圧倒的に弱いマザーズ指数の動き

 日本株は二極化相場が続いています。ざっくり言うと「成長株が弱く、それ以外が強い」という状況です。言い換えれば成長株の一人負けです。

 これは株価指数をみてもよくわかります。

 9月15日時点ではTOPIX(東証株価指数)は高値追いで明確な右肩上がりの上昇トレンド、日経平均株価も6月につけた直近高値に肉薄する強含みの動きです。しかしマザーズ指数は、TOPIXや日経平均株価とは全く動きが異なり、非常に弱い動きとなっています。

日経平均
TOPIX
マザーズ

 成長株も株価調整によりかなり割安となったものもありますし、成長株全てが弱いわけではなく、高値更新しているような成長株もあります。

 そのため、個人的には成長株にそろそろ資金流入が生じて株価が大きく上昇してもよいとは思っていますが、実際はなかなかそうはなっていません。

成長株の「株価調整」の理由をまずは見極める必要

 私たち個人投資家は、成長株の株価が下がっている理由をまずは見極める必要があります。

 成長株の株価が下がる理由は、大きく分けると「業績そのものが悪化している」か「業績は悪化していないがインフレ率が高まっている」の2つです。

 もし、業績そのものが悪化していたり、成長性が目に見えて鈍化している場合は、株価も天井を付けて下落しやすくなります。成長株は将来の業績向上を見込んでもともと高めの株価がついていたケースが多いですから、業績悪化となると株価も大きく下落することになります。

 ですから、業績がピークアウトしているような成長株には、株価が大きく下がっていたとしても安易に手出ししない方がよいでしょう。

成長が続いているのであれば長い目で株価上昇となるはず

 一方、利益成長が続いているのであれば、長い目でみたら理論上株価は上昇するはずです。

 例えば毎年利益が2倍ずつ成長する株があったとしましょう。現実にはほぼあり得ませんが、説明を分かりやすくする都合上、この前提で考えてきます。

 この株は次のように1株当たりの利益が増加すると見込まれています。

1年後 20円
2年後 40円
3年後 80円
4年後 160円
5年後 320円
合計 620円

 もし、インフレ率がゼロであれば、5年間で得られる利益の合計620円の現在価値は、同じ620円になります。

 しかし、今後年間10%のインフレ率が見込まれるとすると、5年間で得られる利益の現在価値は次のように402円まで減価します。

 1株当たり620円の価値だったものが402円になってしまうわけですから、企業業績に関係なく、10%のインフレ率となれば株価はおよそ35%下がってしまうことになります。

1年後 18円
2年後 32円
3年後 58円
4年後 105円
5年後 189円
合計 402円

 このように、企業業績が変化なくても、インフレが進めば進むほど成長株が将来見込む利益の現在価値が低下し、株価が下がってしまうのです。

 ただ、株価が調整して適正水準に達した後は、低インフレ率の時より増加スピードは鈍化するものの、毎年の利益により企業価値そのものは増えていきますから、長期的に見れば株価は上昇傾向が続くはずです。

金利低下は成長株にはプラス要因だが…

 インフレ率が上昇し、金利が上昇すると将来の貨幣価値が下がりますが、その逆に、インフレ率が下がり、金利が低下すると将来の貨幣価値が高まります。

 したがって、将来企業が稼ぐ利益の現在価値合計が増加し、株価上昇につながります。

 ですから、まずはインフレ率の今後の見通しが反映されている債券の金利動向を注目すべきです。このとき、日本国債の金利水準はそもそも低すぎるので、10年物米国債の金利動向を確認しておく方が良いと思います。

 ただし、1点注意すべき点があります。確かに金利低下が生じれば、成長株にとってはプラス要因となるのですが、果たしてその金利低下がどのような理由で生じているかがとても重要です。

 もし、金利低下が行き過ぎたインフレ(物価上昇)により、企業業績悪化・景気悪化となったことが要因で生じているのであれば、金利低下による成長株への追い風以上に、業績悪化による株価下落を懸念しなければなりません。

 これを事前に予測するのは極めて困難ですから、例えば金利水準が目に見えて低下しているのに株価が上昇しない、もしくは企業の業績発表で、業績悪化や、業績予想の下方修正が相次ぐようであれば、大いに注意すべきです。

 筆者個人的には、現状のマーケットサイクルは逆金融相場(金融引き締めにより企業業績にマイナスの影響が出始める局面)にあると判断していますから、その後訪れる逆業績相場(金融引き締めの影響で企業業績も実際に悪化する)での株価の大幅な下落には十分に気を付ける必要があると思います。

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