日本はやっとデフレ脱出の入り口に立ったところ

 それでは、日本のインフレはどうでしょうか。10月時点でやっと3.7%まで上昇したところです。これを「悪いインフレ」という人もいますが、私はそうは思いません。やっとデフレ脱出の入り口に立っただけと考えています。

 日本では長年にわたり、デフレ(物価下落)こそが諸悪の根源で、経済にも株価にも国民生活にとってもマイナスと言われてきました。

 日本銀行が金融政策で「2%の物価上昇」を目指すと言ってきたことに対し、「2%なんか達成できるはずがない」という意見が大勢でした。

 それがやっと2%を超えて3.7%までインフレ率が上昇したところです。ここで、国内世論は一転して「インフレは悪」に変わりました。

 確かに、国民生活にとって物価は上昇しない方が良いに違いありません。賃金があまり上がらない中で、物価が上がっていくのは消費者にとって辛いところです。

 しかも値上がりが大きいのが、電力・ガソリン・食品など「無しで済ますことのできない」必需品だから、生活への影響は避けられません。

 ただし、株価や企業業績への影響は別です。長年のデフレに苦しんできた日本株にとって、今のインフレは「干天の慈雨」になると思います。

日本のインフレ率(消費者物価総合指数の前年比上昇率)月次推移:1980~2022年(10月)

出所:総務省統計局データより作成 上のグラフが、日本のインフレ率推移を表しています。第二次オイルショックの直後の1980年に8%台の高いインフレ率があったが、その後急低下。1990年代後半から長いデフレに苦しむことになります。今年3.7%に戻り、やっとデフレ脱出が見えたところです。

 日本のインフレ率は消費税引き上げの影響を受けるので、上のグラフで少し説明が必要です。消費税が引き上げられると、消費者物価がその分上昇するのでインフレ率が高くなったように見えます。

 1989年4月は消費税導入の影響で、インフレ率が約3%かさ上げされています。同様に、1997年4月、2014年4月、2019年10月も消費増税の影響でインフレ率がかさ上げされています。

 消費増税の影響を除外すると、オイルショックが終わった後の日本の消費者物価はほとんど上がらない状態が続いていたことがわかります。

 消費増税が無かったのに、日本の物価がぐいぐい上がったのは、上のグラフで赤の矢印を付けた2カ所だけです。リーマン・ショック直前の2008年と、今年です。どちらも世界的なインフレ高進の影響を受けて、日本の物価にも上昇圧力がかかりました。