現在の株価堅調(バブル延命)の背景は?

日・欧の金融政策の限界が指摘されるなか、株式市場は表向き堅調な動きを続けている。中央銀行バブルと言われる現在の相場は、追加緩和という流動性をどこかの中央銀行が供給しないと相場の急落が起きかねないが、現在の株価堅調(バブル延命)の背景には、「緩和拡大の日銀と欧州中銀にEU離脱問題を抱える英中銀が加わったことが影響している」と、運用者は口を揃える。

ただ、英中銀が日・欧のようななんでもありの量的緩和再開に動くとみている運用者は少ない。日・欧の量的緩和拡大やマイナス金利政策の限界が露呈しているなか、中央銀行バブルを1~2年延命させるには米国の量的緩和再開(QE4)しかないが、その米国は次の金融危機に利下げで対応したいことから、利上げを模索しているのが現在の状況だ。

ジャクソンホールから9月いっぱいの相場は波乱含み

中央銀行が値付けをしている現在の中央銀行バブル相場では、中央銀行の政策が長くマーケットテーマとして横たわっている。こうしたなか、今週、8月26日(金)に予定されているジャクソンホール(米北西部のワイオミング州)でのイエレンFRB議長の講演に注目が集まっている。ファンドもそれまでの間は様子見だ。海外メディアの報道では、米連銀はジャクソンホールでの討論会で、米日欧の中央銀行の追加緩和余力の低下について議論するという。

米国がQEを止めた今、日・欧の追加緩和がバブルを支えているが、日本がマイナス金利やQEを縮小するのではないかという観測が出ている。日本がQEを縮小すると米国市場も危険が増加する。欧州もドイツの反対でこれ以上の追加緩和が難しくなっている。出口を模索する米国としては利上げを急ぎたいはずだ。

9月利上げはなく12月の利上げは半々というのが市場のコンセンサスである。しかし、ここにきてダドリーNY連銀総裁、ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁、スタンレーフィッシャーFRB副議長が利上げの観測気球を上げている。イエレンに近いウイリアムズやダドリーが観測気球を上げたことで、玉虫色の発言しかしないとタカをくくっていたファンド勢も、イエレン議長によるジャクソンホール講演(タカ派的だったハーバード大学での講演の再来も・・)に警戒しだしたようだ。あのイエレンだからバブルを延命させる内容になるはずだという楽観報道から、目先はまだ「いいとこ取り相場」が続きそうだ。しかし、9月相場には注意が必要だろう。

最近、ポジショントークにせよ、米国の著名投資家が相次いで相場の下落を予測するようになっている。「この環境下では債券や株式への投資は好ましくない。土地や金のような資産が好まれる」(債券の帝王ビル・グロス)、「全てを売れ。良さそうなことは何もない。投資家は何も間違っていないと催眠にかかっているようだ」(新債券の帝王ジェフリー・ガンドラック)と、かなり悲観的な見通しが多い。

最近、元FRB議長のグリーンスパンが金利上昇の警告を発し始めた。現在のバブル相場はすべてのバブルを異常低金利が支えているが、「Greenspan `Nervous' Bond Prices Too High as Treasuries Sell Off」というブルームバーグの報道では、「現在は、スタグフレーションの極めて初期の状態にあることは間違いない。デフレからスタグフレーションへの劇的な転換が起こる可能性が高い。日本もいずれデフレからスタグフレーションに転換しそうだ」と述べている。グリーンスパンは、「量的緩和は金融崩壊によってしか終わることができない」と言い、ここ数年のうちに金融崩壊がおこると考えているようだ。

グリーンスパンの警鐘と連動するように、ドイツ銀行の空売りで110億円を稼いだと言われるG・ソロスは、ゴールド関連への投資や米国の株価指数に連動するETFのプット(売る権利)の買いに動いていると報道されている。市場参加者の多くが手の届かない情報に接することができ、金融当局のインサイダー情報に精通しているG・ソロスのポジションや警告は傾聴に値するとファンド勢は警戒を強めている。

今日は日銀のETF買いが出るのか?

日本株の市場は開店休業状態だ。夏枯れ相場と市場の自律的な価格形成を歪めるPKO依存の副作用で、海外勢も日本株の上値を買わなくなってしまったので、16500円±300円くらいのレンジでいつもうろうろしている。市場参加者の焦点は、「今日は日銀のETF買いが出るのか?」という一点だけになってしまっている。

日経平均(日足) 相場はエンベロープのど真ん中、日本株の市場は開店休業状態
上段:1日の真の値幅=TR(赤)・14日ATR(青)
下段:25日エンベロープ±5%(赤)・±10%(青)

(出所:石原順)

日経平均の週足は14週修正平均ADXと26週標準偏差ボラティリティがずっと低下傾向を続けている。これは市場が膠着しボラティリティが低下していることを示唆しているが、ここまでボラティリティが低下してくると、そろそろ次のトレンドの発生に注意が必要だろう。相場に強いトレンドが発生する兆候は、標準偏差ボラティリティとADXの2本のラインが低い位置から一緒に上昇する場面である。

日経平均(週足)
上段:14週修正平均ADX(赤)・26週標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21週ボリンジャーバンド2シグマ(赤)・3シグマ(緑)

(出所:石原順)

当り屋ラリー・ウィリアムズの株式市場予測

著作権の関係で詳細は延べられないが、米国株に強気で、米国株の予想では非常に精度の高い予測を発信しているラリー・ウィリアムズも、「日本株も米国株も9月はサイクル分析から下げ相場になる可能性が高い」と指摘しており、9月相場には注意が必要であろう。

「ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析」(ラリーTV)8月22日
日経平均(日足)
*著作権のため画像の一部を隠しています

(出所:「ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析」(ラリーTV)8月22日)

「ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析」(ラリーTV)8月22日
日経平均(日足)
*著作権のため画像の一部を隠しています

(出所:「ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析」(ラリーTV)8月22日)

「ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析」(ラリーTV)8月22日
日経平均(日足)
*著作権のため画像の一部を隠しています

(出所:「ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析」(ラリーTV)8月22日)

「ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析」(ラリーTV)8月22日
S&P500(日足)
*著作権のため画像の一部を隠しています

(出所:「ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析」(ラリーTV)8月22日)

「ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析」(ラリーTV)8月22日
NYダウ(日足)と2016年のフォーキャスト
*著作権のため画像の一部を隠しています

(出所:「ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析」(ラリーTV)8月22日)

相場が200日指数平滑移動平均線を超えない限りドル/円相場は戻り売り戦略が有効か?

米国がドル安政策を打ち出している2016年のドル/円相場では、相場が200日EMA(指数平滑移動平均線)を超えない限り、ドル/円の戻り売り戦略が有効だと考えている。ドル/円のストキャスティクス5.3.3のフィルター付きシグナルで、7月21日にドル売り(円買い)シグナルが点灯した。その日以来、筆者はドル/円を売りっぱなしにしている。現在は短期的な売られ過ぎで小戻し相場となっているが、相場のトレンドは変わっていない。現在のストップロス(強制利食いポイント)は、102円30銭である。

ドル/円(日足) ストキャスティクス5.3.3のフィルター付き売買シグナル
上段:200日EMA(緑)・52日ボリンジャーバンド±2シグマ(赤)
下段:ストキャスティクス5.3.3

(出所:石原順)

このレポートで取り上げた売買手法の詳細はDVD『相場で道をひらく7つの戦略-短期売買実践編』(石原順)で取り上げております。興味のある方はご参照ください。

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日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。