10月末買いは好調なスタート!年内の戦略は「2度あることは3度ある」が正解か?

「10月末買い・(翌年)4月末売り」のアノマリーに基づいた10月末買いは、好調なスタートを切った。実際に10月末の終値と比較してみると、日経平均株価で 614円の上昇(19,083円「10/30終値」→19697円「11/12前場終値」)、NYダウは39ドルの値上がり(17,663ドル「10/30終値」→17702ドル「11/11終値」)、ドル円は120円60銭「10/30終値」から122円90銭「11/12 13時現在」と、2円30銭の円安となっている。

米利上げ観測を織り込みながら年内はドル高・株高となる可能性が大きいが、ドル高・株高は12月16日のFOMCで利上げがあればいったん材料出尽くしとなる可能性もある。1990年以降は「1月高」のアノマリーがワークしなくなり、特に近年の相場は「10月から12月まで上げて1月に下げる」というパターンが多い。このパターンを投機筋は警戒している。

NYダウの月別値動き
1990年以降は「1月高」のアノマリーがワークしなくなった

(出所:日経ヴェリタス 前田昌孝編集委員作成)

NYダウ(日足) 10月~12月までの上昇(緑色のゾーン)と1月の下落(黄色のゾーン)

(出所:石原順)

日経平均(日足) 10月~12月までの上昇(緑色のゾーン)と1月の下落(黄色のゾーン)

(出所:石原順)

ドル/円(日足) 10月~12月までの上昇(緑色のゾーン)と1月の下落(黄色のゾーン)

(出所:石原順)

「12月米利上げなら株式・債券市場に脅威」というジェフリー・ガンドラックの警鐘

先週のレポートで、「当り屋」と呼ばれるジェフリー・ガンドラックの旗艦ファンドが運用資産500億ドル(約5兆9500億円)を超え、アクティブ運用の株式ファンドや債券ファンドの中で最速の成長となっていることを伝えたが、ガンドラックは「FOMCは利上げを開始すべきでない」と警鐘を鳴らしている。

11月6日のブルームバーグの報道では、「米経済の脆弱性を示す兆候が増しつつあり、利上げへの支持も限定的であるため、FOMCは利上げすべきではない」と指摘した。 「ダブルライン・キャピタルの共同創業者で、同種のファンドの94%を上回る運用成績をダブルライン・トータル・リターン・ボンド・ファンドで今年記録しているガンドラック氏は5日、米カリフォルニア州ニューポートビーチで開かれた投資家会議で、12月に利上げがあるかどうかはコインを投げるのと同じだと述べ、金融政策をコイン投げで決めるべきではない」(11月6日 ブルームバーグ)と語り、「ジャナス・キャピタル・グループのビル・グロース氏やブラックロックのマネジング・ディレクター、リック・リーダー氏ら他の債券運用者が早期利上げを求めているものの、ガンドラック氏は低金利による景気刺激が依然として必要だとして2015年中の利上げ開始には批判的姿勢を取っている」(11月6日 ブルームバーグ)という。

「FOMCが12月に利上げすれば米株式・債券市場を脅かし、経済を弱める水準にドル相場を押し上げる恐れがあると指摘した。 ガンドラック氏は9日に投資家との電話会議で、米国の金融引き締めが経済に役立つとは信じ難いと述べ、ボラティリティが上昇し、景気は弱くなると思う。9日にS&P500種株価指数が1%下落したことについてガンドラック氏は、利上げの影響に関する投資家の懸念の表れだと述べ、利上げの脅威が当面は株式市場に悪影響を及ぼす」(11月11日 ブルームバーグ)と語っている。

ドル高・株高の賞味期限は12月16日FOMCまでか!?

FRBは米国だけ金融政策を正常化(健全化)しようと、利上げや保有債券の縮小を画策しているが、利上げするかどうかでなく、逆にマイナス金利やQE4を開始するかどうかを検討しなければならない状態である。格付け機関のS&Pが今年9月までに米国企業297社も格下げしているが、これはリーマンショック以来の多さである。2015年の米国株式市場では144兆円もの自社株買いが出た。しかし、米国株はそれほど上がらなかった。この状態で米国が利上げすると、いずれ社債市場の金利が上がり自社株買いも減って、来年にかけて世界景気は減速しかねない。

