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MITコンセンサスでバブルとドル高は当分続くのか?
石原 順
外為市場アウトルック
リーマンショックの影響による景気回復に向けた歳出の増大が、世界中で財政赤字の拡大を招いた。政治家は財政再建をしなければならず、その結果、景気対策は中央銀行に押し付けられることにな…

MITコンセンサスでバブルとドル高は当分続くのか?

2014/9/25
「MIT 人脈とバブル必要論を理解しないと、これからの相場には対応できないよ」と、ある運用者が言っていた。MITファミリーツリーと呼ばれる以下の人脈を考えれば、ポストQE相場はバブルの延命であることが推測できる。
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MIT 人脈とバブル必要論

「MIT 人脈とバブル必要論を理解しないと、これからの相場には対応できないよ」と、ある運用者が言っていた。MITファミリーツリーと呼ばれる以下の人脈を考えれば、ポストQE相場はバブルの延命であることが推測できる。

  • スタンレー・フィッシャーFRB副議長(MITではモディリアーニの同僚で親友・バーナンキの指導教官でドラキも教え子。1994-2001年のIMF筆頭副専務理事時代は、アジア、中南米など新興国の通貨危機に対処。学者出身の中銀総裁のドン)
  • マリオ・ドラギECB議長(モディリアーニの愛弟子)
  • ジャネット・イエレンFRB議長(夫のノーベル賞学者アカロフもMIT出身)
  • ベン・バーナンキ前FRB議長(MIT時代の指導教官はスタンレー・フィッシャー)
  • マーヴィン・キング前BOE議長(バーナンキ、ドラギと欧州危機に対処)
  • ルーカス・パパデモス元ECB副議長(ギリシャ危機時のギリシャ首相)
  • ローレンス・サマーズ(フィッシャーの教え子。1994年にフィッシャーをIMFの筆頭副専務理事に推薦)

上記の人たちに共通するのは、MITコンセンサスと呼ばれるハト派(バブル容認)のスタンスである。MITコンセンサスの理論的根拠となっているのが、ローレンス・サマーズの「長期停滞論」で、スタンレー・フィッシャーが8月11日の講演で、ローレンス・サマーズと同じ「長期停滞論」の立場を明らかにしたことが、現在のバブル相場の起点になっている。

MIT学派は理論を完璧にすることよりも、現実の問題を解決することに重点を置いており、そのトップに君臨するスタンレー・フィッシャーFRB副議長は、イエレンFRB議長、ドラギECB総裁などを実質的に指導している学者出身の中銀総裁のドンである。

先進国経済は日本化(ジャパナイゼーション)している可能性がある。人口減少や技術革新の頻度の低下等により貯蓄過剰となっており、低インフレ局面が長期化している。したがって、現在のFRBはゼロ金利政策の解除を焦る必要がないばかりでなく、ローレンス・サマーズは「バブルがないと経済はマイナスの自然利子率に陥ってしまう」と述べている。

こうした長期停滞の考え方はMITコンセンサスと呼ばれ、現在の中央銀行の政策のメインストリームを形成している。PIMCOが言っている「ニュー・ニュートラル」やバーナンキ前FRB議長の「私が生きている間はFF金利が4%以上に引き上げられることはない」という発言は、長期停滞論を根拠としている。

ゼロヘッジのコラムを見ていたら、ドイツ銀行のアナリストが、「The Bubble Must Go On To Sustain The "Current Global Financial System(現在の金融システムを維持するためにはバブルが欠かせない)」と述べていたが、こうした認識は海外ファンドの一部では常識化している。

米国はFRBの信認維持とアリバイ作りのために来年央には利上げを行うだろうが(そのため米2年国債金利は上がっているが・・)、米国の長期金利の上がり方が緩慢なのは、債券マーケットの関係者が「低インフレ局面は長期化する」と思っているからである。

米10年国債金利(日足) 米長期金利の上がり方は緩慢・・

(出所:石原順)

ユーロ安が止まらない

先週のレポートにも書いたように、現在のドル高は、米国が出口に向かう中で日米欧の通貨当局が円安・ユーロ安・ドル高を容認していることで起こっている現象なのである。世界的な長期停滞が指摘されるなか、米国のQE終了で景気(株式市場)の落ち込みを避けるためには、新たな資金供給先が必要となる。日本の異次元緩和も多くを望めない(打つ手がない)状況で、登場したのがマリオ・ドラギである。

ドラギECB総裁は、昨日、仏ラジオ局ヨーロッパ1とのインタビューで、「金融政策は長期にわたり緩和的であり続ける。理事会は、2%をやや下回る水準にインフレ率を回復させるため、すべての手段を活用するという決意において一致している」(24日 ロイター)と述べたが、MITコンセンサスの中で、バーナンキFRB・キングBOEに続いてドラギECBがQEへ舵をきるのは自然な流れだろう。

ユーロ/ドル(日足) 「欧州中銀はユーロを大量発行して債券を買い支えるQEをやるべき」というドラギの意を汲んだユーロ安相場。バーナンキFRB・キングBOEに続いてドラギECBもQEへ

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

ユーロ/ドル(週足) ドル買いトレンド相場継続中

上段:14週ADX(赤)・26週標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21週ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

