米国株の強さがとどまるところを知りません。

 先週は、来たる2024年の上昇相場継続に期待を持たせる米国の金融政策の方針転換が明らかになりました。

 それが12月13日(水)に終了し、3会合連続の利上げ見送りを決めた米国のFOMC(連邦公開市場委員会)でした。

 このFOMCでは、来年末の金利見通しも発表され、会合参加者が来年内に3度の利下げが行われる見通しを持っていることが判明。米国では今回の金融引き締め局面でもうこれ以上の利上げはないとの見方が広がりました。

 米国株市場は、2024年3月に早くも利下げが行われ、投資資金が流入する期待感から、機関投資家が運用指針にする12月15日(金)のS&P500種指数は前週末比2.49%高と大幅に上昇しました。

 ハイテク株の比率が高いナスダック総合指数も2.85%上昇。

 銀行株や景気敏感株の組み入れ比率が高いダウ工業株30種平均にいたっては、2.93%高で史上最高値を更新。

 主要3指数が7週連続の上昇で全て年初来高値を更新する全面高の展開になりました。

 米国株がここまで強いと、多少円高が進んでも、日本株もツレ高するものです。

 15日(金)の日経平均株価(225種)の終値は前週末比662円(2.1%)高の3万2,970円まで上昇しました。

 米国株急騰の背景には、高金利にもかかわらず米国経済はそこそこ堅調で雇用は非常に強い状態を保っており、景気のソフトランディング(軟着陸)期待が確信に変わりつつあることがあります。

 13日(水)終了のFOMCでは、さらに「2024年に年3回利下げ」という新材料も加わり、物価高を克服した米国経済が金利低下を背景にさらに堅調に推移するバラ色のシナリオが広がりました。

 とはいえ、米国が2024年に利下げに転じるということは、日米金利差が縮小して円高ドル安トレンドが続く可能性が高いということ。

 先週の円相場はFOMCの決定を受け、14日(木)に再び1ドル=141円台を付けるなど、円高トレンドが再開しています。

 今週はいよいよ18日(月)、19日(火)に、今度は日本の中央銀行・日本銀行の金融政策決定会合が開催されます。

 当初恐れられていたマイナス金利の解除など、金融緩和策に大きな変更は行われない見通しですが、会合の結果が発表される19日(火)を境に再び日本株が急変動する可能性が高いでしょう。

 実際、日銀会合を警戒して、週明け18日(月)の東京株式市場の日経平均の終値は反落し、前週末比211円安の3万2,758円となりました。午前の取引で一時400円以上値下がりする場面があったものの、午後は米国株先物の堅調が意識され、下げ渋りました。

 今週も絶好調の米国株、乱調の日本株という強弱感のある相場展開が続きそうです。

先週:FOMC政策転換示唆で米国株急騰!日本株は半導体株ほぼ一強の展開!

 先週は12日(火)に米国の11月CPI(消費者物価指数)が発表され、前年同月比3.1%の上昇と、前月10月の3.2%増から物価上昇が鈍化しました。

 13日(水)発表の11月PPI(卸売物価指数)も前年同月比0.9%増と伸び率が低下し、米国の物価の沈静化が順調に進んでいることが判明しました。

 そして13日(水)終了のFOMCでは予想通り3会合連続の利上げ見送り。

 さらに、FOMC参加者が今後の政策金利の水準を予想した「ドットチャート」が発表され、2024年末の政策金利水準の見通し(参加者の中央値)が9月時点の5.1%台から4.6%台に下方修正されたことが非常に大きなポジティブサプライズになりました。

 というのも現状、下限5.25%上限5.5%に据え置かれた政策金利が4.6%台に低下するということは、2024年に0.25%の利下げが3回行われることを示唆しているからです。

 FOMC終了後には、これまでインフレ退治に強硬な発言を繰り返してきた米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が記者会見。

「政策金利はピークに近い可能性がある」「いつ金融引き締めを戻すのが適切かを今日の会合でも議論した」と、今後は利下げを模索するハト派的な姿勢に急転換したことも驚きでした。

 それを受けて13日(水)の米国の金利先物市場は2024年3月に早くも利下げが行われる見方が優勢となり、2024年を通じて合計1%の利下げが行われるという超楽観論が台頭しました。