ここで、注意しなければならないのは、「S&P500 のPSR (株価売上倍率) が記録的水準にある一方で、実際の収益は低下している。そこで企業収益について考えてみよう。用心すべき理由がそこにある。まず米国の国民所得に占める労働分配率だ。現在これは記録的に低い水準にある。労働分配率は2000年以降、低下の一途であった。これは企業が収益力を増強するため、社員を一時解雇(レイオフ)し、代わりに安価な従業員(派遣社員など)を雇ったからだ。しかし現在、賃金の伸びが加速しており、やがていくらか改善しそうである。そして、企業収益にとって同じくらい重要なのが、金利の低下だ。フェデラルファンド(FF)金利が実質的に低下(赤色の線が上昇)するたびに、企業収益の対GDP比が急速に拡大(青色の点線が上昇)しているのだ。つまり、労働分配率がもはや低下しない(上昇しそうだ)、そして金利がもはや低下しない(いくらか上昇する)とすれば、企業収益にとっての強力な追い風が止むことになる」(ファーバー・レポート2015年7月号)というマーク・ファーバーの指摘であろう。

政策金利低下に伴う企業収益の拡大
利上げがあれば、企業収益にとっての強力な追い風が止むことになる

(出所:ファーバー・レポート 7月号 )

最初に述べたように、「10月から12月まで上げて1月に下げる」というパターンが2年連続で続いている。「二度あることは三度ある」というが、この先、相場が大きく上げるようなら、12月16日のFOMCまでに一度利食いを入れたほうがよいのかもしれない。

円相場13時間エンベロープの美しき循環

筆者は円高トレンドの発生により8月21日から休止していたドル/円のエンベロープ売買を、9月後半から再開しているが、最近の円相場の<13時間エンベロープ>は、美しき循環相場となっている。筆者の周辺では、13時間のマイナス0.3%およびマイナス0.6%エンベロープを短期売買の買いポイントとして使っている運用者が多い。

今年の相場ではドル/円の1時間足でのトレードを頻繁に行っているが、円相場は<1時間足>でみると、その変動は概ね13時間移動平均線の±0.6%乖離の範疇で動くといわれている。

0.6%まで動くのはトレンドが発生した場合で、低変動率相場、すなわち、ノーマル相場の動く範囲は、概ね13時間移動平均線の±0.6%乖離(赤のバンド)の半分である13時間移動平均線の±0.3%乖離(緑のバンド)の範囲に収まっている。

筆者は、<日足>で円売りトレンド相場になっている場合や方向性のない相場では、<1時間足>を使い13時間エンベロープで押し目買いを継続するが、<日足>で円買いトレンドが発生した場合は13時間エンベロープでの押し目買いはただちに休止する。トレンド(方向性)の有無を判定する指標は、<日足>の26日標準偏差ボラティリティである。

現在、<日足>で円高トレンドの発生していない通貨(1時間足)のエンベロープ売買では、マイナス0.3%やマイナス0.6%の水準はすべて押し目買いに動いている。

「値頃感からは買いたくない、しかし売るのもこわい」というのが現在の外為・株式市場の投資家心理であるが、これでは動きようがない。何もしないのも相場だが、それでは収益が得られない。このような問題を解決するには、ストップロス注文を置いて、とりあえず相場に乗ってみるしかないのである。

ドル/円(日足) 円安トレンド相場
上段:13日エンベロープ ±1%バンド(黄)・±2%バンド(緑)
下段:26日標準偏差ボラティリティ

(出所:楽天FX マーケットスピードFX)

ドル/円(1時間足)
上段:13時間エンベロープ ±0.3%バンド(黄)・±0.6%バンド(緑)
下段:26時間標準偏差ボラティリティ

(出所:楽天FX マーケットスピードFX)

カナダドル/円(日足) 調整(方向性のない)相場
上段:13日エンベロープ ±1%バンド(黄)・±2%バンド(緑)
下段:26日標準偏差ボラティリティ

(出所:楽天FX マーケットスピードFX)

カナダドル/円(1時間足)
上段:13時間エンベロープ ±0.3%バンド(黄)・±0.6%バンド(緑)
下段:26時間標準偏差ボラティリティ

(出所:楽天FX マーケットスピードFX)

豪ドル/円(日足) 調整(方向性のない)相場
上段:13日エンベロープ ±1%バンド(黄)・±2%バンド(緑)
下段:26日標準偏差ボラティリティ

(出所:楽天FX マーケットスピードFX)

豪ドル/円(1時間足)
上段:13時間エンベロープ ±0.3%バンド(黄)・±0.6%バンド(緑)
下段:26時間標準偏差ボラティリティ

(出所:楽天FX マーケットスピードFX)

エンベロープを使った通貨の売買については、DVD『相場で道をひらく7つの戦略 標準偏差ボラティリティトレード』で、説明しています。興味のある方は、ぜひご購入ください。

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日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。