軽視できなくなった「もしハリ・シナリオ」に注目

 米国大統領選挙の動向を巡り、7月中旬までは想定できなかった変化が起きつつあります。21日に大統領選挙からの撤退表明を表明したバイデン大統領が推薦したカマラ・ハリス副大統領(59歳)が民主党の大統領選候補の本命に踊り出ています。

 13日に発生した暗殺未遂事件のヒーローとして勢い付いていたトランプ前大統領(共和党)に各種世論調査の支持率や当選予想でハリス氏がトランプ氏を猛追しています(Bloomberg報道など)。バイデン大統領とトランプ氏の老々対決に嫌気を感じていた「ダブルヘイター」と呼ばれる無党派層の政治的関心を刺激しています。

 ハリス氏は、カリフォルニア州の検事、司法長官、上院議員を経て弁舌が鋭く、「消費者をだます詐欺師や、自分の利益のためにルールを破る者など、(検察官として)あらゆる犯罪者と闘ってきた」と自身のキャリアをアピールし、「私は、トランプ氏のようなタイプを知り尽くしている」と断言しました。

 ハリス氏はバイデン民主党の主な政策方針を引き継ぎ、「中間層の拡充」を訴えています(図表2)。また、カリフォルニア州に所在するシリコンバレー(ハイテク産業の一大拠点)とのパイプも注目されています。

<図表2:民主党・共和党の政策公約や相対的弱点の比較>

(出所)各種情報より楽天証券経済研究所作成(7月末時点)

 こうした中、トランプ氏が副大統領候補に指名したバンス上院議員が共和党陣営の重しとなっています。2021年のTVインダビューでバンス氏が発した(一部の女性や同性愛者を蔑視した)発言が問題視され、党派を超えて女性が反発しSNS(交流サイト)上で炎上する展開となりました。

 ハリス氏による副大統領候補者指名(激戦州の白人男性知事との見方が有力)、8月の民主党大会での正式候補者指名を経て、9月10日に開催される予定の「第2回・大統領候補者TV討論会」の優劣と支持率調査の行方が当面の焦点となります。

 なお、リベラル(民主党寄り)で知られるテイラー・スウィフト(世界の歌姫)が2020年10月と同様に「民主党支持」を再表明すれば、「もしハリ・シナリオ」(米国初の女性大統領誕生=トランプ氏の返り咲き失敗)が現実味を帯びてくる可能性があり注視したいと思います。