市場のコンセンサスでしか利上げに動かないイエレンFRB議長
イエレン議長の3月29日の講演は非常にハト派色の強いものとなった。セントルイス連銀のブラード総裁の「4月のFOMCで利上げを検討すべきだ」といった発言をはじめとして、複数の米地区連銀総裁が相次いで4月、6月といった早い時期の利上げの可能性に言及していたが、それらは3月のFOMCで年間の利上げ見通しを4回から2回に変更したことのバランスを取るためのものと市場では受け取られたようだ。
イエレンの講演内容は以下のとおりである。
- 利上げへの慎重姿勢は特に正当化される。
- 金融市場の混乱などは中期見通しを大きく変えてはいない。
- ただ、世界的な動きは見通しに関するリスクを増加させた。
- 今年に入ってからの経済指標はまだら模様。
- 金融市場はやや安定しているが海外経済は想定より弱い。
- FOMCは引き続き緩やかな経済成長を予想。
- 2月のコアPCE指数上昇は12月の想定をやや上回った。
- ただ、速いペースの物価上昇が続くかの判断は時期尚早。
- 物価見通しは不透明感が増している。
- 中国の構造改革が円滑に進むか不透明感がある。
- 原油の一段安などで米経済が鈍る可能性。
- 金利をゼロ付近にすることも含め対応可能。
- 金利がゼロ付近でも追加緩和の手段はある。
イエレンの講演では、時期尚早、慎重に進める、不透明感という文言が目立ち、運用者からは、「イエレンは何も変わっていない。やはり‘ビハインド・ザ・カーブ(利上げ後ずれ)路線’だ。イエレンは市場のコンセンサスでしか動かない。市場参加者の誰もが利上げをすべきだと思うまで利上げは行われないだろう」声が多く聞かれる。
ドルや原油を買い進めていた投資家からは失望の声が漏れたが、米株式市場は素直にイエレン講演を好感したようだ。一方で、複数の地区連銀総裁発言によってドル買いに動いていた短期筋ははしごを外された格好となり、イエレン発言以降はドル安相場が進展している。
ダブルラインキャピタルのジェフリー・ガンドラックも指摘しているが、「誤解を恐れずに言えば、FRBは株価を見ながら利上げを進めていくだろう。S&P500が昨年の高値を更新すれば利上げするだろうし、高値を更新するまでは玉虫色の発言を繰りかえすだろう」と思っている運用者は多い。
S&P500先物(日足) 14日修正平均ADXのみのトレンド相場継続、標準偏差ボラティリティのトレンドの強度はじり高相場には弱い・・
上段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)
NY原油先物(日足) 調整相場
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)
ゴールド先物(日足) 調整相場
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)
ユーロ/ドル(日足) トレンド相場、ただし、ADXも標準偏差ボラティリティも高い位置からの上昇であり、保合離れやブレイクアウトといった感触の相場ではない・・
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)
豪ドル/ドル(日足) ADXでトレンド発生
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)
世界的な株価の上昇を受けても、日経平均は円高に足を引っ張られ、上値の重い相場となっている。著名投資家ラリー・ウィリアムズや筆者の周辺のファンドは、3月から4月の上旬にかけてはリバウンドの円安が到来するとみていたが、円安トレンドは腰折れとなり、ドル/円は現在調整局面になっている。ラリーは<損切り>を交えながらも、現時点でその見通しは変えてはいないという。
日経225先物(日足) 調整相場 下値は切り上げており、下がらない相場だが上がりもしない・・
上段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)
エンベロープと修正平均ADXで相場の転換点を探る
オセアニア通貨を除くと、現在のドル/円相場やクロス円相場は26日標準偏差ボラティリティや14日ADXがピークアウト(天井をつけ下落)しており、トレンド期とはやや逆方向にバイアスがかかった「レンジ内での乱高下相場」となりやすい局面だ。この乱高下相場で儲けるのは苦労する。感情に任せて売買していると、<買ってやられ・売ってやられ>という散々な目にあいやすい。基本は<次のトレンド待ち>の相場である。
