9月の中小型!今月のキーワードは…「ミニマム級」の秋

「来年は利下げ」なる勝手な期待で先走り過ぎていた株式市場。その楽観ムードを玉砕したのが、パウエルFRB議長であり、ニューヨーク連邦準備銀行ジョン・ウイリアムズ総裁やミネアポリス連銀ニール・カシュカリ総裁などFRB高官でした。

 相次いだタカ派発言からは、インフレ退治が優先で、「株式市場の犠牲(下落)は仕方ない」といった考えまでにじんでいたほどです。「金利を上げることは正義」、そんな空気も広がってきているように感じます。

 冷や水を浴びせられた株の参加者は、慌てて「株のウエート落とさないと!」にかじを切っている印象があります。景気悪化でいえば、米国以上に欧州への警戒が高まっています。

 欧州へのガス供給懸念が強まっている上、足元のハイパーインフレを抑制すべくECB (欧州中央銀行)の大幅利上げ観測も高まっています。そこに中国で再びコロナ感染が懸念され、一部都市でのロックダウンも始まりました。

 景気悪化に備えた「株のウエート落とさないと!」な動き。そして再び気をもみ始めたのがFRBの利上げ加速への警戒。

 市場が最も注目するインフレ指標の米CPI(消費者物価指数)は13日発表が予定されています。これを通過すると、今度は21日のFOMC(米連邦公開市場委員会)、そしてこの場でのパウエル議長発言を見極めたい、となります。

 一連の重要イベントをこなした先の米長期金利はどうなっているのか? 現時点では「分からない」に溢れているため、積極的に株を買おうなんて雰囲気は無くなっています。

 この雰囲気は、9月の中小型グロース株にとって今のところは逆風としか言えません。7月以降は「米金利はピークアウト」を合言葉に買い直された経緯があり、米金利の上昇懸念が再び強まっていること自体が逆風だからです。

 バリュエーション調整の動きに巻き込まれやすいグロース株。日本国内では7日から訪日外国人の入国者数の上限引き上げなど水際対策緩和がポジティブ材料ですが、恩恵に期待されるリオープン銘柄が少ないのもグロース株。9月末は中間期末のため高配当利回りなどに関心も向かいそうですが、高配当利回り銘柄が少ないのもグロース株。

 6月中旬まで、主力級のグロース株が強烈に調整しました。その逆流で7、8月に主力級のグロース株が強くリバウンド。そして9月、再び6月中旬まで続いたグロース株のバリュエーション調整が警戒されています。逆流の逆流で、ヘッジファンドが空売りしそうな主力級のグロース株(JTOWER、フリー、メドレー、弁護士ドットコムなど)は下値不安が高まりそうです。

 また、9月後半から1カ月半ぶりにIPOが再開(全9銘柄、東証グロース市場には8銘柄上場)します。直近IPO株として人気化したM&A総合研究所、サンウェルズ、イーディーピーなどから新しい銘柄へ短期資金が流れる影響も気になります。中途半端な値頃感での押し目買いは控えよう…そうしたムードが広がる中、何が物色されるでしょうか?

 そのヒントは、8月の謎の超小型株祭りにあるかもしれません。ジャクソンホール待ちで東証全体の売買が減ったタイミングから始まり、ジャクソンホール通過で日本株も大幅安のタイミングで一層盛り上がった。ということは、CPIやFOMC待ちで様子見ムードになりがちな9月相場でも、味をしめた投資家がこの手の小型株に触手を伸ばす可能性はありそうです。

 そもそも、急騰した超小型株の共通点(株価材料が明確に存在したものは除く)は、(1)時価総額が極めて小さい(少額の資金でも初動では急騰できる)、(2)知名度が極めて低い(何をやっている会社か分からない投資家が多数と思われる)、(3)流動性が極めて低い(板がスカスカで値が飛びやすい)、(4)信用買い残が極めて少ない(従来は人気が無かったため信用買い残が少なく、短期的な戻り売り圧力が小さい)、(5)業績が良いわけではない(業績が良ければ、(1)~(4)の状況に陥っていない)辺りです。

 欧米の金融政策がどうなろうが、それで為替がどうなろうが、景気悪化がテーマになろうが、それで外国人投資家の日本株売りが加速しようが、関係無くない?と言えるのが(1)~(5)の条件に当てはまるような超小型株といえます。

 長期保有を考えてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)で買うにはナシだけど、短期で割り切るならアリ…年々大きくなるそんな個人短期マネーの物色意欲はあなどれません。

 何が急に盛り上がりはじめ、日本版ミーム株(はやり株)になるかは分かりませんが、(1)~(5)に当てはまる銘柄、どんなのがあるか?のヒントとしてスタンダード市場、グロース市場から「ミニマム級」銘柄をピックアップしてみました!

超小型&マイナーな「ミニマム級」20銘柄
スクリーニング条件(1)時価総額が20億円未満、(2)売買代金25日MA1,000万円未満
(3)信用買い残1億円未満 ※売買代金25日MA上位順に列挙

市場 コード 銘柄名 時価総額
(億円)
売買代金
25日MA
(百万円)
信用買い残
(百万円)
スタンダード 2666 オートウェーブ 16.0 9.9 96.1
グロース 9271 和 心 11.1 9.4 3.8
スタンダード 2901 石垣食 19.7 9.0 28.9
スタンダード 7578 ニチリョク 17.3 8.7 34.4
スタンダード 1439 安江工務 12.6 7.1 59.8
スタンダード 7273 イクヨ 17.3 6.2 30.3
スタンダード 7131 のむら産 14.5 6.2 85.9
スタンダード 2926 篠崎屋 13.7 5.8 91.3
スタンダード 2673 夢 隊 12.3 5.5 73.0
スタンダード 7422 東邦レマック 14.1 5.5 15.1
スタンダード 1788 三東工業 18.3 5.4 15.4
スタンダード 3490 アズ企画 12.0 5.2 27.8
スタンダード 2687 シーヴイエス 19.8 5.2 18.5
スタンダード 3779 J・エスコムHD 10.8 5.1 60.8
スタンダード 3787 テクノマセマティ 17.8 4.7 44.6
スタンダード 7719 東京衡機 17.6 4.7 84.0
グロース 1400 ルーデン 16.8 4.5 28.2
スタンダード 3945 スパバッグ 14.4 4.5 12.3
スタンダード 8166 タカキュー 18.6 4.4 15.1
グロース 7062 フレアス 18.1 4.2 28.3