先週の日本株は上値の重い展開でした。

 23日(火)に日本銀行の金融政策決定会合が終了し、早ければ3月にマイナス金利が解除されるのではないかという思惑が増大。

 25日(木)発表の半導体メーカー世界最大手・米インテル(INTC)の2024年1-3月期業績予想が予想を下回ったことで、これまで急騰してきた日米半導体株が反落。

 日経平均株価(225種)の26日(金)終値は前週末比212円(0.6%)安の3万5,751円となり、23日(火)の取引時間中につけた3万6,984円の高値から1,233円も下落して終わる形になりました。

 今後は3万6,000円~7,000円台が上昇を阻む強力な抵抗帯になりそうです。

 一方、米国では25日(木)発表の2023年10-12月期の実質GDP(国内総生産)の速報値が年率換算で前期比3.3%増と予想を上回る伸びとなりました。

 26日(金)発表の12月個人消費支出の価格指数も、変動の激しい食品やエネルギーを除いたコアPCEデフレーターが前年同月比2.9%の上昇と予想を下回る伸びに。

 物価高の鈍化にともない相変わらず個人消費が堅調に推移していることを好感して、機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は前週末比1.06%高と3週連続で上昇しました。

 ただ、今週は米国で重要な経済イベントや指標、巨大IT企業決算の発表が相次ぐため、利益確定売りも出やすく、新たな懸念材料が浮上して株価が急落に見舞われる恐れもありそうです。

 特に米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)が月末の30日(火)、31日(水)にあります。米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長がFOMC後の記者会見で、早期利下げを織り込む市場の楽観論をけん制するため、高金利政策継続に積極的なタカ派的発言を行う可能性が高い点に注意したいところ。

 今週は2月2日(金)の1月雇用統計まで、米国の雇用関連指標の発表も相次ぎます。

 また、30日(火)のマイクロソフト(MSFT)をはじめ、「GAFAM」と呼ばれる米巨大IT企業5社全てが今週、決算発表を行います。

 最近株価が急騰してきた半導体メーカーのアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)も30日に決算発表予定で、先週、同業のインテルショックがあっただけに要注目です。

 そんな中、1月最終週の始まりとなる29日(月)の東京株式市場の日経平均株価の終値は、前週末比275円高の3万6,026円でした。自動車など輸出関連銘柄が円安を支えに堅調に推移しました。

 ただ日本株は今月、上昇の勢いが急だったため利益確定売りが入りやすい状況です。押し目(上昇中の株価が少し下がったあと、再び上昇する局面)買いを狙う手も考えてみてもよいかもしれません。

先週:日銀のマイナス金利3月解除懸念やインテル悪決算で下落、銀行やゲーム株など物色動向に変化?

 先週の日本株を最も大きく動かしたのは23日(火)に終了した日銀の金融政策決定会合でした。

 大方の予想通り、従来の金融緩和策の継続が決まりました。

 しかし、市場の疑心暗鬼を呼んだのは年4回発表される「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、2024年3月に控える春闘での賃金交渉に向けた労使スタンスなどを踏まえると、年率2%上昇という物価安定目標の「実現確度は少しずつ高まっている」という新たな文言が付け加えられたことです。

 会合後の記者会見で、植田和男総裁は「展望リポートのない回でも政策変更はありうる」と、次回3月19日(火)終了の金融政策決定会合で早くもマイナス金利政策が解除される可能性を明確に否定しませんでした。

 そのため、24日(水)~25日(木)には、日本の長期金利の指標となる10年国債の金利が急上昇し、1カ月半ぶりに一時0.75%台まで上昇。

 金利正常化が収益拡大につながる銀行株は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)の26日終値、前週末比3.6%高となるなど、週間の業種別上昇率ランキングのトップに輝きました。

 一方、金利が上がるとその利払い負担が収益を圧迫する不動産株や建設株が下落するなど幅広い銘柄に利益確定売りが発生。

 24日(水)夜には米国の電気自動車メーカー・テスラ(TSLA)が2024年の通期売上高が大きく減速する可能性を警告する決算を発表したことで、テスラ株は週間で14%も急落。

 電気自動車に車載モーターを供給するニデック(旧日本電産)(6594)は25日(金)に前日比3.2%安、蓄電池を供給するパナソニックホールディングス(6752)も前日比2.0%安と下落。