 ただ、ニューヨーク連邦準備銀行のウィリアムズ総裁が15日(金)に「利下げについては話し合っていない」と市場の期待に冷や水を浴びせるなど、今後はFRB高官の利下げ見通しを巡る発言に一喜一憂する展開になりそうです。

 通常、FRBが急いで利下げに踏み切るのは、株価が急落するような景気後退や金融危機に直面した場合です。

 にもかかわらずFOMCのドットチャートが2024年に3度の利下げを見込んでいるのは、米国景気のソフトランディングに対してFRB高官の間に相当な自信がある表れといえます。

 FRBの自信を好感して米国の株高が進んでいる面もありそうです。

 一方、先週の日本株の業種別上昇率ランキング上位は機械や電気機器で、上昇をリードしたのは半導体関連株でした。

 半導体試験装置で世界的大手のアドバンテスト(6857)の12月15日(金)の株価は前週末比15%も上昇。

 同社が生成AI(人工知能)向け高性能半導体メーカーの米国エヌビディア(NVDA)に半導体のテスター(正しく動くか測定する機械)を大量納入していることが材料視されたようです。

 アドバンテストは時価総額が3兆円を超える大型株。その株価が1週間で15%も上昇するのは異例です。

 米国が中国向けAI半導体の輸出規制を続ける中、日本の半導体産業に「漁夫の利」ともいえる投資家の世界的な関心が集まる流れは2024年も続きそうです。

 一方、上げ相場だったにもかかわらず、円高の進行で自動車株、金利の低下で銀行・保険株、これまで値上げ効果で収益拡大が続いた食品株や電気・ガスの業種別騰落率はマイナス圏に沈んでいます。

 一時1ドル=141円台に達した円高のせいで、トヨタ自動車(7203)が3%安。

 準メガバンクのりそなホールディングス(8308)が9.3%安。

 また、格安イタリアン料理チェーンのサイゼリヤ(7581)が12.9%安となるなど、コロナ明けの消費拡大が2年目に入り、前年同月比での業績の伸び率の鈍化が懸念される内需株の一角も、これまで株価が急騰した反動で大きく売られる展開でした。

 半導体株がほぼ一強、輸出株や内需株は低調という先週の傾向は、2024年の銘柄物色の変化を示す前兆といえるかもしれません。

今週:日銀、マイナス金利解除しなければ株高!?米国由来の円高に注意

 今週は日銀の金融政策決定会合が18日(月)、19日(火)にあり、19日(火)正午前後に終了。

 金融緩和策からの出口戦略を進める日銀の決定で日本株やドル円相場が急変動する可能性が高いので注意が必要です。

 日銀の植田和男総裁が先々週の7日(木)に、「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と発言したことを受け、年末最後の日銀会合でマイナス金利が解除されるのではという懸念が台頭しました。

 日銀が金融緩和策の幕引きをどのように行うかに対する疑心暗鬼が、米国株が上昇しているにもかかわらず日本株が弱い状況を生んでいます。

 もし無風のまま、無事に日銀会合を通過すれば、今週は再び円安方向に為替レートが振れて、輸出株を中心に日本株も急上昇という展開に期待できるかもしれません。

 今週の米国では、19日(火)の11月住宅着工件数など、住宅関連指標が相次いで発表されます。

 20日(水)には民間調査機関コンファレンス・ボードの12月消費者信頼感指数も発表。

 22日(金)には米国の11月個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)も発表され、市場予想では11月のPCEデフレーターが前年同月比2.8%増と、ついにFRBがインフレ率の目標にする2%台まで低下する予想です。

 FRBが物価指標として最重要視する、変動の激しいエネルギーと食品を除くコアPCEデフレーターは10月の前年同月比3.5%の伸びから3.4%上昇に減速する見通し。

 順調なインフレ率の低下が確認できれば、ダウ平均に続き、S&P500やナスダックも2024年を待たずに史上最高値更新を達成する可能性も高そうです。

 12月25日(月)のクリスマス休暇を前に、今週の株式市場はもうひと伸びする可能性が高そうですが、日本株の不安要素はやはり円高。

 日銀の金融政策の変更だけでなく、米国のFRB高官が利下げ容認に寛容なハト派発言をしたり、米国の景気・住宅指標が大きく低下して景気のハードランディング(急降下)懸念が台頭したりすると、米国金利が急低下してドル安円高が進みます。

 18日(月)、19日(火)の日銀会合を無事通過した場合、日本株が上がるも下がるも米国株次第という状況になりそうです。