サイクル投資に落とし込む

 株式相場は、2020~2021年にコロナ禍での超金融緩和を背景にした「上り坂」が金融相場と業績相場に当たります。2022年にインフレ急上昇に対応する金融引き締め加速で生じた「下り坂」が逆金融相場です。現在は、逆金融相場から、景気悪化、業績悪化に伴う逆業績相場に入る手前と見るのが妥当でしょう。サイクルの大局観としては、2024年に入るまでの下降サイクルという認識です(図5)。

 それでは、1月の株価堅調は何だったのでしょうか。サイクル局面の典型として見れば、利上げにめどが立ち、長期金利が低下することで、逆金融相場の収束感から株式購入が促される中間反騰の雰囲気でした。12月時点では、2023年前半にも景気後退になれば、中間反騰は10~11月の上値打診程度で不発になる可能性も想定されました。それが、米景気はインフレ抑制に作用するくらいには下振れたものの、欧州や中国の経済持ち直しを含めて、リセッションは回避される、そして、米追加利上げは控えめにとどまるという少々こじつけ的な楽観によって、中間反騰色を強めたと言えます。

 相場の地合いは決して悪くありません。景気の底堅さは当面保たれる一方、インフレは下げ渋り感が気になるという程で、FRBの政策金利ピークを模索する間、株の中間反騰が永らえる展開もあろうかと見ています。これは決して強いシナリオではありません。しかし、「まさか」は良い方も悪い方もあり得ることです。少なくとも1年の最初を楽観相場としてスタートした延長線で、向こう数カ月は良い「まさか」の相場がどの程度がんばれるか、悪い「まさか」のリスクがより多くなりそうな年後半への監視を怠らない、というスタンスです。

 ここ数週間のトウシルにおける筆者の推奨は変わりません。良い「まさか」を取りこぼさないように短期投資ベースでポジションを持ち、機動的なポジション管理をしつつ、あわよくば数カ月もちこたえてサマーラリーまで行けるかという視点が一つ。同じく、取りこぼしがないよう、長期投資の一環としての時間分散購入を、総合的な株式指数や優良銘柄・テーマで進めていくのも一考。

 もちろん面倒な相場パズルには関わらず、米金利が景気中立レベルを下回ってからの金融相場、それが景気の回復~拡大に至る過程の業績相場という大道のみ手がけるというのも、サイクル投資の基本。みなさん、それぞれの投資スタイルを踏まえて、「まさか」に慌てない局面認識を持って、臨んでいただきたいと思います。

図5:米株式のサイクル展開イメージ

出所:Bloomberg、田中泰輔リサーチ

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