豪州は2014年の景気回復を予想している

ポンド/円やユーロ/円といった欧州通貨のクロス円相場が急伸している。それに比べると豪ドル/円相場はレンジ相場が続いており、現在の豪ドル/円日足相場はトレンド(方向性)が見えない状況だ。

豪州当局の通貨高牽制が長期にわたって続いており、12月3日のRBA(豪州準備銀行)理事会でも「豪ドルは今年前半と比較すると安いものの依然として不快なほど高い」といった発言があった。また、米系証券からは豪ドル売りや豪ドルキャリー取引(豪ドル売り・米株買い)推奨レポートも出ており、豪ドル相場は総弱気に傾いている。

こういった豪ドルの総弱気現象は今年の8月相場でもみられた。「豪州は利下げサイクルに入っており、中国景気も低迷しているから買えない」という理由から、豪ドル売り推奨が流行ったが、皮肉にも相場は8月に当面の底をつけて反発に転じている。

豪州は2014年の景気回復を予想している。RBAの「利下げサイクル」も最終局面にさしかかっており、金利面からの売りのおいしい時期は過ぎている。また、RBAの口先介入も聞き飽きており、その効力は徐々に薄れてきている。

豪州の政策金利の推移 利下げサイクルは最終局面か?


(出所:石原順)

次回のRBA(豪州準備銀行)理事会は来年2月4日の予定となっており、2か月近くRBA理事会がない。2月の理事会で追加緩和の有無を判断することになるが、その間の景気指標の好転で「利下げサイクルは終了した」との思惑が広がれば、これまで売りこまれていた豪ドルの買い戻し(ショートカバー)が誘発される可能性がある。

シカゴIMM豪ドルのポジション(11月26日時点 CFTC発表 )

異例の豪ドル売りポジションに傾いている


(出所:石原順)

また、豪ドル/円相場はドル/円相場の円安基調が続いていることから、大幅な豪ドル安・円高が進む可能性は低いと思われる。現在の豪ドル/円相場は8月・9月の上げ過ぎに対する調整相場(三角保合)となっている。この三角保合を下にブレイクしても、90円はサポートされる可能性が高い。上方向の動きは三角保合の上辺ブレイクが第一関門となる。

豪ドル/円(日足) 三角保合で調整中

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

ドル/円(週足) 週足にも買いシグナル点灯 円安基調が続く・・

上段:14週ADX(赤)・26週標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21週ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

 

豪ドル/円相場の季節性と月別変動

豪ドル/円はミセスワタナベ時代には円キャリー取引の代表的な通貨であった。豪州はいまだ政策金利が2.5%もあり、先進国がゼロ金利時代となっている現在もキャリー取引に利用されることが多い。「10月末買い・4月末売り」といったハロウィン取引の勝率高いことは、昨年から何度もレポートに書いてきた。

 

豪ドル/円(月足) 10月末買い・4月末売り(赤は失敗の年)


(出所:石原順)

豪ドル/円の「月間変動」をもう少し詳細に見てみよう。

近年の相場を調べてみると、豪ドル/円がプラスのリターンとなりやすいのは4月・12月・7月・2月・11月・3月で、マイナスのリターンとなりやすいいのは8月・5月・9月・10月・6月である。

この結果をみると、概ね11月から4月の期間(10月末買い・4月末売り)はプラスのリターンとなりやすい傾向が見て取れる。豪ドル/円の顕著な上昇傾向がある月は日本の年度替わりの4月で、12月が4月の次に上昇しやすい。逆に8月の豪ドル/円相場は顕著な下落傾向があると思われる。

豪ドル/円(月足) 2007年~2013年 豪ドル/円は8月が安く4月・12月が高い?

(赤は4月安・12月安・8月高となった失敗の月)


(出所:石原順)

 

豪ドル/円(月足) 2000年~2006年 豪ドル/円は8月が安く4月・12月が高い?

(赤は4月安・12月安・8月高となった失敗の月)


(出所:石原順)

米国では「最低限の成長を維持するためにはバブルが必要」というバブル容認論が浮上してきた。バブル相場は循環物色が続くので、豪ドル/円にもそのうち出番がまわってくるだろう

上記のデータを見ると、「12月の豪ドル/円の押し目買い」は悪くない選択といえよう。もちろん、このような月間変動が毎年規則的に繰り返されることはないので、筆者はこのパターンが外れた局面では損失をこうむることも多い。相場には、絶対に儲かる手法というのは存在しない。相場は「確率に賭けるゲーム」なので、筆者は勝率が上がるような相場のくせやリズムを日々探している。