハ発動機 6月・12月 2,305.0 3.9% 優待内容
7 4927 ポーラ・オルビスHD 12月 2,756.0 4.2% 優待内容
8 2502 アサヒグループHD 12月 5,201.0 1.9% 優待内容
9 4578 大塚HD 12月 4,774.0 2.1% 優待内容
10 3405 クラレ 6月・12月 1,331.0 3.2% 優待内容
単位:円
出所:楽天証券「株主優待検索」。配当利回りは今期の1株当たり年間配当金(会社予想)を11月27日の株価で割って算出。今期とは2019年12月期のこと。本田技研工業のみ2020年3月期のこと

 上の表の一番右側「優待内容」をクリックしていただくと、どのような優待を実施しているかご覧いただくことができます。
なお、優待狙いで投資する場合、以下2点に注意してください。

【1】優待を得るために必要な株数
12月の優待を得るために、何株保有しなければならないか、注意してください。人気1位―9位までは、すべて最小売買単位(100株)を保有するだけで、優待が得られます。ただし、人気10位のクラレのみ12月優待は、1,000株保有しないと得られません。

【2】優待を得るために必要な継続保有期間
優待の権利を得るために、どの位の期間、継続保有しなければならないかも注意してください。人気トップの日本たばこ産業以外はすべて買ってすぐでも権利が得られます。つまり、12月26日(木)までに買えば2019年12月末基準の優待は得られます。

 ただし、日本たばこ産業のみは、優待を得るためには1年以上の継続保有が必要です。今から日本たばこ産業を買っても、2019年12月末基準の優待は得られません。優待が得られるのは、2020年12月末基準からとなります。

なお、優待内容は、予告なく変更されることもありますので、常に最新の情報をチェックしてください。楽天証券HPでは、1カ月ごとに優待内容を更新しています。

「配当利回り」も重要

 優待投資を始めようと思っている方に、「優待内容の魅力」だけ見て、予想配当利回りを見ない方もいらっしゃいます。予想配当利回りも、必ず見るようにしましょう。配当利回りが高ければ、受け取った配当金で好きなものを買うことができるからです。

 優待品が魅力でも配当利回りが低い銘柄は、株主への利益配分が充実しているとはいえません。優待品と配当金の魅力を両方見て判断するのが、合理的です。

 上記の表を見ると、人気トップの日本たばこ産業(配当利回り6.2%:11月27日時点)は、配当利回りがとても高く、注目できます。人気第2位のすかいらーく、3位の日本マクドナルドは、優待内容がとても魅力的ですが、配当利回りはやや物足りないと感じます。

 人気トップ10には配当利回りが3%以上ある銘柄(本田・ヤマハ発・ポーラオルビス・クラレ)が多く、注目できます。ただし、配当利回りは確定利回りではなく、業績変動にともなって増えたり減ったりすることに、注意が必要です。

人気トップ10銘柄の業績をチェック

 優待銘柄を選ぶ時、「優待内容」「配当利回り」だけで決める方もいますが、株式投資である以上、最低限、足元の業績はチェックしましょう。まず、人気トップ10の前期から今期にかけての連結営業利益の推移を見てください。

  前期・今期とは、2018年12月期・2019年12月期のことですが、本田技研工業のみ、2019年3月期・2020年3月期のことです。

12月優待人気トップ10の連結営業利益:前期実績と今期会社予想

出所:各社決算短信より作成、営業利益率は今期営業利益(会社予想)を今期売上高(会社予想)で割って算出

 業績を見るとき、1つ注意すべきことがあります。「増益銘柄が良く、減益銘柄が悪い」と考えないでください。企業業績は、長い年月のうちに、増益になったり減益になったりします。減益の時に株価が安く、増益の時に株価が高くなることもあります。それならば、減益のとき、株価が割安な時に買うことは悪いことではありません。

  それでは、何のために業績を見るのでしょうか?「構造不況銘柄」「財務内容に不安がある銘柄」を避けるためです。構造不況銘柄は、赤字だったり無配(配当金を出していない)だったり、営業利益率が低かったり(利益率1%以下など)します。

 ただし、今回リストアップした人気トップ10には、私の目で見て、構造不況銘柄は含まれていません。

 業績動向に加え、注目していただきたいのが、営業利益率です。利益率の高い企業には、収益基盤が堅固な銘柄が多く、長期投資する上で重要です。ここでも、日本たばこ産業の利益率(23.3%)の高さが光っています。

  日本マクドナルド(営業利益率9.8%)、ポーラ・オルビスHD(同13.6%)、アサヒグループHD(同9.7%)、大塚HD(同12.4%)、クラレ(同9.9%)も収益基盤がしっかりしていて、投資魅力は高いと思います

株主優待:アナリスト窪田の分析

人気トップ10の私の投資判断は、以下の通りです。

積極的に投資したいと考える銘柄:日本たばこ産業

 日本たばこ産業は、優待よりも、6.2%の高い配当利回りに魅力を感じます(11月27日時点)。優待について、1つ注意すべきことがあります。最近、優待内容に変更があったことです。

 これまでは、買ったばかり(1年未満)の株主にも、権利確定日に優待を得る権利が付与されましたが、これからは、1年未満の株主は優待が得られず、1年以上の株主だけが優待の対象となりました。また、これまでは、6月末と12月末の株主に優待を得る権利が付与されましたが、12月末だけになりました。同社は、自社製品(食品)などを贈る優待を行っています。

