株価が2割下がったら売った方が良い

 優待投資といっても「株式投資」です。投資した企業の業績が悪化し続けると、株価が下がり続けることもあります。せっかく優待を得ても、株価が大きく下落しては意味がありません。株価を見ない優待投資家は、株価が下がり続けていても気づかないことがあります。

「優待目当ての投資は良くない」例として有名になったのは、2010年に破たんした日本航空です。破たん前の日本航空は、業績や財務に問題がありましたが、株主に対して、航空運賃が正規料金の半値になる株主優待券を配布していましたので、優待券が欲しくて投資している個人投資家が多数いました。

 破たん後に再生して再上場した現在の日本航空は、財務内容も収益力も回復し、魅力的な投資対象になっていると思います。ところが、破たん前の日本航空は、財務内容に重大な問題を抱えていました。

 私は、日本航空の破たん時にファンドマネージャーをやっていましたが、当時の日本航空は実質債務超過であったことから、投資不可リストに入れており、投資することはあり得ませんでした。

「実質債務超過」とは、自己資本が実質マイナスということです。当時、表面上、自己資本はプラスでしたが、開示されている財務諸表の注記事項をきちんと見れば、退職給付債務(年金)の積み立てに大きな不足があり、差し引きすると、実質債務超過であったことがわかっていました。

 投資した後、業績・財務が急激に悪化する銘柄は、いったん売却すべきです。一時的に業績が悪化しただけならば問題ないですが、構造不況に陥ってリストラを始める銘柄や、財務が痛んでいる銘柄は売るべきです。

 と言われても、「一時的に悪化しているのか構造的にダメになっているのか、どうやって判断したらいいかわからない」という方が多いかと思います。そういう方にオススメは、機会的な損切りルールです。以下をしっかりやると良い結果につながると思います。

<リスク管理のための損切りルール>

投資した銘柄の株価が、買い値より20%以上、下がったら売却

 株価が買い値より20%以上、下がるということは、一時的ではなく何か構造的な問題を抱えている可能性もあります。20%の損切りルールを持っておけば、半値になるまで放っておくという問題を抱えないで済みます。

 もちろん、20%下がったところが大底で、そこから反発する銘柄もあります。そういう銘柄は「売らなければ良かった」と、後悔する人もいるでしょう。私はファンドマネージャー時代、損切りしてから株価が反発しても、後悔することはありませんでした。

 20%下がってそこから反発する銘柄よりも、20%下がってそこから下げが加速する銘柄の方が、はるかに多かったからです。

 20%も下がる銘柄を買ってしまったということは、買う時点で、何か重大な判断ミスをしていた可能性が高いということです。いったん売却し、頭を冷やしてから、別の有望銘柄を見つけて投資した方が良い結果につながることが多いと言えます。

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