利上げ打ち止めを織り込みに

 ただ、もう少し俯瞰してみると、別の背景が見えてくる。FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策の変化だ。新たな「お金」として設計されたBTCは、法定通貨の代替投資としての性格を持ち、特にコロナ対策の無制限緩和に対し、インフレヘッジとして米投資家の一部が買い始めて以降、FRBの金融政策に非常に反応するようになった。

BTC/JPYと米金融政策

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 FRBがテーパリング、非常時の金融緩和の正常化にかじを切った2021年11月にBTCはピークを迎えた。そして、FRBが利上げ幅を75bpから50bpに縮小するという観測が浮上した2022年11月に下げ止まった。さらに50bpから25bpに縮小するとの観測が浮上した2023年1月に上昇に転じた。

 2023年3月の金融不安で利上げ打ち止め観測が浮上、BTCは3万ドルに達し、6月のFOMCで実際に利上げを見送ると年初来高値を付けた。しかし、7月FOMCで再利上げ、利上げを打ち止めたのではなく、利上げペースを緩めただけだとすると、8月から9月にかけて下降トレンドに入った。

 しかし、WSJがFRBがリスク評価を中立に戻しつつあると報じ、NY連邦準備銀行のウイリアムズ総裁が金利はピークかその近くにあるとするなど、利上げは最終局面を迎えている。前述のドットチャートでも、FOMCメンバーは年内あと1回の利上げを想定し、来年以降の利上げは予想していない。

 すなわち、3月や6月に不発だった利上げ打ち止めの織り込みに行く相場が始まった可能性がある。

 足元の焦点は11月1日のFOMCでの利上げの有無で、これは今月発表される雇用統計やCPI(消費者物価指数)次第だ。もし11月の利上げを見送るとすれば、データ次第で利上げの可能性を留保しつつも、7月から利上げ打ち止め局面に入った可能性が高まる。

 一方、11月に利上げに踏み切ったとすれば、利上げ打ち止め感はさらに高まる。いずれにせよ、BTCは利上げ打ち止めを織り込みに行く動きから、年初来高値を試しにいく展開が予想される。

 今月の数字が弱く前者であれば今月中にも、数字が強めで後者のシナリオとなれば来月にも3万2,000ドルをトライするのではないだろうか。

現物ETFは承認されるか

 ちなみに、今回判断が延期された現物ETFは、年内は微妙だが、来年中には承認される可能性が高いと考える。というのは、SECは業界も投資家も切望する現物ETFを価格操作を理由に拒んできた。いわば法(ルール)を盾に首を縦に振らなかった。

 しかし、このSECの法解釈を裁判所は一蹴し、その理屈を言い出したクレイトン前SEC委員長まで「今の状況に照らし合わせれば承認は不可避」と言い始めた。すでにSECの論理は破綻、四面楚歌の状態だ。残るは、バックに控えるとされる民主党左派への配慮や面目を保つために反対しているにすぎない。

 しかし、そうしたある意味、非合理的な要素にこだわって、来年3月の最終期限にブラックロックの申請を否認するようなことになれば、ウォール街を敵に回しかねず、後のキャリアに影響しかねない。ゴールドマンサックス出身のゲンスラー委員長は、そうした損得勘定に長けていると考える。