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当面のドル/円の下値ゾーンはどのあたりか?
石原 順
外為市場アウトルック
リーマンショックの影響による景気回復に向けた歳出の増大が、世界中で財政赤字の拡大を招いた。政治家は財政再建をしなければならず、その結果、景気対策は中央銀行に押し付けられることにな…

当面のドル/円の下値ゾーンはどのあたりか?

2014/1/30
新興国経済の弱いところを突いたヘッジファンドの売り崩しの動きが活発となっている。このリスクオフの動きに巻き込まれ、日本の市場も大幅な円高・株安相場となっている。
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日経平均とドル/円のテクニカル

新興国経済の弱いところを突いたヘッジファンドの売り崩しの動きが活発となっている。このリスクオフの動きに巻き込まれ、日本の市場も大幅な円高・株安相場となっている。

日経平均(日足) 周期的な底値圏には到達しているが、38.2%押しの14800円レベルを維持できるか否かが焦点

上段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)とトレンドライン
中段:14週ADX(赤)・26週標準偏差ボラティリティ(青)
下段:14日RSI(赤)・ストキャスティクス5.3.3(赤)


(出所:石原順)

先週のレポートで、「今後、+1シグマのライン(1月23日現在103円62銭)を週の終値で割り込むと、週足も調整に入る疑念が高まる。今週の終値が103円40銭以下だと、強い円安を示唆するシグナルは消滅し、相場はニュートラル(中立)に転換する」と述べたが、ドル/円の先週の週足は+1シグマのラインを割り込み、103円40銭以下で引けたことで円売りシグナルは消滅した。売りトレンドが出ているわけではないが、ドル/円は中期タームでみても調整局面に転換したとみてよいだろう。

ドル/円(週足) 強い円売りシグナルは消滅

上段:14週ADX(赤)・26週標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21週ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

一方、ドル/円の日足は14日ADXと26日標準偏差ボラティリティがともに上昇する円買いトレンド相場となっている。昨日の相場でドル/円は103円44銭まで上昇する場面があった。昨日のNY市場終値が103円20銭以上なら、現在点灯している強い売り(円買い)シグナルは消滅したのだが、102円28銭の終値となり売りシグナルは現在も点灯したままである。日足のドル売り・円買いシグナルが消滅するまでは、もう一段の円高進行に注意が必要だろう。

ドル/円(日足) 円買いシグナル点灯中

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

ドル/円は周期的な底値をあと2~3週間以内に付けるのではないか?

アルゼンチン・ショックを受けて、今週の月曜日にファンド運用者のミーティングがあった。「ドル/円の底値水準はどこか?」という話が出て、各人各様の相場観が語られたが、数人のチャーチストからは「ドル/円の年頭からの調整は1月27日の安値101円77銭で終わった可能性もあり、周期的な底値はあと2~3週間以内に付けるのではないか」という見方も出ている。

運用者の意見を集約すると、ドル/円の底値のゾーンは「100円プラスマイナス1円50銭」のゾーンに集中している。そして、押しが深くなるかどうかは、「100円を維持できるかどうかが焦点となる」という声が多い。

ドル/円(日足) サイクルボトムと支持・抵抗線


(出所:石原順)

新興国パニックと米国一人勝ちの構造

アルゼンチン・ショックについては新聞等で大きく報道されているのでここでは述べないが、新興国売りの動きはQE縮小が取り沙汰された昨年から続いている。標的となっているのは、【Fragile 5】と呼ばれるトルコ・南アフリカ・チリ・インド・インドネシアや、【Fragile 5】にブラジル・ポーランド・ハンガリーを加えた【Edgy 8】と呼ばれている国々である。

今回の新興国パニック相場では、1997年のアジア通貨危機を連想させる報道も目立っている。現在、新興国の売り崩しに動いているファンドのシナリオは以下のようなものであろう。

<QE縮小をきっかけに運用者は新興国の資産を売却しドルに戻す→新興国の企業は自国通貨売りでリスクをヘッジする→新興国の中央銀行が通貨防衛のために金利を引き上げる→金利上昇で新興国の経済はダメージを受ける→新興国の景気が悪化して通貨が売り直される→新興国の企業は外貨の返済に困る→中央銀行は再び金利を上げる>

という負のループだ。中央銀行が通貨防衛にギブアップするまでこのドミノ倒しが続くというのが、新興国売りに動いているグローバルマクロファンドのロジックである。

過去の相場でも、過剰投資・通貨の過大評価・低金利・財政赤字の4点セットがそろうと、何かのきっかけで新興国危機が起きている。今回、そのきっかけとなっているのが米国のQE縮小だ。この流れが継続すると新興国の没落が始まり、米国への資金還流で米国一人勝ちの体制が出来上がる。

日本も米国も当局にとって最も重要な市場は株式市場ではなく債券市場だ。新興国の没落で株式市場が影響を受けても、米国債市場が安泰ならば米国の金融システムは維持される。新興国危機のなか、FRBは1月29日のFOMCで2月から債券購入額を月額でさらに100億ドル減らし、650億ドルにすることを決定した。新興国のことについては何もふれていないことから、QE縮小には米国一人勝ちの戦略が絡んでいると考える運用者も多い。

NYダウ(週足)と米国の金融政策


(出所:石原順)

米国10年国債金利(日足) 当局にとって最も重要な市場は株式市場ではなく国債市場


(出所:石原順)

大音響の終末シナリオは実現するのか?

新興国景気の先行指標といわれるバルチック海運指数はここ数年低迷しており、新興国経済には明るい兆しがみられない。

バルチック海運指数(日足) 英バルチック海運取引所が算出するばら積み船運賃の総合指数は中国景気の鈍化で低位横ばい相場となっている


(出所:石原順)

筆者も今年の新興国経済に関しては注意すべきだと述べてきた。しかし、上記のようなドミノ倒し相場が展開されるシナリオについては、少し時期が早すぎるのではないかと思っている。運用者に意見を聞くと、「12月に上がりすぎた相場の反動や調整局面であり、大局は変わっていない」との声も多い。

1月22日現在、FRB の総資産は4 兆550 億ドルと拡大を続けている。テーパリングで資産購入額を減らしても、ジャブジャブの過剰流動性が供給されていることに変わりはない。この状況でポジション調整からリスク資産が大幅に下落すれば、運用難の資金が年の前半は押し目買いに動いてくる可能性が大きい。本当に注意すべき局面は、FRBが新体制となる3月以降となろう。

ジョン・ガルブレイスは著書『バブルの物語』で、「絶対確実なことは、投機の世界はささやきによってではなく大音響によって終末を迎えるということだ」と述べたが、新興国危機が大音響相場に発展するのはもう少し先になると思われる。

2014年1月22日現在のFRBの総資産(単位:10億ドル)

資産買い入れ額の縮小は始まったが、FRBは資産売却(縮小)に動いていない


(出所:石原順)

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