QEをやめる米国が恐れているのは、ドル安・米国債安(米国債金利上昇)

QEをやめる米国が恐れているのは、ドル安・米国債安(米国債金利上昇)である。米国債安となれば米国債の評価が落ちて損が出る。膨大なポートフォリオを抱えるFRBはドル安・米国債安になれば出口政策が頓挫してしまう。したがって、出口を模索する米国が穏やかなドル高を模索するのは当然と言えよう。「インフレになるから利上げを急げ」というタカ派の意見に苦慮するイエレンにとって、緩やかなペースであれば通貨高は都合がいい。また、ドル高期待が高まれば、米国への資本流入が強まり、米国株や米国債のサポートにもなる。したがって、このような整合的ドル高は意外に長く続く可能性がある。

ドルインデックス先物(週足)と米国の金融政策

QEをやめる米国が恐れているのは、ドル安・米国債安(米国債金利上昇)

(出所:石原順)

ドルインデックス先物(月足) 120カ月(10年)移動平均線を上抜き、保合離れか?

(出所:石原順)

黒田日銀総裁が円安容認を繰り返す理由

黒田日銀総裁が円安容認を繰り返す表向きの理由は、「物価目標2%を達成するため」と報道されているが、そんな報道を真に受けているファンド運用者はほとんどいない。CPIの2%目標は言い訳(大義名分)に使っているだけだろう。

そもそも、不景気のなか物価だけが上がっても何の意味もない。家計の貯蓄率がマイナスに落ち込んでいるなか、日本の景気は良くなりそうもない。そうなると、残る手段は株価を上げて景況感をよくするしかない。株価が上がれば、賃金上昇が進まなかったとしても、資産効果で個人消費が拡大する。

9月23日の日経新聞の「日銀の株保有7兆円に買い増しで株価支える 年内に日生超えも」という報道によると、「上場投資信託(ETF)を含めて、日銀が保有する株式の時価は約7兆円にのぼる。今後も月に1000億円程度を買い増す方針で、年内にも民間で最大の日本生命保険(約7兆円)を上回る可能性が出てきた。日生を抜けば、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF、21兆円強)に次ぐ大株主となる」という。

安倍政権は12 月に消費税増税を最終判断する。日本国内だけの事情を考えれば、このことが、今の日本株高・円安の全てだろう。

日経平均(週足) GPIFと日銀が相場の主役という異常な相場だが・・

(出所:石原順)

日銀が発表している円の実質実効レートをみると円は歴史的安値水準にある。それでも黒田日銀総裁が円安を容認しているのは、日本株高・円安を演出し、消費増税10%を達成するためである。

円の実質実効レート(赤)とドル/円の月中平均(青)の推移 1980年1月~2014年8月 円の実質実効レートは数字が小さいほど円安

(実効為替レートは、特定の2通貨間の為替レートをみているだけでは捉えられない、相対的な通貨の実力を測るための総合的な指標。様々な通貨と円為替レートを貿易取引額で加重平均した為替レートが実効為替レートで、それをインフレ率で調整したものが実質実効為替レートである)

(出所:石原順)

海外ファンドの間では「8月に続き今月も日本株やドル/円相場にPKOが入っている」との観測が多く、消費税10%決定のための株価・円安誘導相場に積極果敢に参戦しているという。海外勢はでも当局のPKOが入っているのだから、それに素直に乗っていくのだという。そもそも相場のトレンドとは、売られすぎ・買われすぎの先に発生する現象である。

ドル/円の日足相場は依然21日ボリンジャーバンド+1シグマの上での推移となっており、筆者は8月18日から8月20日に買ったコア・ポジションを持ち続けている。21日ボリンジャーバンド+1シグマは9月25日現在、108円54銭となっており、この水準をNYクローズで下回ると手仕舞いとなる。ドル/円の週足相場は21週ボリンジャーバンド+2シグマの上での強い推移となっているが、週足の21週ボリンジャーバンド+1シグマは9月25日現在、105円54銭となっている。

ドル/円(日足) ドル買いトレンド相場継続中

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)・
55日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

ドル/円(週足) ドル買いトレンド相場継続中

上段:14週ADX(赤)・26週標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21週ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

一部の通貨ファンドからは、「今後、上げ下げはあるだろうが、ドル/円は110円、112円という節を抜いて来れば、60カ月移動平均線+30%乖離水準の115円あたりまで上昇してもおかしくない」との声も飛び出している。

「バブル相場が9月中は続く」ということを申し上げてきたが、10月相場は要注意だ。その辺の事情は次回のレポートで説明したい。

ドル/円(月足)60カ月移動平均線乖離(緑)・20%乖離(青)・30%乖離(紫)

(出所:石原順)

『私は頭がおかしいと思われるかもしれませんし、実際、間違ったことを言っているのかもしれません。しかし、金融危機が収まって4年も経過したのに、成長が復活して雇用が戻るという兆候が見られない以上、金融政策をこれまでよりも控えめにしろとか、以前よりも貸し出しも借り入れも減少させ、資産価格を低めに保つことが目的の政策を行えとかいう、現在の数々の政策提言につき、懸念せざるを得ません』(ローレンス・サマーズ 2013年11月 IMFでのスピーチ)

日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。

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