さて、筆者が現在なにをしているかというと、日足も1時間足の売買も<逆張り>である。その理由は、26日標準偏差ボラティリティや14日ADXに強いトレンド(方向性)が見当たらないからである。
以下は、ドル/円、ユーロ/円、カナダドル/円、豪ドル/円の3種類のチャートである。
- 日足のトレンドの確認チャート(トレンドフォロー売買に利用)
- 日足用の13日エンベロープ・3日修正平均ADXチャート(短期転換点売買に利用)
- 1時間足用の13時間エンベロープチャート・3時間修正平均ADXチャート(短期転換点売買に利用)
現在のように方向性がはっきりしない時に行っているのが1時間足での売買で、1時間足に13時間エンベロープ±0.3%・±0.6%と<3時間修正平均ADX>をプロットしたチャートを見ながら取引を行っている。
通貨の相場では<3時間修正平均ADX>が70以上や30以下になった時が相場転換の領域となりやすい。相場の転換ポイントは、矢印のポイントである。<3時間修正平均ADX>がピークに達した次のローソク足の方向についていくだけの単純な手法である。
相場に絶対の法則など存在しないので、この売買手法は筆者の独断と偏見の売買手法であることを断っておきたい。ADXのシグナルで相場が反転しなければ、直ちに損切りをするし、また明確な利食いのポイントがあるわけではなく、利益が出れば直ちに、あるいは相場を見ながら適当に手仕舞うというトレードを行っている。いずれにせよ、筆者は超短期売買では、13時間エンベロープと<3時間修正平均ADX>を使って売買している。
ドル/円(日足) ① 日足のトレンドの確認チャート(トレンドフォロー売買に利用)トレンドの判定:調整相場
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)
ドル/円(日足) ②日足用エンベロープ
上段:13日エンベロープ±1%(青)・±2%(赤)
下段:3日修正平均ADX(青)
ドル/円(1時間足) ③1時間足用エンベロープ
上段:13時間エンベロープ±0.3%(青)・±0.6%(赤)
下段:3時間修正平均ADX(青)
ユーロ/円(日足) ① 日足のトレンドの確認チャート(トレンドフォロー売買に利用)トレンドの判定:調整相場
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)
ユーロ/円(日足) 日足用エンベロープ
上段:13日エンベロープ±1%(青)・±2%(赤)
下段:3日修正平均ADX(青)
ユーロ/円(1時間足) 1時間足用エンベロープ
上段:13時間エンベロープ±0.3%(青)・±0.6%(赤)
下段:3時間修正平均ADX(青)
カナダドル/円(日足) ①日足のトレンドの確認チャート(トレンドフォロー売買に利用)トレンドの判定:調整相場・ADXにトレンドの兆し
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)
カナダドル/円(日足) ②日足用エンベロープ
上段:13日エンベロープ±2%(青)・±3%(赤)
下段:3日修正平均ADX(青)
カナダドル/円(1時間足) ③1時間足用エンベロープ
上段:13時間エンベロープ±0.3%(青)・±0.6%(赤)
下段:3時間修正平均ADX(青)
豪ドル/円(日足) ①日足のトレンドの確認チャート(トレンドフォロー売買に利用)トレンドの判定:調整相場・・ADXにトレンドの兆し
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)
豪ドル/円(日足) ②日足用エンベロープ
上段:13日エンベロープ±2%(青)・±3%(赤)
下段:3日修正平均ADX(青)
豪ドル/円(1時間足) ③1時間足用エンベロープ
上段:13時間エンベロープ±0.3%(青)・±0.6%(赤)
下段:3時間修正平均ADX(青)
相場に絶対の法則はない。最も重要なのは資産管理である。ラリー・ウィリアムズが言うように、「有能なトレーダーにとって重要なのはチャートにおける支持・抵抗水準ではなく、その日の高値や安値でもない。受け入れる苦痛の程度なのである。自分がどれだけの苦痛を受け入れるか前もって決めておくことが大切!学び、習い、考え、備え、そして、行動せよ」(ラリー・ウィリアムズ)ということだ。
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日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。