米国株市場の強さと微妙な変化に注意

 これまで見てきたように、先週の日経平均は、大きく上値を伸ばすことはできなかったものの、高値圏での推移を維持してきたわけですが、その背景には米国株市場の上昇が影響している面があります。

図4 日米の株価指数比較 (2023年10月末を100として計算)

出所:MARKETSPEEDIIデータを元に筆者作成

 上の図4は、昨年10月末の株価を100として、日米の株価指数(日経平均・TOPIX・NYダウ・S&P500・NASDAQ)の推移を比較したものですが、週末にかけて米国の株価指数の伸びが目立っていることが分かります。

 実際に、19日(金)の取引では、NYダウとS&P500が史上最高値を更新したほか、NASDAQも前日比で1.7%の上昇を見せています。

 ただし、先週の米国株市場での出来事を整理すると、微妙な変化がいくつか生じています。

 まず、先週はFRB(米連邦準備制度理事会)の要人から「利下げを急ぐ必要がない」という発言があったことや、12月小売売上高などの経済指標の結果が強いものとなったことなどから、「3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利下げを実施する」という期待が後退したことです。

 インフレ見通しについても、地政学リスクの高まりによる供給網や資源高懸念なども燻っています。

 次に、早期の利下げ見通しが後退したことと、米国経済のソフトランディング見通しが強まったことで、米国の金利が上昇したことです。米10年債利回りが再び4%台に乗ったほか、為替市場で円安/ドル高が進み、これは日本株の追い風にもなりました。

 そして、台湾の半導体製造企業TSMC(TSM)の好決算をきっかけに、半導体を中心とする米国のハイテク株が大きく上昇し、グロース株が優位の展開となりました。

 AI投資や半導体需要への期待感を背景に、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が過去最高値を更新したほか、関連銘柄への物色の拡大、さらに、下落基調が続いていたアップル(AAPL)も、金融機関の投資判断の引き上げをきっかけに反発する動きを見せました。

 本来であれば、金利の上昇によってグロース株は買われにくくなるのですが、先週は大きく買われたことになります。その一方で、ソフトランディング見通しが強まっているにも関わらず、一部の景気敏感株が伸び悩みを見せたほか、景気や金利の影響を受けやすい中小型の企業で構成されるRussell2000も軟調気味で推移しています(下の図5)。

図5 米Russell200(日足)の動き(2023年1月19日時点)

出所:Bloombergデータを元に筆者作成

 つまり、昨年11月から上昇トレンドが続いている米国株市場ですが、その中身を見ると、これまでの「グロース株・景気敏感株・ディフェンシブ株が併存して上昇」する米国株の構図に変化が生じ始めているかもしれない点には注意が必要かもしれません。

「相場が強いか弱いか」で動いている局面というのは、予想以上に株価が上昇する展開があり得る反面、現実とのギャップが修正される局面に転じた際には大きく下落してしまう可能性があります。

 今週の株式市場のスケジュールを確認すると、日銀の金融政策決定会合が週初の22日~23日に開催されるほか、米10-12月期GDP(国内総生産)速報値や米12月個人消費支出といった、米国の経済指標の発表が控えているのと同時に、日米の企業決算が増え始めるタイミングを迎えます。

 主な決算銘柄としては、国内ではディスコ(6146)ニデック(6594)ファナック(6954)信越化学工業(4063)、米国ではテスラ(TSLA)インテル(INTC)ウエスタンデジタル(WDC)プロクター・アンド・ギャンブル(PG)ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)などの注目度が高そうです。

 そのため、今週は企業業績を中心に、株価がさらなる上値を追っていくのか、それとも、ひとまず調整局面を迎えるのかの分岐点になりそうですが、前回のレポートでも触れたように、引き続き「市場が織り込んでいる想定」の時間軸と変化に注意しつつ、波乱含みの強気相場に挑むことになりそうです。