2021年7月以降の日経平均の動きと、投機筋の先物売買

 2021年7月以降の日経平均と裁定買い残高の動きは、以下の通りです。

日経平均と裁定売り残・買い残の推移:2021年7月4日~2024年6月10日(裁定売買残高は5月31日まで)

出所:QUICK・東京証券取引所データより楽天証券経済研究所が作成

 日経平均の上昇下落に合わせて、裁定買い残高が増加減少していることが分かります。相場が大きく動くときは、以下【1】【2】のどちらかが起こっていることが多いことが分かります。

【1】外国人の日経平均先物買いの増加→裁定買い残の増加→日経平均上昇

【2】外国人の日経平均先物売りの増加→裁定買い残の減少→日経平均下落

 2021年7月から2023年12月までは、裁定買い残高が1.5兆円(紫の線を引いたところ)に近づくと、減少に転じることが多かったことが分かります。つまり、裁定買い残高が1.5兆円まで増加したら、日経平均反落を警戒した方が良かったことになります。

 2024年に入ってから、裁定買い残はさらに大きく増加しました。足元、2.6兆円近くまで増えています。投機的な先物買い建てが増えていることには注意が必要です。

 ただ、裁定買い残高がいくらになったら反落に向かうという、特定の警戒水準はありません。過去には、買い残が3.5兆円まで増加してから反落に向かうことを繰り返したこともあります。その時々で、どこがピークとなるか異なります。

 説明が少し難しくて分からなかったかもしれません。結論だけ理解してください。結論は、「日経平均の短期的な値動きは、投機筋、主に外国人の日経平均先物売買が先導している」ということです。

裁定残高5月末で2兆5,850億円、投機筋の先物買い建て増加に警戒を

 裁定買い残は5月31日時点で、2兆5,850億円です。外国人投資家による日経平均先物の投機的な買い建てが増えてきていることには、注意が必要です。ただし、裁定買い残高がいくらになったらピークアウトするかは、その時々の投資環境によって異なります。ここから減少に転じるのか、あるいは、さらに3兆超えまで増えていくのかは分かりません。

 裁定残高から分かることは、投機筋の先物買い建てが増えてきていて、少し警戒を要するということだけです。これだけで、短期的な日経平均が予想できるわけではありません。先行きを予想するためには、ファンダメンタルズ(景気・企業業績)の変化と、投機筋の動きを両方見ていく必要があります。

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