12月のビットコインイベント

NEW! 12月14日 ハードウエアウォレットLedgerでハッキング・その後、全額補償
NEW! 12月22日 SEC、ETF申請各社に12月29日期限で修正申請要求

*2023年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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材料面から見た1月見通し

12月の振り返り

12月のビットコイン価格(円)とイベント

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 12月のBTCは高値圏でのもみ合い。年初来高値を更新したものの乱高下を繰り返した。

 タカ派で知られるウォラーFRB(米連邦準備制度理事会)理事が利下げに言及、パウエルFRB議長の講演もハト派に受け取られる中、利上げ打ち止め・早期利下げ観測が浮上する中、BTCはじりじりと4万ドルを回復した。

 またブルームバーグのアナリストがETF(上場投資信託)承認時期を1月8~10日と予想、さらにブラックロックがSEC(米証券取引委員会)との協議を経てETFの申請書を修正・再提出したことが、承認に向けた前向きな動きと好感され、4万4,000ドル台に上昇、年初来高値を更新した。

 しかし同水準で上げ渋ると、フラッシュクラッシュ(瞬間的に相場が大きく動くこと)気味に急落、安全と思われたハードウエアウォレットLedgerのハッキング事件もあり4万ドル近辺に値を下げた。

 しかしハト派とされたFOMC(米連邦公開市場委員会)を受けた米長期金利の低下などもあり下げ渋ると、アークインベストメントがSECの意向を受け申請書を修正再提出、ブラックロックなどもこれに続き、BTCは4万4,000ドルを回復した。

 さらにSECは、申請各社に、年内に同様の修正再提出を求めたことにより、1月上旬での承認期待が膨らんだ。しかし、月末にかけてはマイナーの利食い売りなどもあり、上値の重い展開が続いたが、年が明けるとETF承認期待で大きく上昇している。

材料面から見たBTC見通し

利下げ観測

 12月のBTC市場が上昇した要因はFRBの利下げ観測とETFの承認観測だった。前者については11月のFOMCで2会合連続の利上げ見送りとなり、利上げ打ち止めが確実視されることとなった。

 これでこの材料での上昇は一服、次は利下げ時期が焦点となったが、月末近くにウォラー理事が数カ月以内に利下げする可能性に言及したことで、利下げを織り込みに行く展開となり、12月のFOMC後の記者会見でパウエル議長が利下げの議論を始めたと言及、3月利下げをほぼ織り込み、5月までに2回、6月までに3回の利下げを織り込むに至った。

FF先物(3月限・5月限・6月限)金利推移

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 FRBのロジックは、インフレ率が順調に低下すれば、名目の政策金利が一定でも実質金利が上昇する(実質金利=名目金利-インフレ率)ので、引き締めすぎを避けるために利下げが必要となるというもの。

 それゆえ、12月時点で、2024年のいつから利下げを始めるか議論しても答えは出ず、月央以降、FRBは市場の織り込みすぎに警鐘を鳴らし始め、月末にかけてのBTC相場の重しとなった。

GBTCプレミアム(市場価格/純資産価格-1)とBTC/USD価格

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

ETF承認期待

 もう一つの相場のけん引役は、BTC現物ETFの承認観測だ。上記はグレースケールのBTC私募ファンドGBTC(ビットコインの価格と連動した投資信託)の理論価格と市場価格との乖離(かいり)だ。ETFではこうした乖離が生じないようにマーケットメーカーが裁定取引を行う。

 この裁定取引の決済方法について、ブラックロックなど申請各社とSECとが協議を始めていることが伝わり、市場は承認が近いと受け取り、上記の乖離幅も縮小した。すなわち、ETF承認を前提とした詰めの協議を行っているからだ。

 細かい話だが、マーケットメーカーと発行会社との決済で、BTC現物での受け渡しも可能としようとした発行会社に対し、SECは現金での決済にこだわった。するとアークインベストメントを皮切りに発行会社側が折れてSECの主張を受け入れたため、これで障害はほぼなくなったと市場はさらに承認を織り込み始めた。

今後の展開

 まず前者だが、FRBがいつ利下げを開始するかは少なくとも今月末のFOMCと2月のCPI(消費者物価指数)を見てみないと何とも言えない。そうした中、市場の思惑が揺れ動く展開が予想される。一方で後者については答えが出た。既に承認を織り込んでいたため、承認時の上昇は限定的だった。

 次の注目はETFローンチ後、どれだけの資金が流入するかだ。詳しくは別稿に譲るがETFが承認されれば、機関投資家がBTCのエクスポージャーを取りやすくなり、投資家のすそ野が拡大、BTC市場に新たな資金が流入すると期待されている。その新規の買いフローと期待先行で買い進めたポジションの利食い売りとのどちらが強いかが、今後の焦点となる。

 金ETFやBTCの先物ETFの際、ローンチ後はいったん利食い売りが強くなった。逆説的だがETF承認期待という最大の買い材料がなくなり投機ポジションの手じまい売りが殺到する一方で、ETF登場を機に新規に参入する投資家はいったん様子見をする可能性がある。

 ご祝儀的な買いが相応に出る可能性もあるが、筆者がファンドマネージャーなら今の過熱した相場に飛びつかず押し目を狙うだろう。ただ、はたしてどうなるかは、フタを開けてみないと分からない。