 25日(木)夜にはインテル(INTC)の2024年1-3月期業績見通しがデータセンター用チップの需要低迷などで予想を大きく下回り、インテル株は26日(金)に前日比12%も急落しました。

 同社に半導体部品を供給しているエンプラス(6961)の26日(金)終値が前週末比13.5%安となるなど、絶好調だった日本の半導体関連株も売られました。

 一方、先週の東証プライム市場の値上がり率ランキング1位は、スマホゲーム会社・KLab(3656)

 同社は、「ポケモン」に似ていることで話題のPC向け冒険ゲーム「パルワールド」の運営会社とゲームの共同開発を行うことを発表して、26日(金)終値が前週末比35.1%も急騰。

 たとえ、全体相場が一時的な停滞局面を迎えても、新テーマや好材料を背景に上昇する株はあります。

 銘柄物色のはやり廃りを一早く読んで、株を売買することは新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の成長投資枠などを使った個別株投資のコツといえるでしょう。

今週:31日のFOMC、2月1日アップル決算、2日雇用統計など相場急変イベント満載!

 今週は株式市場を大きく転換させるような米国発の経済イベントや経済指標、決算発表が満載です。

 経済指標では米国の雇用関連指標が連日のように発表されます。

 30日(火)には米国の雇用に対する企業サイドの需要動向がわかる12月の雇用動態調査(JOLTS)求人件数、31日(水)には米国の民間企業の新規雇用者数がわかるADP(オートマチック・データ・プロセッシング社)の1月民間雇用統計、そして月が変わる2月2日(金)には早くも1月の米国雇用統計が発表になります。

 1月の雇用統計では、市場予想によると非農業部門新規雇用者数は前月12月の21.6万人増から17.8万人増に減り、平均時給も前月比0.4%の上昇から0.3%の伸びに鈍化する見込みです。

 米国が物価高にもかかわらず旺盛な個人消費に支えられて景気がソフトランディング(軟着陸)しそうなのは、賃金が物価以上に上昇して、米国民の間に「賃金や雇用の不安がないから消費できる」という楽観主義が定着しているから、という面もあります。

 実際、前回12月の平均時給は前年同月比で4.1%の伸びとなっており、12月の変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアCPI(消費者物価指数)の前年同月比3.9%の伸びを上回っています。

 これが1月10日(水)発表の2023年11月の毎月勤労統計調査で、物価上昇を考慮した実質賃金が20カ月連続でマイナスになっている日本と米国の大きな違いです。

 さらに今週最大のイベントといえば、米国の金融政策を決定するFOMC以外ありません。

 31日(水)深夜の終了時には、4会合連続となる政策金利の据え置きが確実視されています。

 昨年2023年12月のFOMC会合では市場の楽観論に手を貸すように、高金利政策の解除に柔軟な態度を示したパウエルFRB議長が今回は、多少厳しめのタカ派的な発言で「利下げはまだ先」と市場にくぎをさす可能性が高いかもしれません。

 今週は米国株の上昇をけん引してきた「GAFAM」と呼ばれる巨大IT企業5社の2023年10-12月決算が発表されます。

 30日(火)には、生成AI(人工知能)技術でアップルに先行し、先週、時価総額が3兆ドル(約444兆円)を超え米国No.1企業になったマイクロソフト(MSFT)やグーグルの親会社アルファベット(GOOG)

 2月1日(木)にはアップル(AAPL)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、フェイスブックの親会社メタ・プラットフォームズ(META)が発表。

 発表時間は日本時間の翌朝早朝(31日水朝、2日金朝)になるため、ネガティブな決算の場合、日本市場にもショックが走るでしょう。

 特に、中国でのiPhone販売が不調なアップルに関しては注意が必要かもしれません。

 日本株では、これまで急騰してきたものの、先週は前週比0.9%安だった東京エレクトロン(8035)をはじめ半導体関連株が乱高下する恐れもあります。

 ただ、株は利益を出すために投資するもの。

 先週までの日本株のように株価が急騰すれば利益確定売りで多少下がるのは、ある意味、当たり前です。

 急落後は株を安く買えるチャンスなので、相場急変に注意しつつ、押し目買いを虎視眈々(たんたん)と狙うのも一つの考え方でしょう。