株主優待も魅力的なJR4社

 機関投資家にはメリットがないので、ファンドマネージャー時代には注目したことがありませんでしたが、JR4社が実施している株主優待は、個人投資家には魅力があります。

 JR4社は、運賃・料金の割引券などや、自社施設などの割引利用券などを、株主優待品として株主に贈呈しています。旅行好きの個人投資家に好評です。

 コロナ禍で、国内・海外とも旅行が控えられている間は、株主優待の利用価値も低下していましたが、これから、また価値が戻ると思います。

JR東海への投資に慎重な理由

 JR4社とも、中長期的な観光業の復興や、新幹線ビジネスの成長を見据えるならば、今から投資して長期保有するのも悪くないと思います。JR4社の中で、JR東日本の長期的な投資価値が一番高いと判断しています。

 JR西日本やJR九州も、中長期的な日本の新幹線ビジネスと観光業の成長を考えるならば、投資していく価値はあると思います。

 注意が必要なのは、JR東海です。事業に占める新幹線の比率が高いので、本来ならば、JR4社の中で一番投資価値が高くなるはずでした。ところが私は今、JR東海への投資には慎重になるべきと考えています。それはリニア中央新幹線の建設を進めていることが、リスクとして意識されるようになってきたからです。

【1】工事に予想以上の時間がかかる可能性が出てきたこと

 大井川水資源への影響をめぐる議論から静岡県で工事差し止め請求が出ています。解決策を協議中ですが、解決策が見つかっていません。最終的になんらかの方法で解決されると考えられますが、それでも工事の遅れなどでJR東海には想定外のコスト負担が発生すると考えられます。

【2】東海道新幹線とリニア中央新幹線に競合リスクがあること

 リニア中央新幹線は、品川~名古屋間が2027年に開業し、その後大阪まで延長する予定です。ただし、静岡での工事の遅れから、2027年の名古屋までの開業は難しくなっています。大阪までの開業はさらに遅れる見込みです。

 大阪まで開業すれば、東京~大阪の航空需要を一部代替していくことが期待されます。ただし、東京~名古屋だけでは航空需要の代替はあまり期待できません。名古屋までしか開業していない間は、リニア中央新幹線と東海道新幹線が顧客を食い合うリスクがあると考えられます。