 ただし、配当利回りの高さと、良好な財務内容・収益力から、魅力的な投資対象と考えています。国内の喫煙者減少が不安材料ですが、値上げと海外M&Aにより高収益を維持しています。次世代タバコで米フィリップ・モリスに劣後していることも不安材料でしたが、新製品(プルームテックプラスなど)を出すことで巻き返していくと予想しています。

詳しくは、以下のレポートを参照してください。
8月29日:配当利回り6.9%、株主優待でも人気。JTの投資価値を再評価

優待を楽しみながら長期投資するのに適格と考える8社

すかいらーくHD、日本マクドナルドHD、本田技研工業、キリンHD、ヤマハ発動機、ポーラ・オルビスHD、アサヒグループHD、大塚HD

上位5社まで、以下の通り、コメントします。

【1】すかいらーくHD
 人口が増えない日本で外食産業は成長余地がないと思われがちですが、私は、的確な戦略をとれば成長が可能と考えています。共働きで育児・家事・介護を分担していく時代に入り、食のアウトソース需要は、着実に伸びると考えるからです。

 食のアウトソース需要拡大の恩恵を受けるのが、外食・イートイン(小売店舗での食事)・デリバリー(食べ物宅配)です。高級外食ではなく、品質の良い日常食を安価に提供する仕組みを構築する企業に、成長のチャンスがあると考えています。その候補の1つが、すかいらーくHDです。

 外食業界の生き残りで、優待を楽しみながら長期投資するのに適格と考えています。同社の株主優待は、魅力的です。100株保有する株主に、配当金を年間1,900円払い、株主優待「食事カード」を年間6,000円贈呈する予定です。合計で年間7,900円の経済価値が得られます。すかいらーくの優待食事カードは、カフェレストラン「ガスト」、中華レストラン「バーミヤン」のほか、「ジョナサン」「夢庵」「藍屋」「ステーキガスト」「グラッチェガーデンズ」「魚屋路」「とんから亭」など、幅広い店舗で利用できます。「500円単位」で、食事代金から割引されます。優待カードからお釣りは出ませんが、500円単位で使えるので、使いやすいといえます。

 ただし、株主優待内容は、突然変更されることもあります。優待魅力で買っている投資家が多い銘柄なので、贈呈される食事カードの金額が減らされると、株価が下がるリスクもあります。

 業績動向も見てみましょう。同社は、2016年12月期に営業最高益312億円を計上した後、3期連続減益で、今期(2019年12月期)の営業利益は、220億円まで減る見込みです。人件費の上昇や、店舗運営の合理化・省力化のためのシステム投資のコストが、減益要因です。同社は、優待内容を2017年12月期から3倍に増加させていますが、優待コストの増加も減益要因となっています。

 ただし、売上は堅調です。魅力ある業態やメニュー作りに成功しているため、毎期、売上高は1%くらい増加して過去最高を更新しています。私は、来期(2020年12月)以降、消費税の引き上げを乗り越え、業績は回復に向かうと予想しています。

【2】日本マクドナルドHD
  構造改革に成功して業績好調が続く日本マクドナルドは、来期(2020年12月期)にも営業最高益を更新する可能性があると考えています。詳しくは、以下のレポートを参照してください。

3月13日:日本マクドナルド、過去最高の営業利益が視野に。「未来型店舗」で何が変わる?

【3】本田技研工業ヤマハ発動機
 本田は配当利回り3.6%(11月27日時点)と、優待よりも配当の魅力の方が大きいと考えます。長期投資で買い場と考えています。ただ、今、自動車株に投資するのは、けっこうリスクが高いことを理解しておく必要があります。短期的には貿易戦争に巻き込まれるリスクが意識されます。長期的にはEV(電気自動車)化が進むことが既存のガソリン車メーカーにとって重大なリスクとなります。

  今、ガソリン車メーカーに投資するならば、トヨタ自動車(7203)本田技研工業(7267)などに絞ったほうが良いと考えています。

  ヤマハ発動機も長期投資に適格と考えていますが、業績の変動性が高く、株価が乱高下するリスクのあることに注意が必要です。

【4】キリンHD
 今期(2019年12月期)の営業利益(会社予想)は前期比▲51.6%の960億円と見た目が悪いが、オセアニアの飲料事業減損など一時的要因によるものです。今期業績の実態は悪くありません。会社が開示している連結事業利益(一時的損益を除く経常的な業績)で見ると、第3四半期まで(2019年1-9月期)は、前年同期比+0.8%増と堅調です。通期では前期比▲4.7%の1,900億円を見込んでいます。株主還元の充実のために、上限1,000億円の自社株買い枠を設定したことも評価できます。

 国内の酒類・飲料事業は成長が見込めなくなってきていますが、医薬品事業(協和キリン)やミャンマーでのビール事業には成長余地があります。今後は、医と食をつなぐ分野での成長を目指します。そのために、上場企業であるファンケルへ33%の出資を決めました。完全子会社とした協和発酵バイオと、資本提携したファンケルの力を使って、健康分野のビジネス拡大を目指します。

◆一時的に投資判断を保留:クラレ

  クラレは11月27日、今期の純利益が前期比▲93%の25億円に落ち込む見通しと発表しました(営業利益の見通しは変更なし)。2018年5月に米国子会社で発生した火災事故に関し160名超の外部委託業者の作業員等から損害賠償等を求める民事訴訟が提起されており、既に一部の原告を対象として140億円を特別損失として計上したことを発表していました。今回、さらに支払いが拡大する見通しとなり、新たに340億円の特別損失を追加で計上するものです。

 今回の損失は一時的で、「優待銘柄として長期投資する価値がある」という長期的な投資判断は変わらないとの印象を持っていますが、損失内容の精査をするまで、一時的に投資判断は保留します。