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「相場の悪材料を知るには?」
石原 順
外為市場アウトルック
リーマンショックの影響による景気回復に向けた歳出の増大が、世界中で財政赤字の拡大を招いた。政治家は財政再建をしなければならず、その結果、景気対策は中央銀行に押し付けられることにな…

「相場の悪材料を知るには?」

2015/11/19
株高・円安のリスクの流れが続く中、「マーケットは今一つ盛り上がっていない」というボヤキが毎日のようにブローカーから聞こえてくる。
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2015年の相場は8月・9月の下げ相場がすべて

株高・円安のリスクの流れが続く中、「マーケットは今一つ盛り上がっていない」というボヤキが毎日のようにブローカーから聞こえてくる。2015年のヘッジファンドの運用成績は一部のグローバルマクロファンドを除くと惨憺たるものだが、この傾向はもう4年ほど続いている。中央銀行が市場に直接介入してからの相場はトレンドが発生しにくくなっているからだ。

ファンドの間で話題となっているのは、世界最大の政府系(SWF)ファンドであるノルウェーの政府年金基金グローバル」の第3四半期の運用成績がここ4年間で最悪の成績となったことである。10月28日のブルームバーグの報道では、「ノルウェー政府は財政赤字補てんのため、ファンドから初めて一部資金を引き揚げる準備を進めている。同ファンドが28日発表した7-9月期の運用成績はマイナス4.9%。2,730億クローネ(約3兆8,630億円)を失い、運用資産は8,600億ドル(約103兆円)となった。株式投資がマイナス8.6%と落ち込んだが、債券はプラス0.9%だった。保有不動産は3%値上がりした。リターンがマイナスとなったのは2四半期連続で、これは6年ぶり」だという。

同報道によると、「中国の景気減速懸念や米利上げ観測で世界の株式の時価総額は数兆ドル減少するなど、7-9月期の市場は混乱した。MSCI世界指数は9%下げ、MSCI新興市場指数は19%下落。商品安で売りが膨らんだ。ノルウェーファンドの中国株投資リターンはマイナス21.3%、新興市場株はマイナス16.6%と落ち込んだ」とされているが、結局、今年の運用成績は8月・9月の下げを回避できたか否かにあるようだ。

MSCI 新興国株(1996 ~ 2015年)

(出所:The Gloom, Boom & Doom Report ファーバーレポート9月号)

相場のクラッシュに巻き込まれないためには、どうしたらよいのだろうか?

世界の株式市場から5兆ドルを上回る時価総額が失われた8月相場のような相場のクラッシュに巻き込まれないためには、どうしたらよいのだろうか?幸いにも筆者の周辺のファンドや運用者は今年の8月~9月の下げを回避できたが、回避できた半分は直観と運が良かったからである。しかし、もう半分はロジックに基づいている。

株が下がりやすい月というのは「5月」・「9月」・「10月」である。そこが逆張りの買い場となるが、半年程度保有する場合、「5月の買い」は9月・10月の下げ相場に巻き込まれてしまう。したがって、運用成績の落ち込み(ドローダウン)を避けて投資するには「10月末買いの4月末の売り」が消去法で残ることになる。株式相場やクロス円相場は急落時にボラティリティ(変動率)が上昇しやすく、上昇および横這い相場ではボラティリティ(変動率)は低下していく。株式投資と豪ドル/円投資に関してあまり好ましくない現象は、ボラティリティの上昇である。筆者の周辺の運用者は「5月」・「9月」・「10月」といった月の手前で相場から降りてしまうので、今年の「血まみれの8月相場」には巻き込まれていないのである。

日経平均(日足)と8月・9月の急落

(出所:石原順)

NYダウ(日足)と8月・9月の急落

(出所:石原順)

豪ドル/円(日足)と8月・9月の急落

(出所:石原順)

相場の悪材料を知るには?

未来の危機を知るには、「Dr. Gloom(陰鬱博士)」と呼ばれるマーク・ファーバーのレポート「The Gloom, Boom & Doom Report」や「ドクターDoom(悲観論の帝王)と呼ばれるノリエル・ルービニNY大学教授のコメントが役に立つ。

仮にマーク・ファーバーやノリエル・ルービニのような人物が日本にいても、万年強気が常識となっている日本のTVや媒体からは声がかからない。しかし、米国はその辺の許容度が高いのか、マーク・ファーバーやノリエル・ルービニはTVでも人気がある。

筆者は彼らの意見を鵜呑みにしているわけではない。しかし、市場の底流に流れている次の危機をいち早く知ることができる。市場は正義が実現される場ではないが、マーク・ファーバーのレポートは常に<本質>を突いている。

