明けましておめでとうございます。今年も「なんとなく」から資産運用をステップアップするための情報発信をしていきますのでよろしくお願いいたします。

さて、今回のテーマは「教育資金と老後資金の準備をどう並行していくか」です。
子どもの成長に従い、教育資金準備が大きな難問になるのですが、同時に老後資金準備を考えていくことが必要です。なんとなく両方やりくりできるほど、簡単ではないのです。

教育資金は巨額のコストと認識する必要がある

子どもの成長は親にとって嬉しいものです。ちょっと前まで自分で歩くこともできなかったような子が、今では自分の頭でものを考え、自分の夢に向かって一歩を踏み出そうとしている時期に、教育をもってこれを支援していきたいと思うのは親として当然の感情です。

しかし、教育資金は巨額のコストであることを私たちは認識する必要があります。特に重要なのは高校と大学の7年間です。この間にかかる学費は合計で1,000万円を超えるという調査があります。入学金は高校が約50万円、大学が約100万円、年間の学費等費用は高校が年間約100万円、大学が約150万円となります。
子どもがふたりいれば、この費用は当然2倍になります。3歳差の子が高校と大学に同年度に進学すれば、単純計算でも高校に150万円、大学に250万円がかかるという計算です!

高等教育については、全額をその年度の年収から用意することは困難でしょうから(特に入学年度は厳しい)、教育資金の計画的準備は重要なマネープラン上の課題です。

教育ローンは老後準備に暗雲。事前準備が重要

教育資金準備が不足しているとき、すぐ頭に浮かぶのは「教育ローン」でしょう。進学の時期になれば銀行の店頭にもポスターが貼られますし、この時期にはテレビCMでも教育ローンのPRがされます。しかし、この教育ローン、老後資金準備の観点からするととても危険な商品です。

一見すると教育ローンは金利や返済の据え置きが認められたり、金利が低いこともあり、条件のよい借り入れのように見えます。しかし、教育ローンの返済時期を遅らせると、50歳代の後半、あるいは60歳代に返済時期が食い込むようなこともあり、老後資金準備を頓挫させるリスク要因になってしまいます。
もし、退職金を取り崩して完済するようなことになれば、別枠で用意してきた老後資金も取り崩すということになり、老後にかなりの不安が生まれます。

教育資金準備は、事前準備と当年度のやりくりでまかなうのが原則であるべきです。銀行には教育ローンを顧客に販売したということは、顧客との生涯取引の観点から考えれば敗北である、と考えてほしいくらいです。若いうちにライフプランをサポートし、積立貯蓄等を提案しておけば、金利のかかる教育ローンを利用しなくても顧客は進学の夢を実現できるはずだからです。

子に学費を注ぎ込むと経済的に返ってくる時代は終わった

親の心として「自分の老後より子の進学が優先」と考えてしまうのは当然のことです。
ただし、「子どもをしっかり育てれば、自分にいつか返ってくる」と思ってはいけません。少なくとも、そのような時代はもう終わっています。

団塊世代の親は、多少の無理をしても子を大学に通わせるというケースが多くみられました。頭のいい子であれば、親が貧乏な生活をしてでも大学に通わせることに経済的合理性が生じたからです。
大学進学した子が、その後有力企業などに就職すれば、親よりも明らかに高い所得を得ることができるようになり、将来に親の扶養をしてくれるほどの経済的豊かさを手に入れることができました。戦後の高度経済成長もこうした「子に投資すると親を扶養する形で返ってくる」というモデルを支えるだけの力がありました。

よく経済誌などでは「大学に入ればいい就職ができる時代は終わった」といいますが、これは本質の半分しか述べていません。つまり、子どものことしか述べていません。
むしろ時代が変わったのは親の経済的側面です。本当に終わったのは、「子がいい就職をすれば自分の老後を面倒みてくれる時代」なのです。

こういう時代はもう戻ってこないでしょう。子がうまく就職してもその所得水準は親と大差が生まれませんし、自分の生活をやりくりするのが精一杯のことが多いでしょう。
となれば「なんとなく」子の教育費を親が全額負担する発想を切り替えてみる必要があります。

老後の生活の自立を優先し、奨学金という選択も検討する

2つの例をあげます。
1つは子の進学費用を親が全額捻出し、見事就職した子に親の扶養負担を求める例です。たとえば毎月2万円、20年の扶養を求めれば480万円ですから大学の学費の3分の2くらいを返してもらうことになります。子にとっては大きな経済的負担です。
2つめは、子の進学費用の半分ほどを子に奨学金でとらせ、親の老後の負担は一切求めないという例です。子は奨学金を返済しなければなりませんが、親の面倒については経済的に負担を求められません。

両者は収支でいえば同じです(期間中の利息などを勘案すればきりがないのでここでは省略)。しかし、親子間の関係としてはどちらが良好な老後になるでしょうか。
私は後者だと思います。30~50歳くらいの間、子どもは結婚や子育てに取り組む中、親のための扶養を継続することは現代においてはかなり困難です。夫婦双方の親を扶養することになれば、さらに負担が重くのしかかります。

奨学金をとらせる、というと、親の愛情が欠けているように見えるかもしれませんが、「老後の経済的な負担を子にはかけさせない」と思えば、これもまた子への愛情ではないでしょうか。

資産運用を行っているような世帯においては、「ここにあるお金は自分の老後のための運用資金」であるが「子には奨学金をとらせる」という感情的葛藤が生じるかもしれません。しかし、資産管理を大局的に考えてみて欲しいと思います。
もしかすると、運用資金を効率的に増やすことができれば、「老後の経済も自立、子の奨学金分も親が後日立て替えできる」ということになるかもしれません。

いずれにしても、資産形成は生涯続くテーマです。リスク資産運用に取り組んでいる人たちは、さらに一歩進んでマネープランを考えていってほしいと思います。今年こそ「なんとなく」からの卒業をしていきましょう!

教育資金の準備不足は老後資金準備に影響する

教育資金を全額負担しないアプローチも