見えてきた植田総裁がイメージする利上げの最終到達点(ターミナルレート)
ならば、日銀の見通しの中に組み込まれている利上げのパスとはどういうものか、が重要なポイントになるわけですが、これについても植田総裁は重要なヒントを出しています。それは、記者会見における以下の発言です。
私どもの見通しですと、エネルギーの影響を除くコアコアで25年度と26年度は2%近い見通しになっています。…特に、見通し期間の後半にかけてこの通りの姿になっていくとすれば、政策金利もほぼ中立金利近辺にある状態になるという展望は持っています。
ただ、中立金利の水準については、かなりの不確定性があるので、今後分析を深めつつ、最終的に到達するところがどの辺か、もう少し知見を深めていきたいと思っております。
(見通し期間の後半には中立金利になっているということかと記者から念を押され)概ねというふうに申し上げたいと思います。
(出所)日本銀行、楽天証券経済研究所作成
中立金利とは、簡単にいうと経済に引き締め的でも緩和的でもない金利水準のことで、自然利子率、均衡実質金利と呼んだりもします。あくまで概念上の金利で、推計方法によってかなり違った値が出るため、例えば日銀が昨年12月に行った「多角的レビュー」のワークショップでは、「マイナス1.0%からプラス0.5%の範囲内」というふうに紹介されています。
仮に、保守的に見てそれをマイナス1.0%としましょう。そこにインフレ予想を足せば名目の中立金利が得られます。そこでインフレ予想を「物価安定の目標」が実現するという前提の下で2%とすると、名目中立金利は1.0%になります。やや保守的に見過ぎているとしても1.0%を少し上回る程度でしょう。
そうすると、植田総裁の発言から、政策金利は見通し期間の後半にかけて、すなわち2026年度にかけて1.0%(あるいは1.0%を少し上回るくらい)に到達していることになります。イメージでいうと、例えば2024年9月から半年ごとに0.25%ずつ引き上げていけば、2026年3月には1.0%になります。
ちなみに、この政策金利の先行きを前提に、先週のレポートで紹介した長期金利の推計をリバイスしたものが図表3になりますが、先週のレポートで紹介した姿と大差ないことが分かります。
<図表3 日本の10年金利と政策金利の先行き>
改めて、政策金利の推移と、それを前提とする長期金利(10年)の先行きを数字でまとめると、以下の通りです。
政策金利…2024年末0.25%→2025年末0.75%→2026年末1.0%
ケース(1)…2024年末1.0%→2025年末1.6%→2026年末2.0%
ケース(2)…2024年末1.2%→2025年末1.8%→2026年末2.2%