バリュエーションに富んだETFのラインナップ

日本の株式市場にはETF(イーティーエフ)と呼ばれる上場投資信託が上場しています。このETFは、国内外の株価指数や商品価格、商品指数などに連動した値動きを目指す投資信託です。
日本の株価指数に連動するものとして、日経平均株価やTOPIXに連動するタイプはもちろんのこと、業種別指数(銀行株指数、薬品株指数など)に連動したものもあります。アメリカ株、ブラジル株、中国株など外国株の株価指数に連動するタイプのETFもありますし、金価格や原油価格などの商品価格や商品指数に連動するタイプ、REIT(不動産投資信託)指数や債券指数に連動するタイプなど、バリエーションに富んだラインナップになっています。

少額から国内外の株式等へ分散投資ができる

このETFに投資すれば、少額の資金でも分散投資の効果を得ることができます。例えば1口から購入可能な日経平均株価連動型ETFならば、1万円以下の金額で日経平均株価採用の225銘柄すべてへ分散投資するのと同じ効果を得ることができます。
また、外国株に興味はあるけれど敷居が高そうだ、と感じている方であっても、外国株の株価指数に連動するETFなら、日本の株式市場に上場しているので日本株と同じ感覚で手軽に売買することができます。

使い勝手やコスト面でも優れているETF

証券会社等で販売されている通常の投資信託にも、ETFと同じように日経平均株価やTOPIXといった株価指数と値動きが連動するタイプのもの(「パッシブ型ファンド」と呼びます。)があります。しかし、そうした投資信託は1日1回、決まった価格(前営業日の基準価格)でしか売買できませんし、買い付け時の手数料や信託報酬といったコストも結構かかります。
しかし、ETFは個別銘柄と全く同じように売買できますから、株式市場が開いていればいつでも売買可能ですし、指値注文・成行注文のいずれもできます。逆指値注文も出すことができます。手数料も、個別銘柄と同じ料金体系で計算された売買手数料を売買時に証券会社へ支払うだけでOKです。信託報酬も低く設定されているものが多く、使い勝手やコストパフォーマンスの面からみても、通常の投資信託より有利といえます。

ETFは信用取引も可能

さらに、一部を除いてETFは信用取引をすることもできます。ですから、レバレッジをかけて信用買いをすれば、成功すれば現物買いより多くの利益を得ることができます。また、日本株がしばらく軟調に推移しそうだ、と思えば日経平均株価やTOPIX連動型のETFを信用売り(空売り)すれば、株価下落により利益を得られます。
個別株の信用取引は値動きが大きくなってしまうこともありますが、日経平均株価やTOPIXといった株価指数は個別株より値動きが緩やかです。したがって、信用取引にまだ慣れないうちは、個別株の信用取引をする前に、日経平均株価やTOPIX連動型のETFの信用取引をしてみるのも良いかもしれません。

流動性の低いETFには要注意

このように、いつでも個別株と同じように売買でき、少額から分散投資が可能で、コストも安い、というのがETFのメリットですが、以下のような点には十分に注意しましょう。
まず、ETFの中には流動性が非常に低い、つまり日々の売買高が非常に小さいものがあるという点です。流動性が低いETFを買うと、その後売却する際に時価よりかなり低い価格でないと売れなかったり、ひどい場合には買い注文自体が入っておらず売ること自体ができないということもありえます。
いつでも気軽に売り買いできるのがETFのメリットです。売りたいときに売れなかったり、値段を下げて叩き売りせざるを得ないのではせっかくのメリットを生かすことができません。
筆者の経験からすれば、自身が投資したい口数の100倍の売買高が毎日コンスタントにあるようなETFを選択することをお勧めします。

価格が指数と乖離しやすいETFにも注意しよう

また、ETFは指数や商品価格に値動きを連動させるように運用されているものの、中には対象となる指数等と乖離した価格が形成されることが多いものもあります。典型例は、流動性が低いETFと海外株など海外の指数に連動するタイプのETFです。
流動性が低いETFは、少量の売買注文が入っただけで価格が大きく上下に振れてしまいます。その結果、連動すべき指数の価格とはかけ離れた価格がついてしまうのです。
海外の指数に連動するタイプのETFの場合、日本の株式市場が開いていても対象となる指数を算出する海外市場は閉まっていることもあります。そんな中で取引が行われると、指数とはかけ離れた、需給や思惑に大きく左右された歪んだ価格が形成されてしまうのです。
流動性の低いETFはできるだけ避けたほうがよいのは上でも述べたとおりです。海外の指数に連動するタイプのETFは指数と価格が乖離しやすいことは仕方ないにせよ、指値注文を心がけるなど、指数と大きくかけ離れた価格で売買してしまうことのないよう心がけましょう。

なお、ETFはあくまでも「指数」に値動きが連動した投資信託です。「指数以上のパフォーマンスを上げてもらいたい」「ファンドマネージャーが投資銘柄を厳選した投資信託に投資したい」という方は、証券会社等にて「アクティブ型ファンド」と呼ばれる投資信託の中から選ぶようにしてください。