逆張りの買いシグナルが点灯しない

9月1日、債券の帝王と呼ばれるジャナス・キャピタル・グループのビル・グロスは、「マーケットは資本主義のために必要なレベルをはるかに超えてカジノのようになっている。1時間後に価格が1、2、3%...も変動するような時に、誰が売り買いするものか?」 とツイートした。

債券の帝王ビル・グロスのツイート

(出所:ジャナスキャピタル ツイッター)

筆者の経験から言えば、ボラティリティ(相場変動率)レベルが高い局面は、リスク/リターン比が合わないことが多い。今の相場は下げもきついが、リバウンドもそれなりの大きさになる。中途半端に売買していると、ジェットコースター相場に巻き込まれて翻弄されてしまう。日経平均が1000円下げても500円くらいは簡単に戻る空中戦相場なのだ。売っても買ってもリターンを得るのに大きなリスクをとる必要があるということである。

8月の強烈な下げで、NYダウも日経平均もすでにエンベロープやストキャスティクスの逆張り水準を下抜けたりしている。しかし、相場の潮目が変わり<本格的な売りトレンド>が発生しているため、筆者の見ているストキャスティクスの売買シグナルも「買いシグナル」が点灯しない状況となっている。

NYダウ(日足) 大幅に下落したが、ストキャスティクスの「買いシグナル」が点灯しない状況
上段:18日エンベロープ±3%(赤)・±1%(青)
下段:ストキャスティクス5.3.3

(出所:石原順)

日経平均(日足) 大幅に下落したが、ストキャスティクスの「買いシグナル」が点灯しない状況
上段:25日エンベロープ±5%(赤)・±10%(青)
下段:ストキャスティクス5.3.3

(出所:石原順)

ドル/円(日足)
上段:13日エンベロープ ±1%(青)・±2%(赤)・±3%(緑)・26日標準偏差ボラティリティ(紫)
下段:ストキャスティクス5.3.3

(出所:石原順)

相場で一番大切なのは<防御>

筆者の相場と関わってから30年近い時間が経過した。当時のファンドマネージャーや運用者の多くが、相場の世界から去っていった。それは、現在のようなボラティリティ・レベルの高い局面や、テール・リスクが到来する確率の高い局面で過剰なポジションを取り、マーケットから追い出されてしまったからである。

30年近く相場をやってわかったことは、相場で一番大切なのは<防御>で、具体的にはストップロス注文を置くという単純なことだった。加えて言うと、危ない局面は<休むも相場>で、様子見に徹するということである。

上海総合指数(日足) 売りシグナル点灯中 9月3~6日は「抗日戦争勝利記念日」絡みで休場に・・。8月25日に利下げ(0.25%)と預金準備率の引き下げ(0.5%)を同時に行ったが、市場は反応薄・・
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(緑)

(出所:石原順)

日経平均(日足) 売りシグナル点灯中
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(緑)

(出所:石原順)

ドル/円(日足) ドル売りシグナル点灯中
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

8月20日の時点で14だった日経平均のボラティリティは、9月1日には39まで跳ね上がっている。この尋常でない高さのボラティリティ・レベルの相場環境では、別途、<分散>の効いたポートフォリオを持っているか、資産管理上のストップを徹底しない限り、「売ってやられ・買ってやられ」という結果になりかねない。大きな損失を避けたいのであれば、ボラティリティが落ち着くのを待つべきだろう。

ARIMA (自己回帰和分移動平均)モデルを使った日経平均の売買シグナルとボラティリティ・レベル
8月20日の時点で14だったボラティリティが9月1日には39まで跳ね上がっている
≪ARIMAモデルによって<効率的市場仮説>の検証を行うと、市場には非効率部分(=トレンド)が存在することが証明されている。ARIMAモデルを応用したトレードシステムは、これまで長期にわたって優秀なパフォーマンスをあげているが、日本ではほとんど知られていない≫

(出所:石原順)

毎年、買い場は9月~10月に到来する?

危機が起こっても起こらなくても、結局、株は毎年の循環(10月末買い・4月売り)で動いている。現在の下げは、それに株の天井7年サイクルが影響を与えているのだろう。この点は留意しなければならないが、おそらく、例年通り9月~10月の秋相場で買い場が到来するだろう。それまでは、デフェンシブに資産管理を徹底して相場に臨みたい。

NYダウ(月足)10月末買い・4月末売り

(出所:石原順)

日経平均(月足)10月末買い・4月末売り

(出所:石原順)

NYダウ(月足)と米国の景気後退期(水色)
元米財務長官のローレンス・サマーズは、「1997年、1998年、2007年、そして2008年のように、私たちは非常に深刻な状況の始まりにいる可能性がある」と8月25日にツイート。ジム・ロジャースは「米国の歴史を振り返ると、経済の減速が4年または7年おきに起きている。株式市場に問題が起きてから既に6、7年経つから、そろそろ問題が起きる頃だ」と述べている

(出所:石原順)

相場で一番重要なことはゲームに生き残ること

「驚きが発生した時に、株式や特に債券の再評価は急激で劇的になりうる。同じ混雑した取引に捕まった全てのひとは、我れ先へと出口へと向かう必要がでる。これまでと反対方向への群れる行動が発生する。だが、多くの投資は流動性に欠けるファンドへの投資であったり、乱高下を円滑にしてきた伝統的なマーケット・メーカーはどこにも見当たらなくなる。したがって、売り手は投げ売りをせざるを得なくなる。このマクロ流動性と市場の非流動性との組み合わせはひとつの時限爆弾である」と、ニューヨーク大学のヌリエル・ルービニ教授が指摘する<市場の非流動性リスク>相場が現在到来している。

相場は生き残りを賭けたゲームである。相場で一番重要なことは、ゲームに生き残ることだ。時間はわれわれの味方である。王道に沿った運用を続けていれば、相場で成功することは可能であろう。しかし、それも、資産管理を徹底して相場をそこまで続けていることが大前提となる。

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日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。