今期の企業業績見通しは小幅増益

 米中ハイテク戦争がエスカレートして世界景気が悪化する懸念があるため、日経平均株価の上値が重くなっています。それでも、企業業績の先行きに、日本企業はさほど悲観的になっていないという感触を得ています。

  3月期決算主要841社の純利益(前期比増減率)についてまとめた以下の表をご覧ください。

東証1部3月期決算主要841社の連結純利益(前期比):2016年3月期~2019年3月期(実績)、2020年3月期(予想)

出所:楽天証券経済研究所が作成。2020年3月期について、純利益の会社予想を発表していない野村HD、オリックス、信越化学、ソフトバンクG、リクルートHD、日本製鉄、JFE・東京電力HDなど15社は市場予想を、三菱UFJ FGは会社目標を使った。市場予想は、5月20日時点の日経QUICKコンセンサス予想

 世界景気減速、特に、中国景気悪化の影響を受けて、前期(2019年3月期)は、▲6.2%の減益となりました。ところが、始まったばかりの今期(2020年3月期)について、会社が発表している純利益予想(15社は市場予想)を集計したら、+2.4%の増益でした。

 期初には、慎重な見通しを出す傾向の強い日本企業ですから、小幅の減益予想になると見ていました。景気減速に加えて、今期は消費増税という悪材料も待っているからです。
それが増益予想で出ているのは、前向きに評価できると思います。決算説明会では、今上期(2019年4~9月)は減益が続くものの、下期(2019年10~2020年3月)に回復を見込んでいる会社が多いことがわかりました。

 米中ハイテク戦争は重大なリスクですが、それがエスカレートしなければ、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット化)、5G(第5世代移動体通信)などの拡大によって、業績は回復に向かうとの感触を持っていることがわかります。

 楽天証券経済研究所では、世界景気は2019年に悪化し、2020年に回復すると予想しています。その前提で、今期の純利益は+4.9%の増益になると予想しています。

 念のため補足しますが、日本経済新聞社の5月18日の朝刊には、3月期決算企業の今期純利益予想は「前期比2.8%減」と報道されていました。これは、金融を除く全産業ベースで集計したものです。金融まで含めた集計では、小幅の増益予想となります。

 楽天証券経済研究所では、金融まで含めた全産業ベースの主要841社について、集計しています。