今回、日本でのマーク・ファーバーのレポート「The Gloom, Boom & Doom Report」の代理店となっている出版社の了解を得られたので、以下にレポートの資料を一部掲載しておく。

政先進諸国の米ドル建てGDP 成長率(2011 ~ 15年)

主要先進国のドル建てGDPは1-3月期に前年比6%減となり、4-7月期に前年比7%減となった。このドル購買力の実質的な減少によって、アジアをはじめとする新興国からの輸出が落ち込んでいる。取引のほとんどがドル建てだからだ。中国はすでに苦境に陥っているが、ドラギと黒田の政策は、アジア全体での輸出の衰退を引き起こした。

(出所:The Gloom, Boom & Doom Report ファーバーレポート 2015年9月号)

ゴールドマン・サックス金融状況指数

ゴールドマン・サックスも米国の金融環境がすでに縮小に入っている証拠をつかんでいるという。同社が作成したFCI(金融状況指数)は、市場金利(そして金利スプレッド)と株式・通貨市場の動向を組み合わせたものであり、金融状況の一面を反映している。その指数が示しているのは、金融状況の急速な縮小だ。

(出所:The Gloom, Boom & Doom Report ファーバーレポート 2015年9月号)

米国株の合計時価総額の対名目GDP 比(1924 ~ 2015 年)(1985 年からはNYSE とNASDAQ) バフェット指数は過熱領域に向かっている。

(出所:The Gloom, Boom & Doom Report ファーバーレポート 2015年9月号)

ファーバーは「ECBと日銀の緩和によってドルデフレとなり、先進国のドル建てGDP成長率が減少し新興国の輸出は落ちる」と指摘している。QEによってグローバル規模でマーケットは縮小し企業収益も落ちていく。これが今起きていることだ。「金融緩和の結果としての信用拡大が設備投資などに向かわず、消費や株式などの投資に向かってしまうと、将来の反動が大きくなる」だろう。

「マクロ流動性と市場の非流動性との組み合わせはひとつの時限爆弾である。これまで、乱高下するフラッシュ・クラッシュや債券利回りと株価の急な変化に止まっている。だが、時間が経つにつれて、中央銀行が短期変動率を抑制しようとする流動性創出が長引けば長引くほど、中央銀行は株式、債券そしてその他資産市場の価格バブルを煽ってしまう。より多くの投資家が、過大評価された、債券のような一段と非流動的な資産を積み上げるにつれて、長期的なクラッシュのリスクが増加する。これは金融危機への政策対応の皮肉な結果である。マクロ流動性はブームとバブルを煽っている。だが、市場の非流動性が、究極的には暴落と崩壊の引き金を引くだろう」と、ノリエル・ルービニNY大学教授も同じことを言っている。

グルーム・ブーム・ドゥーム(GBD)とは、停滞、上景気、破滅を意味している。ホラティウスの『詩論』の言葉どおり、「失意のどん底にある者はやがてよみがえり、得意の絶頂にある者はやがて没落する」がマーク・ファーバーの投資哲学である。

投機筋に嫌気されているのは原油や商品価格の下落

現在、フランスでの同時多発テロより投機筋に嫌気されているのは、原油や商品価格の下落である。資源商社グレンコアは銅や亜鉛の取引で5割前後の世界シェアを握る巨大資源企業だが、昨年後半から原油や銅といった資源価格が下落局面に陥ったことで業績が悪化している。現在、有利子負債が300億ドル(3兆7,000億円)にも膨らんでおり、グレンコアが破たんとなれば、その影響は大きなものとなる。テロよりも原油下落による金融不安やジャンク債(ハイイールド債)市場の混乱を嫌気する声の方が多い。

原油先物(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

HYGハイイールド社債ETF iShares iBoxx $ High Yield Corporate Bond ETF(日足)

(出所:石原順)

銅先物(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

グレンコア(日足)とMACDのシグナル

(出所:石原順)

ジャパントレード(株高・円安)の賞味期限

今週発表された日本の7~9月期GDP速報値は前期比年率-0.8%と市場予想を下回っただけでなく、2四半期連続のマイナス成長となった。<いいとこ取り>の株式市場では、2四半期連続のマイナスとリセッションとなったことから、むしろ日銀の追加緩和観測や補正の増額などにつながると、不景気の株高を期待しているようだ。

だが、現在のドル高・株高相場は11月・12月決算前のファンドの強引な仕掛け商いによるものだ。今年も年末までのラリーに賭けているのである。先週の繰り返しになるが、この先、相場が大きく上げるようなら、12月16日のFOMCまでに一度利食いを入れたほうがよいのかもしれない。「10月から12月まで上げて1月に下げる」というパターンが2年連続で続いているからである。

ドル/円(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

ユーロ/ドル(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

豪ドル/円(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

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日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。

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